2024年9月24日 更新
#65
趣味を探して。
定年を迎えた、
一人のサラリーマンがいるとします。
40年以上、仕事一筋の人生だった彼。
忙しさにかまけて、
趣味をつくらなかったばっかりに、
会社に行かなくなったら、やることが皆無。
何をしていいのかわからず、
一日中家でゴロゴロ、ゴロゴロ。
ぼーっとテレビを観るだけの毎日に。
奥さんとの折り合いも悪くなって、ケンカが増え、
愛想を尽かされて出て行かれてしまう…。
そんな熟年離婚という悲劇を
耳にしたことはないでしょうか。
ある意味、「無趣味」が離婚の原因になるわけです。
で、ふと気づいたんです。
そういえば、私の趣味ってなんだっけ…?
あれ…、ひょっとして趣味がない…?
かつて、私には
華々しい(自称)趣味遍歴がありました。
いくつかご紹介しましょう。
まず、高校時代。
部活で柔道をやっていた流れから、
自然と格闘技が大好きになりました。
「元気ですかー!」
って、アントニオ猪木さんのモノマネばかり
やってましたっけ…。
柔道の上達よりも、モノマネの上達が
著しかったと自覚しています。
格闘技といえば、
元修斗の世界チャンピオンが友人の後輩
という縁があったため、
2023年末、彼の引退試合を観に行きました。
試合までに時間があったので、
アントニオ猪木さんのお墓参りをするべく、
横浜まで足を伸ばしたりもしました。
とはいえ、若い時のような
のめり込み方は、もうすっかり影を潜め、
最近はとんとプロレスを観ていないですね…。
赤いマフラータオルを肩にかけると、
未だに私の中の
アントニオ猪木さんが蘇る程度です。
社会人になってからはディスコにハマりました。
社会人一年目の時、
世間は空前のディスコブーム。
いわゆるバブルですねぇ。
私もご多分に漏れず、
週2,3回くらいはススキノのディスコで
フィーバー(死語)していました。
さらには40代後半になってから、
HIPHOPダンスを2年ほど習っていたことも、
ここに告白します…。
同じスクールにいたキッズたちに、
まったく歯が立たなかったことは覚えています。
負ける気はしなかったのですが、
頭と身体が一致せず…。
あの頃、キッズから投げかけられていた
「あのおじさん、
なんだか奇妙な動きをしているけど、
大丈夫かな…」
という警戒心と哀れみがこもった眼差しは、
今でも忘れられません。
いまだに踊るのは嫌いではないんです。
でも、60代に突入した今、
私が再びHIPHOPをやり始めると、
色んな意味で周囲をザワザワさせそうです。
「踊りながら、営業する社長」
って斬新で、
TikTokでバズりそうだと思ったのですが、
失うものも多いでしょう…。
商談のたびに踊りを披露するハメになりそうですし。
今の私にできるのはせいぜい、
往年のディスコソングをYouTubeで観ながら、
晩酌することくらいですね…。
30代後半から40代後半までは、
狸小路商店街の神輿会に入っていました。
ものすごくざっくり言えば、
ふんどしを締めて、神輿を担ぐ活動です。
あの一体感や高揚感は他で得難いものですし、
普段接点のない人たちと
仲間になれる良さがありました。
ただ、仕事が忙しくなってきたこともあり、
神輿会を卒業して、しばらく経ちます。
それでも、今だに神社仏閣巡りは好き。
2024年の年末にも、
伊勢神宮へお参りに行く予定を立てています。
これで4年連続、合計8回ほどの参拝。
とはいえ、これが趣味かと問われると、
ちょっと違う気はしています。
2000年に銭函オフィスを設けてからは、
海入り放題の環境になったものだから、
BBQや海遊びに熱中していた時期もありました。
仕事中に…
あ、いや…、
し、仕事が終わってから泳いだり、
シーカヤックに乗ったり、沖に出て釣りをしたり、
と海でできる遊びは一通り制覇。
そして夏はほぼ毎週末、海を眺めながらBBQ。
お客さまや地元の人たちを招待して、
楽しい時間を過ごしたものです。
というか、こうやって文字にしてみると、
私、完全にパリピですね。
何事も先どりするタイプなので、
パリピも先取りしていたわけです。
しかし、2016年に銭函の海沿いから、
銭函駅前へオフィスを移転してから、
すっかりパリピから卒業。
目と鼻の先にあるにもかかわらず、
不思議と海に足が向かなくなりました。
最近、時間を費やしているのはNetflixです。
私の視聴スタイルは、ちょっと独特でして。
気に入った作品は何度も繰り返し見るというもの。
かつて、話題のドラマやバラエティなどは、
その放送時間にあわせて、
テレビの前に座って見るというスタイルでしたよね。
しかもビデオなどが普及してない時代は、
見られるチャンスはリアルタイムの1回きり。
それがNetflixのようなサブスクだと、
いつでも何回でも見られる!
