「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2023年8月28日 更新

#52

採用広告、その後。

脇坂肇

ある経営者と食事をしていた時のこと。
「人材紹介会社を使って、いい人が採れたんです!」
と彼が言うので、興味本位で
「人材紹介会社には、
どのくらいの報酬を払ったんですか?」
と聞いてみたら、
「採用した人の年収の半分」
って言うじゃありませんか…!
飲んでいた焼酎を吹き出しそうになりました。
てことは、ウン百万円ってことですよね。
なかなかだな…。
ただ、そこまでして人が欲しい気持ちは
同じ経営者としてわかります。
ノドから手が出るくらい人が欲しいのは、
うちも同じでした。

…あ、「でした」って過去形を使っちゃった…。
いけない、いけない。
嬉しさのあまり、つい…。
ぐふふふふふふ…。

#49「欲しいものがある。」
というタイトルで、
人材募集について先日書きました。
今読み返してみると、無茶苦茶ですね…。
が、そんな無茶苦茶な話に続きが生まれたんです。
そうです、念願の現場監督が採用できたんです。
しかも3名も!
これはもう奇跡と呼んでも差し支えないのでは…!

最近は、飲食店や食品工場、ホテル、車屋などなど、
幅広い業態の法人と仕事をする機会が多いんですが、
どこからも人材不足の話ばかりが聞こえてきます。
皆さん口を揃えて言うのが、
「募集してもぜんぜん来ない!」

例えば、ホテルの場合。
私には定宿にしている地方のホテルがあるのですが、
いつもネットの予約システム上は満室続き。
ものすごく流行っているのかなと思いきや、
懇意にしている支配人に話を聞くと、
実際は60%ほどしか稼働していないのだとか。
というのも、
対応できるだけの人員が足りていないから、
受け入れる客数を絞っているそうです。

また、ある工場の場合。
「あームリムリ、募集しても
日本人からの応募なんてないですから!」
と知り合いの経営者はハナから諦めています。
代わりに外国人労働者に的をしぼって
アプローチしているとのこと。
わざわざ外国人向けの宿舎を用意して、
外国からの人材を受け入れようする
作戦をとっています。
(ちなみに、
その宿舎の建設を当社がお手伝いしています)

働いてくれる人がいないから、
商売が立ち行かなくなる時代です。
ちょっと前までは
「仕事がない!」「就職が大変だ!」
って言われていたのが嘘みたいですよね。
お客さまが目の前に来ているのに、
人がいないから、
指をくわえて見ているしかない状況って、
経営者からしたら
地団駄踏みたくなるような気持ちでしょうねぇ…。
ああ、お金が逃げていく…って。
あ、もちろん、私はそんな風には
お客さまのこと見てないですよ。
もっと解像度が高く、
「あぁ、福沢諭吉が逃げていく…」
って見ていますから。
(一応言っておきますが、冗談です)

2022年までは、
「いやー、人がいないって大変ですねぇ」
と完全に他人事だった私ですが、
2024年以降の仕事状況を冷静に見た時に、
新しい人をいれないとヤヴァい!となっていました。
ヤバいじゃなくて、
ヤヴァいと書くくらいの危機感でした。
#49で語ったことです。
そのため、
求人に特化したラジオCMをつくって
OAすることにしたんです。

ラジオのスポンサーについて早11年。
業界の内外問わず、
知名度が上がってきたことは実感しています。
ぜんぜん面識のなかった、
仕事でも接点ないような方が、
「脇坂さん、知ってます!ラジオ聴いてます!」
と仰ってくれることもちょいちょいありまして。
ある程度知られているラジオという場で、
情報を発信したほうが効率が良いだろう
という判断から、ラジオCMを打ったのです。

ただ、ラジオだけで、
すべてを語ることや伝えること、
理解してもらうことはまず不可能。
「興味を持ってもらえればラッキー!」
くらいに思っておかないと。
過度な期待は良くないですから。
じゃあ、興味を持ってもらった後は
どうするのかって話ですが、
自社のWEBサイトに招き入れたいんですよね。
というのも、WEBサイトをいくら作り込んで、
情報をたくさん盛り込んでも、
見てもらえなかったら、
まったくもって話が始まりません。
このわかる話だって、
WEBサイトを訪れて読んでくれる人がいないと、
私が一人ぼっちで、
ずっとブツブツ独り言をつぶやいているのと同じ。
その状況、かなり怖いじゃないですか!

