2023年10月20日 更新
#54
気づいたら30年。
聞いたところによると、
新たに設立された会社が生き残る確率は、
以下の通りだそうです。
設立3年後の生存確率65%、
設立10年後の生存確率6.3%、
設立20年後の生存確率0.39%、
設立30年後の生存確率0.025%
つまり、30年前に誕生した会社のうち、
約5000社に1社しか残っていない計算になります。
え〜、そんなレアな会社って身近にあるのかなー?
どこかなー?
どこかなー?
2024年4月6日、
脇坂工務店は設立
30周年を迎えます。
今、これを書いている時点(2023年秋)では、
30周年まであと半年ほど。
これから先の数年間は、
あんな仕事やこんな仕事が控えているので、
このまま行けば、
なんとか30周年は迎えられそうです。
私がヘタこいて、
謝罪会見をするような事態にならなければ、
の話ですが…。
ただですね、他ならぬ私自身が「30年」という
数字にピンと来ていないんですよね…。
冒頭の話の通り、
30年間生き延びる会社というのは
かなりレアとのことですが、
気づいたら今の場所に立っていた
というのが正直なところ。
必死になって、汗やら涙やら何やら
さまざまなものにまみれながら、
ガムシャラになって働いてきた結果なんです。
もうひとつ、30年という数字に
そこまで重みを感じない理由のひとつが、
まわりの経営者の存在でしょう。
仲良くしている経営者には、
2代目や3代目の方がたくさんいて、
当社より長く続いている会社ばかり。
2023年に設立100周年を迎えた会社があったりします。
そういう先輩企業と比べると、
うちはまだまだヒヨッコ。
なので、
あのセリフを言ってもいいでしょうか。
アーティストやアスリートがよく口にするアレです。
「30年っていうのは、
通過点としか思っていないんですよ…。
私のゴールはもっと先にありますから…」
普段から、言う練習をしていた甲斐あって、
スムーズに言えました。
いつか言いたかったんです。
そんな30年間を振りかえってみると、
順風満帆でした!
…とは言えないですねぇ…。
程度の差こそあれ、
どの会社も同じだと思いますが、
実はかつて、何度か危機があったんです。
たとえば、10年ほど前にはアレされて、
お金がアレな感じになり、
アレがアレになったことがあったり…。
人手不足になって、
目が回りそうになりながら、
奔走したこともあったり…。
でも、今となってはすべてがキラキラと輝く、
すばらしい思い出!
…なんてことは全然なくて、
二度とあんな思いはしたくないですねぇ…。
経営者はツラいよ!って感じです。
ところで、日本や世界における
この30年間という月日を振り返ってみてもらうと
わかると思うのですが、
とんでもなく時代は変化しましたよね。
もしタイムマシンがあって30年前に戻れたとして、
私が、今の日本や世界の状況を言ったところで、
誰も信じてくれないことでしょう。
「2023年の時点で、
私はラジオに出演していて、
それなりに人気があるんだ!」
とか、30年前の人たちに言ってとしても、
「うんうん、そうかそうか。
じゃあ、いい病院あるから、いっしょに行こうか」
という反応になるはず…!
まあ、ラジオに出るとか、
私の個人的な環境の変化はともかく、
社会の激変ぶりはすごいです。
あわせて、人の感覚や価値観も
変わってきていますよね。
たとえば、長時間労働が美徳とされていたり、
男女間の不平等が当たり前のようにあったり。
そんな価値観は、
すっかり過去の遺物となっております。
時代が変われば、
脇坂工務店も変わり続けてきました。
創業時の主な業務はリフォームだったのですが、
徐々に新築戸建事業にも進出。
建築家と建てる家「NEOデザインハウス」を
立ち上げました。
家を建てるのであれば土地も扱えるほうが、
お客さまにとって好都合だろうということで、
不動産事業も手がけることに。
もちろん、
札幌から銭函へメインオフィスを移転したことも、
大きなターニングポイントでした。
最近は次の展開を見すえて、
仕事が増えてきたニセコに
新たな拠点を整えつつあります。
環境に適応して
たくましく生き残る動物のように、
変わり続けながら会社を経営してきました。
単に流行りや社会の動きにあわせるだけでなく、
独自路線を常に意識しながら、です。
では、次の進化に向けてのハードルや課題は何か?
ってことです。
目下の課題は人手不足ですね。
ただ、これはもうわかりきっていたことです。
日本社会全体というマクロで見ても、
脇坂工務店というミクロで見ても、
こうなることは火を見るより明らかでした。
1945年の終戦から月日がたち、
ベビーブームの頃、この世に生を受けた世代が
次々と引退するタイミングになっています。
ちょうど私のひとまわり上の先輩世代です。
戦後の競争社会、
Oh!モーレツ(もう誰も知らないか…)な時代を
サバイブしてきた人たちなんで、
クセが強い人も多かったなぁ…。
ちょっと前までは、感じの悪い先輩がいると、
「早く引退しないかな…」
と思ったものですが、
いざその時が来ると寂しいものですね。
良くも悪くも刺激を受けてきたので。
上に目をやれば、
徐々に“試合を終えていく”人たちがいる一方で、
下に目を向ければ、
少子化がものすごい勢いで進行しています。
社会に入ってくる人の数は減るばかり。
日本における15歳から64歳の労働力人口は
2065年には3946万人になるという予測もあります。
40%くらい減るということですね…。
そりゃ、人手が足りなくなるってもんです。
2022年に還暦を迎えた私ですが、
これまで「引退」という二文字が
脳裏をよぎることは正直ありました。
それなりに辛いことがあると、
「もうリタイアして、
のんびり余生をおくることにしようか…」
なんて想像したりしたものです。
ただ、困ったことに、
仕事がまだまだ楽しいんですよね…!
