「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2024年6月21日 更新

#62

見えないから大事。

脇坂肇

「とても簡単なことだ。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない」

誰もが一度は目にしたことがあるであろう、
星の王子さまの有名な一節です。
そうです、
一番大切なことは目に見えないんです。
だから会社の価値という「財産」だって
見えないものなんですよ。

あの時、あの人物に向かって、
この一節を読み上げてやろうかと思いました…。
子どもに聞かせるようにゆっくりと、
地獄の底から響くような低い声で…。
ぐぬぬぬぬ…。

脇坂工務店の創業30周年を記念して、
東川町の酒蔵、三千櫻酒造さんにつくってもらった
オリジナル日本酒「三十櫻」。
非常に好評でした。
できる限り沢山の人に味わってもらって、
感謝の気持ちを伝えつつ、
喜びをわかちあいたい、
なんてことを考えて、1000本用意したんです。
Zepp Sapporoで開催した周年イベント
配布したものの、まだ数に余裕があったので、
AIR-G’さんと相談の上、
リスナープレゼントを実施することにしました。

と言うのも、
ラジオリスナーさんも
周年イベントに抽選で招待したのですが、
外れた方や、都合がつかなくて
来れなかった方もいたからです。
ちょっとでも当日の雰囲気を
楽しんでもらえればと思って、
合計30名様にプレゼントすることとしました。
ここまでの数を出すのは珍しいらしく、
AIR-G’さんからは、
「いやー、こんな数のプレゼントは、
最近あまり聞かないですねぇ」
なんて言われたほど。
まあ、1mmでも好感度上げたいものですから、
こちらは必死です(真顔)。

「当社WEBサイトに表示されている
キーワードを書いて応募してください」
という形にしたんです。
こちらとしても
タダでってわけにはいかないんでね…。
これでWEBサイトへのアクセス数が伸びる…!
あ、心の声が、つい。

そうやって、ある程度の手間をかけないと
応募できないはずなのに、
物好きなリスナーさんが多いようで(失礼)、
かなりの応募があったんです。

たくさんの応募があって良かったな〜
くらいに私は思っていたのですが、
話には続きがあります。
プレゼントの発送が終わって数日後、
続々とAIR-G’にメールが届き始めたんです。

「当たりました!ありがとうございます!」

「大切なときに飲みたいと思います!」

「ファンです、応援してます!」

「脇坂社長、カッコいい!」

当選者30名のうち、ほぼ全員の方から、
お礼や当社の周年を祝うメッセージを頂きました。
あ、最後のコメントは、
私が自分にあてた自作自演です。

ラジオへの出演をはじめて12年目。
これほどまでに、
脇坂工務店や私のことを慕ってくれる
ファンのような人たちがいてくれるんだなぁ
と驚きましたし、
なんだかもう、感動しちゃいました。

ラジオを通して、
たくさんの人とつながれていることを、
私は確かに実感しています。
「ラジオは、つながるメディア」
なんて言いますが、本当ですねぇ。
リスナーさんからの愛を感じるし、
私も気づけば、
リスナーさんへの愛着みたいなものが
芽生えてきています。
「ラジオ、いつも聴いています!」
とか言われると
「おお、ありがとうありがとう。
じゃあ、聴いてくれている御礼に、
家でも一軒建てちゃおうかな!」
と口走りそうになるくらいには、
リスナー愛が生まれています。

スポンサーとリスナーとの
理想的な関係だと思うんですよね。
AIR-G’さんの営業トークに使ってもらったら
いいんじゃないか!って思うくらいの好例かと。
当社事例を材料に営業が成立したら、
当然私の懐にも…(チラッ)。
AIR-G’担当営業のYさん、
わかってるよね…?
手数料20%も要らないから。

気持ちと気持ちが通じ合い、
私の心がフルオープンになった
リスナーさんとの心温まる交流。
これとは正反対に、私の頭の中で
「ファンファンファファン!キケン!キケン!」
とサイレンが鳴り響き、
蛍の光をBGMにして、
心のシャッターが
「閉店で〜す、もう開きません〜」
と完全に閉じた出来事があったんですけど、
聞きます…?
や、聞きたくなくても、
私の怒りを鎮めるために聞いてください。

