「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2023年11月21日 更新

#55

ラッキーボーイ。

脇坂肇

ひとつ質問です。
あなたは「運がいい人」ですか?
それとも「運が悪い人」ですか?
「運が悪い」と答えたあなた、
ちょうど良かった。
これからする私の話を読んでくれたら、
もう大丈夫。
きっと幸運が訪れるはずです。
なぜかって?
そりゃ、決まってます。
私はラッキーボーイだから!
運の良さには自信があります。
運気が泉のようにドバドバ溢れ出ているものだから、
あなたにもその御利益があることでしょう。
あ、待って!
「運悪く、ヤバい記事読んじゃったな…」
みたいな顔して逃げないで!

昨年自宅のテレビを買い替えまして、
テレビでYou Tubeが見られるようになりました。
仕事柄興味があって、
ちょくちょくチェックしているのが、
不動産投資の専門家がやっている
You Tubeチャンネルです。
そのなかで、
「不動産を制する者が、人生を制する!」
って言っていたんです。
まあ、確かにわからなくはないけど、
私にとって不動産は、
人生を制するものではなく、
ビジネスを制するためのものなんですよ。

現在、脇坂工務店と関連会社で
●●棟の不動産を所有しています。
新築タワーマンションとかではないですよ。
古いマンションやアパートなんかも、
たくさん含まれています。
「投資目的で不動産を持っている」
って言うと、
日本だと、どうしても成金のイメージといいますか、
ゴールドのネックレスをジャラジャラつけて
札束のつまったセカンドバッグを
持っているイメージになりますよね。
なりませんか。
私、Vシネの見すぎですか。

それだけの数の不動産を購入しているのは、
不動産売買で成り上がっていき、
「オレは不動産王になる!
脇坂タワーを建てて、大統領選に出馬する!」
とか、
「老後はハワイに移住する!
カメハメハ大王の末裔になる!」
とかではないです。
というか、
今から大王の末裔にはなれないか。

私にとって収益不動産を所有することは、
商売のためのリスクヘッジなんです。
つまり、本業の工務店の商売が大変な状況になった時、
保有する不動産を売却することでキャッシュをつくり、
乗り切るための「手段」ってことです。
かなり昔の話ですが、
ちょっと会社の資金繰りが危うい状態に陥った時、
実際に4~5棟の不動産を
まとめて売却したことがありました。
その時も、
「持ってて良かった不動産!」
と思いましたね。
やっててよかった公●式!みたいな。

かつて日本の某首相は、
「我が国の年金は100年安心です!」
と豪語していました。
が、御存知の通り年金不安は広がり続け、
個人でもリスクヘッジしないとマズいぞ…
という空気になっていますよね。
だから、不動産投資を始める人が
増えているのでしょう。
私もよく相談を受けますから。

これ、不動産あるあるなのですが、
「不動産所有=不労所得」
というイメージを皆さんお持ちじゃないですか?
自分が働かなくても、かわりに持っている不動産が
チャリンチャリンとお金を生み出してくれる
って思ってませんか?
甘い…甘すぎる…!
それは、まことしやかに言い伝えられているおとぎ話、
幻想ですよ…。

や、つきつめて不動産投資をやっていけば、
最終的にはそれが叶うんですけど、
大原則・大前提があるんです。
不動産のリスクヘッジです。
そこがしっかりできていないと、
働かなくてもいいどころか、
恐ろしくて眠れなくなり、
睡眠不足で働けなくなりますよ…。
まあ、半分脅しです(半分本当です)。

具体例をあげて解説しましょう。
たとえば、
あなたが中古アパートを1棟まるごと買ったとして、
その部屋数が8戸だとしましょう。
満室の状態で買えたものの、
ある日、借り主が続けざまに退去していき、
2戸が空室となりました。
すると、入ってくるキャッシュの総額が、
マイナス25%になるわけです。
もしローンを組んで、
そのアパートを買っていたら、
返済が滞るくらいのダメージになるかもしれません。

これを避ける方法はあります。
退去しようとしている人を待ち伏せして、
「あなたに今出ていかれたら、
私、大変なことになるんで、
なんとかここにいてください!」
と土下座をする…
…のではなく、
不動産の所有数を増やすことです。

