2021年2月19日 更新
#22
本当にあった商標の怖い話。
商品名やサービス名などのはしっこに、
丸の中に「R」と書いてある印が
付いている時がありますよね。
「この名称については商標を取得していますよ」
という印です。
通称「マルアール」と呼んだりするのですが、
実は脇坂工務店も2つ商標を取っているんです。
「NEO DESIGN HOUSE」と
「話のわかる工務店」の二つ。
その背景にはですね、
身の毛もよだつ恐ろしい話がありまして…。
読み進めていくうちに、
「変だなー、変だなー」
「嫌だなー、嫌だなー」(by 稲●淳二)
と口にしてしまうことでしょう…。
それはちょうど平成18年のこと…(by 稲●淳二)。
「建築家と創る家」というコンセプトで
NEO DESIGN HOUSE(ネオ・デザインハウス)
という自社ブランドを立ち上げました。
建築家と脇坂工務店がコラボすることで、
リーズナブルにデザイン性の高い家が建てられる
というサービスです。
思いついたキッカケは、
お客さまとの会話からでした。
「建築家に頼んでみたいけど、敷居が高いな…」
とか、
「予算がどれくらいかかるのか不安…」
とか、
「建築家のセンセイには、
プランにNOって言いにくそう…」
みたいなことを
口にされる方が多かったんです。
ならば、と私は考えました。
脇坂工務店が窓口となって、
お客さまの要望をヒアリング。
建てたい家やお客さまの趣味嗜好にあわせて
最適な建築家を紹介し、
家づくりを進めていくのはどうだろうか、と。
建築家にとっても、お客さまとの
細かなやりとりなどの業務を脇坂工務店が担うので
設計に集中できるというメリットがあります。
やるからには、きちんとブランド化したかったので、
当時お付き合いのあった広告代理店のAさんに相談。
「NEO DESIGN HOUSE」というネーミングと、
ロゴマークを作ってもらいました。
ちなみに四角形を組み合わせたロゴマークは
住まいの間取り図がモチーフとなっています。
この話を進めている最中、
Aさんがボソボソと話し始めました。
「ネーミングといえば、
脇坂さん、こんな話ご存知ですか。
あれはちょうど10年前、
とある日本を代表する企業の話なんですけどね。
そこがあるサービスを立ち上げたんですけど、
なぜか商標を取っていなかったんですよ。
ミスなのか、後回しになっていたのかは
わからないですけどね。
そのサービスは順調に育っていって、
かなりの稼ぎ頭になったんです。
そして三年後、
突然その会社に訴状が届いたんです。
『あなたの会社の●●●というサービスですが、
商標を取っているのは私たちです。
無断で使用しているので訴えます』
という内容でした。
どうやら、その会社にまったく関係のない
第三者が勝手に商標を取っていたんですね。
しかも、しばらく“泳がされて”いたわけです。
サービスが育ってお金を生むようになるまでね。
そうすれば賠償金が高くなりますから。
結果、●億円払ったらしいですよ。
『あれ、おかしいなー、おかしいなー
変だなー、変だなー』と思っていたら
●億円ですよ。
高くついたものです。
世の中には悪い人がいるもんですね。
まあ、人づてに聞いた話ですけどね。
で、脇坂さん商標どうします?」
「はい、すぐに取ります」
Aさんを、やや稲●淳二風に盛ってしまいましたが、
おおよそそんな話を聞かされ、
すっかり縮み上がった私。
さらに、
札幌で居酒屋を経営していた友人の話を
思い出しました。
「訴えられたんだけど、どうしよう…」
ある日、困りきった友人の声が
受話器越しに聞こえてきました。
聞けば彼の居酒屋が、
某有名飲食店から商標侵害で訴えられたとのこと。
彼が一般名称だろうと思って店につけた名前は、
既にその飲食店によって商標が取られていたんです。
私は知り合いの弁護士さんを紹介。
一緒に話を聞きに行ったのですが、
「うーん、どうしましょうか。
戦います?