「M&A担当のプロフェッショナルを
本州から連れてくるんで、
参考までに一度話を聞いてみませんか?」

付き合いのあった、
とある金融機関の人から、
こんな連絡をもらいました。

私、今年62歳になります。
これとか、これとか、
何度も「わかる話」でお伝えしている通り、
この先、脇坂工務店をどのようにしていくのか?
は近年、私にとって
非常に重要なテーマになっています。
数年後には明確に方針を決めておかないと、
もう間に合わないですから。
そこに備えるため必要なのは、
M&A絡みの情報については、
最大限アンテナを立ててキャッチすること。
なので、
このM&Aプロフェッショナルの話が来た時も、
まあ、聞いておいて損はないだろうと…。

で、結果から言うと、損でした。

あ、すいません、
あまりの怒りから、
ずいぶん端折った感想になってしまいました。

まあ、私の言い分を聞いてやってくださいよ…。

うちのオフィスに来た、
そのM&Aのプロフェッショナルとやらは、
挨拶もそこそこに、
いきなりお金の話をし始めたんですよ。
その時点で、
「おやおや…?」
と思った私を気にすることなく、
なんちゃらのプロ(雑)は話を続けます。
「えーと、
脇坂工務店さんの資本金が
これだけの金額なら、
株価は●●●円と算出できます。
よって、M&Aが成立した場合の手数料は、
▲▲▲円になりますね」

「え?つまり、私に残るお金は…」

「なので、●●●−▲▲▲だから、■■■円ですね」

おいおいおいおいおいおいおい!
とツッコみたくなるような金額、
■■■円を提示してきたのです。
つまり、むちゃくちゃ高額な手数料をとって、
そのぶん私の手元にはほとんど残らない、
という内容の話でした。

「30年に渡って、築き上げた会社を
そうやってカンタンに数字にして、
しかも、▲▲▲円を取っていくとは、
どういうことですか、お宅…?」
とコメカミがピキピキしている私。

これを読まれている皆様におかれましては、
●や▲、■に入る数字を
各々当てはめて読んでみる、
という楽しみ方ができるかと存じます。
「脇坂肇が怒りそうな金額から逆算すると…
■■■円は30万円とか?」
みたいな。
お暇な時、眠れない夜などにお試しください。

というか、
手数料の高さもさることながら、
30年間やってきたことを
ものすごく過小評価された気がしたから、
ピキピキきたんですよねぇ…。
●●●円だと…?
しかも、算出してくれなんて頼んでないし!

超高齢化社会に突入して、
経営者の高齢化がますます課題になってきています。
会社を畳むのか、売却するのか、
誰かに継いでもらうのかを決めなければならない。
決断を迫られる会社の数は、
今後増える一方でしょう。

という世の中の流れがあるから、
M&A仲介に参入する会社が多いんですよね。
様々な企業と接点を持っている金融機関は、
このビジネスチャンスを
指をくわえて見ているわけにもいかないから、
専門部署や子会社を立ち上げて、
M&A事業に力を入れてきています。
スペシャリストを育成するべく、
専門会社へ出向させる、なんて動きもあります。

や、わかりますよ。
彼らのような人たちは、
決算書の数字でしか
会社の価値を判断できないってことは。
別の要素で判断、たとえば…
そうですね、
社長の面白さとかで判断はできないでしょう。
「ここの社長、ウケる〜!
よし、企業の資産価値は150%UPだ!」
とかにはならない。
もしそうなら、脇坂工務店は、
100億円くらいで売却できるはずですから…。
…あ、スベりました…?
というか、逆に、
社長の面白さを含めて
企業の資産価値を算出された結果、
「980円です」
とか言われたら、私は一生立ち直れないな…。

まあ、実際に面白いかどうかはさておき、
その決算書にある要素以外のことが、
どれだけ会社の売上や利益につながっているかを
説明するのは、なかなか難しいですよね。
私だって、もし他の会社を買うことになったら、
数字を信じて判断するでしょう。
なので、気持ちや立場はわかります。