自分の創意工夫で新しいことが生まれ、
物事が動いていく様子を目の当たりにできるのは、
どんな趣味なんかより、たまらないものがあります。
あと、私は経営者なので、
「自分さえ良ければいい」ということにはなりません。
これまで会社や自分についてきてくれた
メンバーたちのことはしっかりケアしたい。
みんなの老後を心配する責任があると思っています。
差し迫ったところで言うと、
私に近い世代のメンバーのこと。
彼らにとっては今後のキャリアをどうするのか、
人生をどう生きるのか、は大きな問題でしょう。
例えば、Aさんという現場監督の場合。
現在、彼は68歳なのですが、
65歳で一度脇坂工務店を定年退職しています。
というのも、
まず、そのタイミングで退職金を
受け取ってもらってから、
すぐに当社の関連会社に再就職してもらいました。
スキルがあって、まだ働く意欲がある方でしたから、
互いにとって良い道を探した結果、
そのような方法をとることにしたんです。
そうやって、自分自身も自分の周りも、
できる限り現役で活躍できるように奮闘している昨今、
私を悩ましているものがあります。
それはM&Aの仲介業者…!
M&A,つまり企業の合併買収を
コーディネートする会社ってのが
最近世の中にはたくさんありまして。
やたらとダイレクトメールを送ってくるんですよ。
ダイレクトメールだけではなく、
営業電話もかなりの頻度でかかってくるんです。
「あ、もしもし〜。
脇坂社長でいらっしゃいますか?
突然のお電話失礼致します。
どうしても脇坂社長に
ご案内したいことがありましたので、
失礼を承知でお電話させていただきました!
というのも、
ここだけの話、同業他社さんで、
脇坂工務店さんに非常に
興味を持っている会社がありまして…。
ぜひ一度お話だけでも、と思った次第です。
あ、興味というのは、いわゆるM&Aですね。
脇坂工務店さんが非常に魅力的な会社なので、
買収を検討したいという会社がありまして…。
え、どこの会社かって?
いや、ちょっとそれは
お電話ではお話できないものでして、
ぜひ一度お会いする機会を頂ければと…」
みたいな電話がかかってきます。
どの仲介業者もだいたい同じような手口。
しかし、営業の道を突き進んできた
脇坂肇を相手にしたのが運の尽き…。
営業が突かれると嫌なところをツンツンしていくと、
相手は途端にしどろもどろになって、
「し、調べて改めてお電話します!」
という結末に。
(その後、100%電話かかってこないです)
電話がかかってくるたびに
撃退しているものの、けっこうな手間です。
だから、二度と電話がかかってこないであろう
秘策も考えてはあります。
こんな感じで対応する戦法です。
「お電話ありがとうございますッ!
そうですか!
うちに興味を持ってくれた会社があるんですねッ!
や、実は今日も電話がかかってくることは
わかっていましたッ!
なぜかというと、私が崇めている
ハッピーハッピー星の神様から
今朝お告げがあったからですッ!
ぜひ、当社に来ていただいて、
ハッピーハッピー星とも交信しながら、
お話をしませんかッ!」
みたいな感じで、
目をクワッと見開きながら超ハイテンションで話せば、
M&A仲介業者の界隈で
「あの会社はマズい…」
と噂になって、
ブラックリストに載れそうじゃないですか。
そうすれば、もう二度と電話はかかってこないはず。
問題はGo●gleのクチコミとかに
何か書かれそうなことでしょうか。
あ、一応断っておくと、
ハッピーハッピー星は実在しますから。
いやウソです。
こちとら営業一筋でやってきた手練です。
そんな安っぽい手法の営業にのってたまるか!
ってなもんです。
そんな仲介業者の存在を見ていると、
ある人たちを思い出すんですよね。
男女の縁を取り持つ世話好きのおばさんです。
昭和にはたくさん生息していたのですが、
仲介業者との大きな違いは、
手数料を取らないってこと。
おばさんたちはお金目当てじゃなくて、
本当におせっかい心で
やっていたんじゃないでしょうか。
「あなた、こんないい人逃すと、
婚期をずっと逃しちゃうわよ!
おばさん、もったいなくて仕方ないわ!」
とか言って。
(それはそれで、
迷惑を被った人もたくさんいそうですけど…)
反対に、
仲介業者とおせっかいおばさんとの共通点は、
「お見合い」ってことですよね。
その点にこそ、
私が合併買収の勧めにまったく気乗りせず、
冷めている理由があると思っています。
なぜなら、私はお見合い結婚じゃなくて
恋愛結婚がしたいからです!