個人的にはここがツボで、
「地面師たち」は2周、
「VIVANT」なんて3周しました。
「オチを知っているけど何回も観る」
って何かに似ている…と思ったら、
落語なんですよね。
古典落語なんて、話の展開をみんな知っているけど、
見るたびに笑ったり泣いたりするわけで。
こんな具合に、
映画・ドラマ鑑賞も好きではあるけど、
趣味かと言われると…
といった感じです。
趣味の移り変わりをお話してきましたが、
ずっと変わらずに好きなものをあげるなら、
それはもう車でしょう。
2000年、銭函に当社オフィスを設けたのですが、
何が一番気に入っているかって、
札幌の自宅から銭函オフィスまでの
マイカー通勤なんです。
考え事をしながら車を運転する40分ほどの時間が
好きなんだなぁと改めて思っています。
5年前、5年落ちのオープンカーを買いました。
(冬は乗れないような車種です…)
天気の良い日は、
それに乗り込んで、幌を全開にし、
サザンオールスターズの曲をかけながら、
出勤するとテンションが上がりますねぇ。
うっかり熱唱すると、
周りに丸聞こえになるので要注意です。
そのくらい車の存在は私にとって大きいのですが、
これは趣味なんだろうか…?
…いや、違う…。
別にポルシ●やランボルギ●ニのような
高級車に乗って、
「遂に私も成功者になったか…」
とか自分に酔いしれたいわけでは
決してないんですよね。
かつては、そういう気持ちが
ゼロだったわけではありません。
人並みに、
そういう車が気になったことはあります。
でも、ある車との出会いによって、
気持ちが完全に落ち着きました。
その名はGT-R。
日本を代表するスポーツカーです。
若い頃からの憧れだったのですが、
昨年、自分の還暦祝いに!と思って、
奮発して購入抽選に申し込んだのです。
(人気で全然買えない車種なので)
結果は見事当選。
残りの人生の運をすべて使い切ってないか不安!
そのGT-Rという車、“羽根”がついているんです。
空気抵抗を良くするウイングってやつですね。
かつて、そういう“羽根つき”車は、
やんちゃな若者が乗っているイメージが
強かったのですが、
「60歳になったから逆にいいのでは?逆に!」
という謎理論を自分自身に提唱して、
羽根のついた車を選んだわけです。
カラーはガンメタリック、通称ガンメタ。
リセールバリューを考えて、
黒とか白とかの人気カラーを選ぶやつは、
本物じゃない!とさえ思っています(偏見)。
私の世代はこのガンメタなんですよ。
このカラーが出始めた当時は、
あまり見向きもされなかった色だと
記憶しています。
まぁ、ネズミ色といえばネズミ色ですから…。
でも、徐々に、それがカッコいい!