例えば所有している不動産の合計戸数が
30戸だったとしたら、
2戸が空室になったところで
さしてダメージは大きくありませんよね。
そういうことです。
不動産投資ってのは
マンションやアパートを複数所有してナンボなんです。

もちろん、私だって不動産に関しては、
はじめはゼロからのスタートでした。
たくさんの土地を持っている地主の息子でも、
カメハメハ大王の末裔でもないんでね…。
最初はある程度の自己資金が必要です。
しかも、一度不動産を買い始めたら、
しばらく「買い」が先行するフェーズになります。
所有している物件数を増やすために、
家賃が入ってきても、
次の不動産を買う資金に回さなければなりません。

不動産を持てば人生バラ色!みたいに思われますけど、
幻想だってことがおわかりになるでしょう。
ぜんぜん手元にキャッシュが残らないですから。
実際、暮らしぶりは地味なもんです。
裏ぶたについたアイスクリームまで
しっかり食べるくらい、
地味な生活をおくっております。

所有していた不動産を売却した時や、
借り入れ金がなくなってはじめて、
手元にキャッシュが残り始めます。
それまでは忍耐の道。
すぐに結果が出るものでもないですし、
誰もが成功するわけではありません。
甘い商売じゃないですよねぇ。

素人が安易に手を出すと大火傷をする不動産。
しかし、私は果敢にも新しい一手を打つことにしました。
勝負の舞台は倶知安ニセコです。

#45で書いた通り、
引き続き倶知安ニセコでの仕事が動いております。
ゴリゴリ動いております。
なので、月に一度は自ら車を運転して、
足を運んでいます。
進行中の現場の様子を見に行くことと、
市場調査が目的。
また、社員の慰労を兼ねた
飲み会を開くことも重要な仕事です。

ここ数年、
倶知安ニセコ訪問を繰り返している中で、
従業員たちから
「倉庫が欲しい」
という声が上がったので倉庫を建て、
ひょんなことから広い土地と
古い住宅を購入できたので、
営業所もつくる、みたいなことをやってきました。

で、倶知安のリアルな今はどうなっているのか?
ってことなんですが、
宿舎ビジネスが活況なんです。
新幹線工事、倶知安駅舎の建て替え工事、
高速道路の延伸工事、
ホテルなどのリゾート開発などなど、
ものすごい数の工事が動いているため、
それらに関わる工事関係の人たちが
とにかくたくさんいます。
その人たちの泊まる場所が不足しているんですよ。

これは、脇坂工務店にとっても他人事ではなく、
深刻な問題。
当社は、同エリアで2024年に動く大型案件を
2つ抱えており、さらに2025年の話も動いています。
業務が一気に増えるため、
現場監督を5名に増員して臨む予定ですが、
彼らの寝床をどうするかが問題。

これまでは、脇坂工務店が所有している
倶知安の賃貸アパートを宿舎として活用していました。
4戸あるので、そのうちの2戸を
従業員に割り当てていたんです。
なおかつ、さらに2戸の賃貸アパートを
常駐者のために借りています。
しかし、増員体制となってくると、
これだと足りないわけで、
どこかに寝泊まりできるところを
確保してあげないとなりません。
さもなくば、離れた場所から通うことになるし、
冬は雪の影響で、
移動に危険が伴うこともありますから。

月に1度の倶知安ニセコ訪問で
宿不足の気配を感じとった私。
来年従業員用の部屋を借りられるか、
少し不安になってきました。
そんな矢先、
ある不動産会社からダイレクトメールが届いたのです。
「倶知安ニセコで賃貸アパートが不足しています!
建てませんか?」
といったことが書いてあるではありませんか。
コロナ禍でリゾートで働く人たちがいなくなり、
倶知安ニセコの賃貸物件はガラガラで、
壊滅的な状況だったのに、
どうやら風向きが大きく変わったようです。