(そこ?)
私自身もお見合い結婚ではなく、
恋愛結婚でした!
(そこ???)
2023年春、当社が協賛しているイベントがきっかけで、
同業他社の経営者と食事をする機会がありました。
実は、これってけっこうレアケースでして。
私、工務店や建築会社といった同業者に
あまり興味が向かなくて、
同業の友人ってほとんどいないんですよね。
その時は共通の経営者を介しての話だったので、
「まあ、たまにはいいかな」と思い、
足を運んだのでした。
その同業の経営者は、私よりひとまわり以上年下。
同じような商売をしていて、仕事内容も似ています。
ただ、社員の職種構成が全然違うんです。
彼の会社は現場監督が少なくて、設計士の数が多い。
逆に当社は、社内に設計士はいません。
案件やお客さまとの相性を鑑みて、
外部の設計士に依頼をするためです。
一方、現場監督の数は多いんです。
どちらが良い・悪いではなく、
違いが興味深かったですし、
やっぱりうちは独自路線なんだなぁとも思いました。
これまで機会がなかったものの、
たまにはこうやって同業他社の方と
情報を交換するのも面白いと思った食事会でした。
業界全体としての課題は同じなので、
通じ合うところはもちろんあります。
それぞれの会社の未来についても、
色々議論できるし、刺激になりますよね。
そう、まさに刺激を受けて、
私は食事会直後に閃いたのです。
画期的なビジネスアイディアを!
ねるとんパーティーだ!!!!!
…安心してください。
まだ、おかしくはなってないです。
引退しないです。
ハッピーハッピー星とも交信していないです。
企業合併・買収の件です。
M&Aの仲介業者たちが、
そんなにM&Aを成立させたいのであれば、
工務店や建築会社といった同業者をたくさん集めて、
出会いをつくるパーティー、
いわゆる「ねるとんパーティー」を主催すれば
いいんじゃないかと閃いたのです。
ここで、「ねるとんパーティー」
を聞いたことのないヤングのために
解説しましょう。
言葉の由来は、
「ねるとん紅鯨団」というテレビ番組。
1987年〜1994年にかけて
フジテレビの土曜日深夜に放送されており、
ものすごい人気を集めていました。
とんねるずが司会を務め、
素人の男女が集団でお見合いをする、
という内容のもの。
そこから集団でお見合いすることを
俗に「ねるとんパーティー」と
呼ぶようになったんです。
同じように、
「ゆくゆくは、うちの会社もどこかに
良い会社に引き取ってもらいたいなぁ」
とか、
「スピーディーな事業拡大のために、
相性のいい会社を見つけて合併する戦略もあるな…」
とか思っている企業経営者を集めて、
“ねるとんパーティー”をすれば話が早いのでは!
というアイディアです。
M&Aの仲介業者としても、
煙たがられる営業電話をかけるとか、
ダイレクトメールを送るとかの手間が省けます。
リアルな場で引き合わせれば、
すぐに互いの相性がある程度つかめて、
話も早く進むはず。
ここで、もし開催された時のことを想像してみましょう。
私が参加したらきっと、
最後の「告白タイム」のときには、
きっとたくさんの経営者が花束を持って
並ぶんだろうなぁ…。
でも、
「友だちに誘われて気乗りがしなかったけど
参加した私」は、
いくつもの差し出された花束を前にして、
「ごめんなさい!」
って断って、
「私、ちゃんとした恋愛結婚がしたいんです…」
ってコメントするんだろうなぁ…
という妄想が湧いて出てきます。
ねるとん紅鯨団を見ていない人からすると
なんのことやらわからないでしょうし、
気持ち悪いですよね。
ええ、我ながら気持ち悪いです。
さて、そんな戯言を話しているうちに、
あっという間に30周年を迎えて、
その先の40周年に突き進むことになりそうです。
当社としては後継者問題が未だに残っています。
以前、私の弟子を募集したものの、
なかなかうまくいかなかったんですよねぇ…。
もう一度、真剣に取り組まないと、
次の40周年を美しく迎えることができません。
待てよ…。
無理に「脇坂肇の弟子募集!」
とか呼びかけなくてもいいのでは…?
もっと自然な流れで、
いい人に出会える気がしてきました。
だって、私が望むのはお見合い結婚ではなく、
恋愛結婚なんですから。
この文章を偶然にも若き天才経営者が読んでいて、
「感動しました!
脇坂さん、ぜひいっしょに世界を変えましょう!!」
とか言って、会社がひとつになり、
彼の天才的な経営手腕によって、
会社の売上は超右肩あがりに。
でも、彼は人間的にも超人格者なので、
「この業績のすべては、
脇坂さんが脇坂工務店を創業してくれたおかげです。
会長として会社にいてくださるだけで、
僕は何も望みません!」
とか言ってくれて、
私は好きな仕事だけをやっている…。
いい!
それいい!
…こんな妄想しがちな経営者の
弟子になりたい方、どこかにいないですかね…?
脇坂肇