そんなこんなでラジオCMをつくり、
OAにあわせて、同じ時期にアルキタにも広告を出稿。
準備を整えました。

すると、ほどなくして反応が!
ラジオCMを聴いた人が2名、
応募してきたのです。

今回の採用活動では、
私は人間の心理について、
次のような見立てを持っていました。

まず、既に転職を考えている人は、
色々な求人情報サイトとか、
比較検討していることでしょう。
いわゆる顕在層って人たちです。
私が今回狙ったのはその層ではなく、
いわゆる潜在層、つまり、
「そろそろ転職するタイミングかなぁ」
とか
「オレの人生、これでいいのかなぁ」
とか考えながらも、
日々の仕事に追われて、
転職への具体的なアクションを
まだ起こしていない人たちです。
そこに響くようなラジオCMであれば、
きっと採用につながるのでは、
という見立てだったのです。

潜在層に狙いを定めたのには根拠があります。
昨今の住宅業界の不調です。
いわゆるウッドショックに代表されるような
資材費高騰に端を発して、
住宅が一段と値上がりしています。
結果、普通の会社員家族にとって、
札幌都心の一戸建てはもはや夢のものに…。
すると、かつてポンポン売れていた住宅が
売れなくなってくることで、
経営が揺らいでいる会社が出てきます。
実際、そういう会社がいくつかあることは、
風のウワサで私の耳に入ってきていました。
となると、その会社には悪いですが、
私たちにとって人材を獲得できるチャンス。
会社の先行きに不安を漠然と覚えて、
「ちょっと転職も視野にいれておいたほうが
いいかもなぁ…」
という人が出てくるはずですから。

どうですか、ここまで緻密に考えている脇坂肇。
経営者ぽくないですか。
普段のラジオでの姿は、世を忍ぶ仮の姿なのです。
世の中を油断させているのです。
や、ラジオに出ているのは、
私の影武者という可能性だって捨てきれません。
私でさえ、そんな気がしてきました。

そんなことはともかく、
どういう人材が当社に応募してきてくれたのか、
ここで見てみましょう。

一人目のAさん。
道内の地方都市のハウスメーカーで
バリバリやっていた現場監督です。
応募のきっかけは、奥さんだったとか。
というのも、奥さんが働いている職場では、
ずっとAIR-G’が流れていて、
自然とヘビーリスナーになったそうな。
ある日、そんな奥さんから
「ラジオで、
脇坂工務店が現場監督を募集しているって
言ってたよ」
と言われたAさん。
彼自身も、工事現場で流れているラジオで、
その社名を聴いたことがあったので、
ちょっと気になり、
当社のWEBサイトを見てしまったのが運の尽き。
私の思うツボです。
「施工事例の写真を見て、びっくりした」
とAさんは語っていました。
自分がハウスメーカーで手掛けてきた一般住宅とは、
まったく別ものの住宅が
ずらりと掲載されていたからです。
特に、この「森の中の家」には
感銘を受けたと言っていました。 

で、WEBを眺めているうちに、
「オレの建築人生、これでいいんだろうか…」
と考え始めてしまったAさん。
なにより、建築に携わってきた人間として、
「森の中の家」を見て
「一体これ、どうやって建てたんだろう…?」
と純粋に強い興味が湧き上がり、
「オレも建ててみたい!」
という気持ちになったと面接で話してくれました。
前職で進行中の仕事が
一区切りするタイミングまで待って、
9月に脇坂工務店へ入社してくれる予定です。

二人目のBさん。
彼もラジオCMがきっかけなんです。
ただ、応募に至る経緯を聞くと
「それ、ホント…?」
って疑うくらい出来すぎた話なんですよ…。
「私、Bさんにお金払ったっけ…?」
っていうくらいの美談。
ドラマかよ!って思ったので、
試しに勝手にドラマ風に描いてみました。
それでは、こちらをどうぞ。

「…Bは、
大手ゼネコンの第一線で活躍する現場監督だった。
仕事は想像を絶するほどの激務。
しかし、彼は建築という仕事が大好きだった。
愛していたと言ってもいいかもしれない。
しかし、その愛の強さゆえだろうか、
無理が祟り、働きすぎで体を壊してしまう。
仕事に復帰することは叶わず、そのまま退職。
疲れ果てた彼がしばしの休養を経て、
次に選んだ職場は工事現場ではなく、運転席だった。
タクシードライバーになったのだ。
2022年秋のことである。

まったくの畑違いの業界に身を置いたものの、
仕事で札幌の街中を走れば、
いやでも建物が目に入ってくる。
面白い建築があれば自然と目で追ってしまう。
『また建築、やりたいなぁ…』
という気持ちが湧き上がってきていることを、
彼は否定できなくなっていた。
悶々と考えていた頃、
乗車中ラジオから流れてきた言葉が、
彼を再び建築の現場へと連れ戻すことになる。
『現場監督を探しています』
ラジオCMを聴いた彼は、
すぐさま脇坂工務店の
WEBサイトにアクセスしたのだった…」