実際にこの目で確かめようと思って、
車で倶知安界隈をパトロールしてみたんですよ。
確かに全然賃貸物件の空き部屋が見つからない…。
「建てませんか?」と
不動産会社が呼びかけるくらい
供給不足ではあるものの、
かたや建築資材は高騰していて、
建てる人、正確に言うと
「資金に余裕があって建てられる人」
も減っています。
お金がめっちゃかかりますから。

むむむ、このままだと本当に
賃貸物件を借りれないかも…。
最終手段は野宿か…。
人数分のテントと寝袋を用意しないと…。
冬は寒いだろうから、
私が一緒に寝てあげることで暖を取ってもらうか…。
これは新しいパワハラを発明してしまうな…。
「極寒のニセコで従業員を野宿させた
経営者が訴えられました。
しかし当人は、
『一緒に寝て、テント内の室温を上げたから
パワハラじゃない!むしろ優しさだ!』
と意味不明な主張を繰り返しています」
みたいなニュースにはなりたくない!

と、ここで私はあることに気づきました。
そういえば、私は工務店の社長だった!!!

冷静に計算してみると、
これまでかなりの金額の家賃や宿泊費を
負担してきたわけですし、
少なくともあと数年は、
当社も倶知安ニセコで仕事がある。
もし、仕事がなくなったとしても、
工事がこれだけ盛んであれば、
他社にも借りたい人が一定数いそうだし…。

ということで、
自前で寝床となるアパートを建てることにしたんです。
しかし、いい土地がないんですよねぇ…。
唯一ネットで見つけたのが277坪の土地です。
ただ、4、5年前と比べると坪単価で2~3万円高い。
つまり総額で500万円くらい高い!
売り主に交渉してみたのですが、
ぜんぜん値引いてくれないんですよ。
ケチ!
と捨て台詞をはいて、
別の土地を探そうかと思ったのですが、
待てよ…と。

単に土地を仕入れるだけの場合は、
相場より高いと思ったら、
絶対に買わないのが私のポリシー。
仕入れて売れなかった場合、
ダメージが非常に大きいですから。
しかし、今回はアパートを自社で建てる計画です。
しかも、前述の所有していたアパートを
買ってくれる会社が現れたので、
その売却額も資金に使えます。

というわけで、277坪の土地、買いました。
契約のハンコを押すまで、売り主に、
「安くしたくなれ、安くしたくなれ…」
と念を送っていたのですがダメだったので、
先方の提示金額で購入しています。

来年、その敷地に新しいアパートが2棟建ちます。
1棟は7戸あって従業員用、
もう1棟は8戸あって賃貸用として活用する予定。
賃貸によって生まれる収益は、
建築費用の返済にあてる計画を組んでいます。
もちろん最初に自己資金を投入しますが、
完成して10年以内に1棟を売却できれば、
借入金がチャラになり、
もう1棟が実質タダで所有できる計算です。
その間、従業員の宿舎問題は解消できるし、
宿泊費も浮くことになります。

無事に新宿舎計画のスタートを切れましたが、
あの土地が見つかったのは本当にラッキーでした。
これを書いている時点で、
改めて倶知安の土地をネットで探してみても、
本当に出てこないんですよねぇ。
普通に買える最後の土地だったのかも…
とさえ思っています。
私にとって運命の土地です。

自分で言うのもなんですが、
こういう運の良さが私にはあると思っています。
占い師のゲッターズ飯田の本に
「23年が人生でいちばんいい年になる」
って書いてあったんですよ。
だから、必要としていた土地に巡り会えたのだろうと
けっこう真剣に信じています。

先日、20年来の友人からこんな指摘をされました。
彼は、異業種交流会で知り合った経営者。
私と同じ年で、
札幌西高、北大、メガバンクというキャリアを歩み、
先代の後をついで会社を経営している、
いわばエリートです。
そんな彼と食事をともにした時のこと。
「脇坂さん、最近仕事でどんなことしているの?」
「最近は倶知安ニセコでの仕事に力を入れていて…」
と事業の話や、土地を取得してアパートを
建てる計画を話したんです。