戦って、勝っても負けても
お金がかかりますからねぇ。
だったら、お店の名前を変えちゃうのが
得策かもしれませんねぇ」
と弁護士さん。
裁判にかかる労力(お金や時間)や勝算と、
現在の店名を変える労力を天秤にかけると、
後者がどうも良いようだと。
で、結局彼は店の名前を変更することを選びました…。
…というエピソードを思い出し、
さらに身震いした私。
「NEO DESIGN HOUSE」という
ネーミングを気に入っていたし、
他の人に取られたくない、
トラブりたくないと思った私は、
商標を取ることを決意します。
通常は商標を取るとなったら、
弁理士というプロに依頼するものなんですが、
WEBで調べてみると
何やら自分でもやれそうな雰囲気が漂っています。
まあ正確には当社の優秀な事務員さんなら
きっとやれそうな雰囲気が。
よって、彼女に無茶振り…
じゃなかったお願いをして、
商標取得に挑戦してもらいました。
弁理士さんに依頼するだけで、
当然それなりのお金かかりますからね。
うちみたいな中小企業は
できることは自分たちでやる、
自給自足スタイルです。
事務員さんの頑張りもあって、
申請自体はすんなり行きました。
が、その申請が受理されて
商標として認められるまで
待つこと約7ヶ月。
時間がどうしてもかかるんですね、
こういう行政的な手続きって。
ちなみに申請時には、
特許印紙ってものを
5万1000円分貼って、申請します。
さらに特許印紙を買えるのは
郵便局の本局(主要な郵便局)だけなんです。
小さな郵便局やコンビニでは売ってないです。
皆さんも、
いつ何時商標登録したくなるか分からないですから、
ぜひ豆知識として覚えておいてください。
や、要らないか。
申請が認められて、
商標登録できますよ!という段階になったら、
次は登録料として19万8000円必要でした。
10年登録の場合です。
パスポートと同じように
5年か10年か選べるんですね。
私たちは、
どうせなら長いほうにしようってことで
10年登録を選びました。
平成19年10月5日。登録完了。
晴れて「NEO DESIGN HOUSE」という名前は、
脇坂工務店のものになったのです。
これで一安心。
後日、街中を歩いていた時のことです。
「NEO HOUSE」
という文字が目に飛び込んできました。
こ、これは…
なんか「NEO DESIGN HOUSE」に似ている…。
すぐに広告代理店の方から聞いた
例の怖い話を思い出しました。
まさかの裁判チャンス?
しばらく泳がせてNEO HOUSEという名前が
たくさん露出された後で
「あのー」と言って訴えて3億円くらい請求する…
仮に裁判となったとしても勝つ確率は高いだろうから、
裁判所の前で
「勝訴!」という紙を掲げて走り回れる…
…なんてことは一瞬も頭をよぎりませんでした。
ええ、私は善良な人間なものでして。
「いいぞ!もっと使うんだ!」
なんてことは微塵も考えずに、
そっとしておきました。
商標を取っているだけで、
こんなにも人の心って広くなるんですね…!
てなことを考えていた(考えていたのか)頃、
実は「NEO DESIGN HOUSE」は、
なんと脇坂工務店のものじゃなかったんですねぇ…。
一瞬意味がわからないですよね。
私もわかりませんでした。
怖いなー、怖いなー。
変だなー、変だなー。
先ほど商標の登録期間を
5年か10年か選べるとお話しました。
つまり、平成19年に取得した商標は、
平成29年に登録期間満了を迎えることになります。
そして、私はそのことをすっかり忘れていたのです。
失効していることに気づいたのは
令和元年のことなので、
空白の3年間がありました。
「NEO DESIGN HOUSE」が
誰のものでもない3年間が。
身の毛もよだつ思いをしましたね…。
危ない。
危なかった。
なんのための商標登録申請だったのか、
あの時感じた心の広さはなんだったのか、
という事態になるところでした。
もちろん、
失効に気づいてすぐに再登録しております。
次に失効するのが令和8年なので
「脇坂、商標が切れそうだぞ!」
と皆さん、教えてください。
代わりに勝手に商標取って、
私を泳がせたりしないでください。
そういえば、
ファッションデザイナーが
自分のニックネームを冠した
ブランドを持っていたりすると
悪用されることを避けるため、
そのニックネームを商標登録することがあるようです。
私もラジオに出させて頂いているおかげで、
名前がそこそこ知られるようになったから、
商標取るかな。
脇坂肇(R)っていう表記にしないと。
ラジオだったらきちんとアピールするために
以下のように言ったほうがいいですね。
「ここからは脇坂肇マルアール社長とお送ります」
「どうも、脇坂マルアールです」
「脇坂マルアールさん、今日のお話は・・・」
うっとうしいですね…。
というかググってみたところ、
一般的な名前は商標登録できないようです。
そりゃそうか。
真面目な話、
商標取るのって別に使った相手を泳がせて、
訴えてお金をせしめるためなんかじゃなく、
せっかく作ってもらった
ネーミングやスローガン、ロゴマークを
守りたいからなんですね。
愛着持って長く使っていきたいじゃないですか。
結果、お客さまにも
「きちんとした会社なんだな」
という印象を持っていただけますし。
というわけで今回は、身を守るためにも、
権利関係の申請は皆さんちゃんとしましょうね。
という啓発記事でした。
ん?
「あなたが…まずはちゃんとしなさいよ…」
という声がどこからともなく聞こえてくるな…。
おかしいなー、おかしいなー。
怖いなー、怖いなー。
脇坂肇