どうですか、完全にドラマでしょう、これ。
こんなことってあるんだなぁと思いました。
しかも、前職時代にニセコの超有名ホテルの建設に
携わっていたBさん。
倶知安・ニセコエリアでの仕事には慣れているし、
現地に常駐することにも抵抗がないときたもんです。
脇坂工務店にとっても運命の人。
当社に入社して早々、
ニセコでバリバリやってもらっています。
まさに即戦力の人材でした。

そして、さらには3人目も採用できたのです。

3人目の人物は、Cさん47歳。
ラジオCMではなくインディード経由で応募がありました。
…というか、インディードに
求人広告を出した記憶がないんですよね…。
おかしいな…。
本当はCさんはまったく別の会社に応募していて、
なにかの手違いでうちが採用しちゃったとかだったら、
ウケますよね。
や、ウケないな、恐ろしいな。
私が出稿したことを忘れているだけ
と信じましょう…。

彼が以前所属していたのはリフォーム会社。
いわばリフォームのスペシャリストな現場監督です。
RCや鉄骨建築を得意としていて、
正直木造建築はあまり経験ないようですが、
それはそれでOK。
当社の守備範囲が広がりますし、
彼くらいのキャリアがあるなら、
必要に応じて覚えていってもらえれば、
全然対応できることでしょう。

Aさん50歳、BさんとCさんはともに47歳。
40代後半から50代前半って、
自分の人生を見つめ直す時期なんですよねぇ。
私自身がそうでした。
現在の脇坂肇をみると、
見つめ直した成果があったのかは怪しいですが…。
3人の人生が当社と関わることになったのは、
純粋に嬉しいですし、責任を感じます。
私も頑張らないと。

このご時世に3名も採用、
しかも未経験者ではなく、
即戦力の経験者を採れるって、
これね、ものすごいことですから!
いつも、ドヤらないように気をつけている私ですが、
今回ばかりはドヤって良いと思うんです。

かつては、
いい大学に入ってから、
いい会社に入り、ずっと勤め上げる、
みたいなルートが決まっていました。
その価値観みたいなものが、
すっかり崩れ去ったことには、
皆さん同意されるんじゃないでしょうか。
当時いい会社だと思っていたところが、
その後、どれだけ凋落していったのか、
思い出してみてくださいよ。
(角が立つから具体的に名前は上げませんが…)

当社のような規模で知名度も低い会社だって、
面白いことをやっていれば、仲間が集まってくれる。
いい時代になったんだなぁと思っています。

「人が来ない!」
と、どの会社も言っていますが、
知恵を絞れば、突破できるんだと、
今回改めて思いました。
コストをかけずに採用できるわけです。
冒頭の人材紹介会社の手数料が、
採用者の年収の1/2ってことでしたが、
うちが3名獲得するのにかけたお金って
そのウン十分の一くらいじゃないでしょうか。
あ、こんなことを書くと、
CMを考えたコピーライターのTさんとか
「ありがとうございます。
じゃあ、追加で請求書を送っておきますね」
と真顔で言いそうだから、黙っておこう。

「人と同じことをやるのは嫌だ!」
っていう、私の商いのポリシーから
「ラジオCMで求人をかけよう!」
という発想になったと思っています。
普通、求人と言えば、
やはり求人広告メディアに頼りますからね。
ただ、上手くいったからといって、
「採用媒体としてラジオがいいのか!
じゃあラジオCMだ!」
とラジオCMの検討を始める経営者や
人事担当の方がいるなら、
ちょっとお待ちなさい!と言いたいですね。
あ、上から目線ですいません。
3名も採用できているんで、
ナチュラルに上から目線になってました。
てへ。

前提として、当社の場合は事業を通して、
変わったことをやり続けてきた
っていう事実があります。
例えば、
意匠性の高い建築を手掛けているとか、
外国の設計士と組んで仕事をしているとか、
ユニークな賃貸住宅を立ち上げたとか、
ラジオで社長が吠えるとか、
ステージ上で社長が踊るとか。
ラジオCMを聴いた人が興味をもって、
当社のことをちょっと調べてみたら、
そんな事実が色々出てきて、さらに興味が増す、
みたいな流れだったと思っています。

ラジオCMは目的ではなく、あくまで手段。
あなたの会社なりの知恵の絞り方、
アイディアってものがあるはずです。
え、もう少しそのあたり詳しく聞きたい?
お、ちょうどいい話があります。
とある企業団体から、
当社の取り組みについてセミナーで話してほしい
というオファーをもらっているんです。
今度そこで話そうと思っているんで、
ぜひお越しください。
え、入場料?
いやいやいや、あなたの年収の1/2とか
強欲なことは言いませんので。

1/3で良いです。

脇坂肇