すると、エリート友人は、
「いやー、やっぱり脇坂さんはすごいね〜」
と言ってくれたものだから、
いつもの調子で
「いやいや、たまたまだよ。運が良かっただけで…」
と答えた私に彼はこう言いました。
「優秀な経営者って、みんな、
『運がいい』とか『たまたま』って言うよね!」

え、ひょっとして、優秀な経営者って私のこと…?
しかも、そんなエリートに褒めてもらえるとは!
嬉しくなって、その夜は飲みすぎましたねぇ。
酔っ払いました。
記憶にはないですが、
エリート友人の前で裸踊りとか、
どじょうすくいとかを披露していなかったか、
不安になります。
やっていないから記憶にないのか、
やったのに記憶がないのか。

運にまつわることで、
最近興味深く読んだのが、
「科学がつきとめた『運のいい人』」
という本です。
ベストセラーランキングに入るくらい
流行っているので、
ご存知の方も多いのでは。
売れっ子の脳科学者、中野信子さんが
科学的な視点から運の良さを分析したものです。

例えば、こんなエピソードが書いてありました。
もともと有名なエピソードなので、
ご存知の方もいるでしょう。

あの経営の神様、松下幸之助の話。
彼は採用試験の際、必ず最後に
「あなたは運がいいですか?」
と質問していたそうです。
この問いに対して
「はい、運がいいと思います!」
と答える人だけを採用していたとか。
なぜなら、自分は運がいいと信じている人は、
多少の逆境だろうが乗り越える力、
前向きな姿勢があるから、だそうです。

それなら、私も松下幸之助に面接されたら、
きっと採用されていたことでしょう…!
詐欺に巻き込まれそうになったり、
取ったと思っていた商標の有効期限が切れていたり、
あまたの逆境を乗り越えてきていますから。
「脇坂くん、それは逆境というより、
自業自得じゃないのかい…?」
と幸之助にツッコまれそうな気もしますが。

あと、中野さんの書籍の広告で
「強運に絶大な効果のドーパミン。
その分泌のカギは妄想にあった!」
と謳われていたのですが、
要は「運のいい人は妄想力に長けている」とのこと。
まさにこれ、私です。
この「わかる話」を読んでくださっている方は
おわかりのとおり、
私、妄想しまくりですからね。
脇坂肇の半分は、妄想でできています。
このわかる話も妄想かもしれません。
(妄想でここまで書けるなら、
別の才能がある気もします)

マジメな話、商売に必要なことって、
「妄想」と「市場調査」だと私は信じています。
倶知安ニセコのケースであれば、
そこで自分の会社がどんなふうに力を発揮できるのか、
日々妄想しています。
将来的にどんな景色を見たいか、考えること。
あんなこといいな、できたらいいな、です。
ボク、わきえもんです。

そして、その妄想を形にする出発点が、
市場調査となります。
市場調査といっても、
別にマーケティング会社に頼んで
何かをリサーチするとかではなく、
世の中の動きをこの目で確かめる、
自分の足で稼いで情報を集めることです。

倶知安ニセコの場合は、
月に1度足を運ぶことによって
今、そこで何が足りていないのか、
すなわち、何が商売のタネになるのか、
をつかめたと思っています。
わざわざ私が行かずとも、
現場のスタッフたちに仕事を任せていれば
業務上は特段問題ないんですよ。
みんな信頼のおけるスタッフたちですから。
でも、経営者の役目はその先の仕事を生み出すこと。
そのためにも、自分で汗をかいて、
体感することが非常に重要なんです。

といったことを私は地道にやっているから、
中野さんの本で言うところの、
「運のいい人」になれているのかもしれません。

や、この「わかる話」を読んでいるあなたも、
既に運がいいと言わざるを得ません。
普段私が人には話さないようなことまで、
こうやって知れる機会を得たわけですから!

そんな運のいい社長がやっている工務店で
家を建てると、
さらに運が爆上がりする説があるそうです。
私が唱えている説です。
もっと正確に言うと、
今、私が唱え始めた説です。

ほら、ハンコをここに押せば、
あなたの運は最強になります!
さあ!さあ!
(運は上がらずとも、
幸せになれる家を建てられると思います、はい)

脇坂肇