怒りの根底にあったのは、
やるせなさだったと思うんですよ。
ラジオを通して生まれたファンとのつながり
みたいな抽象的で見えないものは、
企業を査定する上で、
まったく評価対象にならないんだな…と。
寂しくも悔しかったんです。

「つながり」と近いものとしては、
知名度があると思います。
こちらのほうが、
まだ査定に影響は出そうな気もします。

知名度を上げるために使われる手段として、
一般的にわかりやすいのは、
TVCMとか新聞広告とかですよね。
そうなんですよ、
大きな会社だったら、
お金にモノを言わせてバンバン広告をうって、
知名度を爆上げすることだってできるでしょう…。
まあ、言い方からわかるように、
私はひがんでいます。

かたや、うちみたいな中小企業は、
そういったPRに多くのお金を使えません。
せいぜい、私のポケットマネー10億円くらいです。
すいません、見栄を張りました。
嘘です。
誰かTVCMとかをおごってください。

そんなお金のない当社のような零細企業の
強い味方がラジオなんです。
そのラジオを活用してきたから、
当社は少なくとも道内においては、
かなりの知名度を獲得できたんじゃないかって、
つくづく感じているんですよ。

最近、特にそう思うことが
立て続けにありまして、
こうなったら、
「建設業界で脇坂工務店を知らない人はいない!」
とまで言い切ってしまいましょう。
他業界の人たちは
「脇坂工務店?なにそれ?」
かもしれないですが、
建設業界における知名度の高さについては、
ちょっとした自信があるんです。

「業界あるある」なんですが、
工事現場って、
だいたいラジオを流しながら作業しているんです。
今度、家の工事現場とか近くを通りかかったら
耳を澄ましてみてください。
かなりの確率でラジオ流しているはずですから。
また、車移動が基本の仕事なので、
車中でラジオを聴くことも多い。
だから、
ラジオをメイン媒体として使っていれば、
当社の名前を、
職人や現場監督は自然と知ることになるんです。

その証に、私が新規の取引先とお会いした際、
名刺交換すると必ずと言っていいほど
「ラジオ聴いてますよ!」
と言われます。
その効果はラジオ出演している私だけでなく、
他の社員たちも実感しています。

最近もこんなことがありました。

2024年5月、
不動産事業部を担ってもらうため、
当社は一人の人材を迎え入れました。
その名はSさん。
不動産業界一筋、御年6●歳のベテランです。
金融機関系の不動産会社で定年を迎えた後、
再就職先として我が社を選んでくれました。
元の会社ではエース的存在で、
当社とも何度か仕事をともにしており、
勝手知ったる仲とでも言いましょうか。
それで馬が合う会社と
思ってくれたのではないでしょうか。

Sさん、今年のGW明けから、
うちの名刺を持って、
つながりのある会社さんとかに
挨拶回りに出かけています。

ある日、会社に戻ってきたSさんは
びっくりしたような顔で、
私に向かって、こう言い放ちました。

「いやー、脇坂さん、
この名刺を見せるとね、
会う人、会う人、みんな
『あ、脇坂工務店さんじゃないですか!
社長のラジオ聴いてますよ!』
って言うんですよ!
意外と有名なんですね〜」

そうなんです、意外と有名なんです。
こういったことが、ちょいちょいあるたび、
当社の知名度の高まりを実感しております。

ただ、ひとつ気になるのは、
「意外と有名なんですね〜」
というSさんの言葉。
意外と…?
当社のことを
ちゃんと考えて入社したんだろうか…
と心配になります。
ひょっとしてノリ…?

こういった例は枚挙に暇がありません。
他にもこんなことがありました。

3月くらいから、
札幌のあるビッグプロジェクトに関わっております。
2025年着工予定のもので、
ある設計事務所さんと
当社がタッグを組んで進行中です。
内容としては、かなり古いRC建築物の
耐震改修工事と内装工事なんですが、
規模がかなりの大きさなので、
当社だけで施工を担うのはなかなか荷が重いな…
という現場です。
技術的に、というよりも、キャパ的にですね。
2024年、25年と、既に複数の案件が
倶知安ニセコで決まっていて、
猫の手も借りたい状況なんですよ…。

そこで、その設計事務所さんが、
つながりのある中堅ゼネコンさんに
声をかけてくれて、
3社でいっしょにやりましょう、
ということになりました。
ならば一度顔合わせをしましょうか、
ということで、3社で集まったんですね。
私は都合があわずに出席できなかったため、
現場担当者を送り込んだのですが、
その中堅ゼネコンさんからは、
部長職クラスの方が登場すると聞いていました。
相手は創業100年を超える歴史ある会社さん。
私は内心、
「相手は歴史ある企業…。
うちよりも規模も大きい
ナメられないようにしなければ…。
バシッとやってこいよ!」
とうちの担当者に対して
無言の圧力をかけていました。

顔合わせ当日、
オフィスに戻ってきた担当者に
私は
「ど、どうだった…?」
と尋ねたところ、
「いやー、相手の部長さん、
開口一番
『脇坂さんと仕事ができて光栄です!
いつもラジオ聴いています!』
って仰ってましたよ」

いやいやいやいや、
それはこっちのセリフでしょ!
そんな歴史ある会社と肩を並べて
一緒に現場入れるなんて!
あなたの会社、100年企業でしょうが!
こっちはたったの30年企業ですよ!
と謎のツッコミを繰り出してしまいました。

といった具合に、
ラジオの力って大きいなぁ
と思う今日この頃です。
もとはと言えば、
当社WEBサイトへのアクセスを伸ばすために
選んだメディアがラジオでした。
まあ、言ってみれば数字のためです。

その狙い自体は当たっていて、
現在は安定したアクセス数を叩き出しています。
また、この「わかる話」のおかげなのか、
WEBを訪れた人の滞在時間も長いんですよ。
(そういうデータも取れるようになっています)

サイト滞在時間が長いと何が起きるのかっていうと、
G●ogleみたいな検索エンジンは、
「このサイトは、
訪れた人の多くが長く滞在しているから、
きっと有益な情報があるところだ!」
と判断して、
「有益なサイトであるからには、
検索結果も上位に出てくるようになるとよろし」
となり、
「北海道 工務店」
で検索をかけると、
上位に表示されるようになるんですって。
G●ogle様が善きに計らってくださるわけですね。

まあ、G●ogle様のAIが
わかる話の内容を分析した結果、
「ナ、ナンダ、コノヘンナブンショウハ…。
ワタシニハ、リカイデキナイ…プスプス…」
と煙が出るくらいおかしくなって、
検索上位にきている可能性も
否定できない気はしていますけど。

WEB上で
当社を見つけてもらいやすくなったおかげで、
先日も、本州の設計事務所から
突然問い合わせを頂きました。
これまた、仕事につながりそうです。

こういった状況を生み出すことは、
一朝一夕では実現できないでしょう。
そりゃ、大金を積むとか、
札束で顔をはたくような真似をすれば、
一時的には知名度がドカンと上がって、
問い合わせがたくさんくるかもしれませんが、
持続性はないはず。
お金が尽きたら、そこで終わりです。

また、知名度を獲得したとしても、
それが「良い知名度」なのかどうかって大事です。
つまり、企業に対しての愛着みたいなものが
含まれているかどうか、ということです。

会社経営が31年目となった
2024年6月時点で、
ラジオ出演は12年目、
こちらの「わかる話」は6年目に突入しました。
長くやっているから、
得られるものって、きっとあると思うんですよ。
しかも、ただ知られるだけではなく、
リスナーさんたちと深いつながりを持てる、
企業に対して愛着を持ってもらえるというのは、
プライスレスな価値ですよね。

売上や利益のように、
わかりやすい数字ではないけれど、
「目に見えない財産」を
私はこれからも大事にしていきたいと思います。
“M&Aのプロフェッショナル”
のような人たちには、
見えないかもしれないけど、いいんです。
これが私の経営ですから。

あ!
そういう人たちのために、
見えない財産が見える方法を思いつきました!

私が出演した過去のラジオ番組を
24時間ぶっ通しで聴くという合宿プログラムです。
その名も
「脇坂肇ウルトラリスニングマラソン」。
銭函で開催しましょう。
終わった後には、
きっと何かが見えてくるはずです。

脇坂肇