と人気になったんですよね。
というわけで、
興味ない人からしたら、
羽根やら色やらどうでもいいことを
嬉々として喋りまくるくらい、
このGT-Rを購入してすっかり満足した私。
他の高級車への興味が一気になくなりました。
煩悩から解き放たれて、
まるで悟りを開いたかのように…。
街中でフェ●―リとか見ても、
「きー!羽振り良さそう!羨ましい!」
とかは一切思わず、
「あんな車高が低いと、乗り込む時、
腰を痛めるでしょう…どうぞお気をつけて…」
と微笑みながら
ドライバーの安寧を祈るくらいには、
心にゆとりがあります。
そして、悟りを開いた私が、
現在車を選ぶ基準は、
「社員のみんなが、お下がりで使いたいかどうか」
ということになっています。
例えば、私のもう一台のマイカー、
トヨタのピックアップトラックがまさにそれ。
荷台に荷物が詰めるビッグサイズなんですが、
現場で頑張る社員たちに
あとあと譲ろうと思って選びました。
職人って、こういうワイルドな車が好きなんです。
案の定、みんなから
「社長、すごい良い車乗っているじゃないですか!」
と好評。
早くお下がりにしないと、
ストライキが起きそうなくらい好評です。
こんな感じなので、
「車好き」とは言えると思います。
ただ、趣味と言い切れるほど
没頭していないことを自覚しています。
結局ですね、
好きなものはたくさんあるんですが、
どれもこれも趣味じゃないなー、
趣味じゃないなーと思っています。
これでは、無趣味人間のまま、
やがて仕事を引退する日が訪れ、
「あんた、掃除の邪魔なのよ!」
とか奥さんに言われて家にいられなくなり、
公園でハトにエサを与える人に
なってしまうのでは…!
私の趣味、私の趣味は、
どこかにありませんか!
あ…!
あ、あった…!
こ、こんな近くに…。
オチが読まれていた空気を
ひしひしと感じていますが、
私の趣味はすぐそばにありました。
そうです、仕事です。
灯台下暗しとはこのこと。
考えれば考えるほど、
私の趣味って仕事だなぁと思うんです。
社会人になって以来、ずっとハマっていて、
いまだにハマっています。
注ぐ熱量が変わらないのは、
やっていることの幅広さが一因だと思っています。
営業活動をしたり、お客さまとのやりとりをしたり、
不動産売買をしたり、
マーケティングをしたり、経営戦略を考えたり、
ラジオの台本を考えたり、ラジオに出たり、
踊ったり、歌ったり、モノマネしたり…と、
とにかく幅広い。
法に触れること以外は、ほぼ守備範囲です!
そういう仕事をしている中で一番好きなことは、
お客さまに喜んでもらって、
嬉しそうな顔を見れること。
そんな瞬間に、
「あぁ!この仕事好き♡」
って思うんです。
キュンキュンしちゃうんです。
あ、気持ち悪いですか。
いつも目をハートマークにしながら、
働いているはずなのですが。
(決して目は¥マークになっていないはず)
で、お客さまに喜んでもらうために、
企てることが好きなんですよね。
例えば手に入る土地があったとしたら、
そこにアパートを建てようか、
土地を半分に切り分けて売ろうか、
建売住宅を建てて売ろうか、とかとか。
妄想しながら、
「こうなるといいなー」
と考えるのが好きなんですね。
最近、倶知安ニセコで、
自社でアパートを建てていますが、
これも企みの一つ。
自分で現地に足を運んで“市場調査”をした結果、
導き出した企みです。
私が気づいたのは、近い将来、
工事関係者の宿舎が必ず足りなくなる
ということです。
ホテルや別荘などの建設、
新幹線工事や高速道路の延長工事など、
同エリアの活況はしばらく続きますから、
どう考えても、
泊まる場所が足りなくなるはずなんです。
形ない状態から企てて、建築という形にして、
変化を起こしていくことが喜びなんでしょうね。
みんなが気づいてないけど、
自分は気付いたぞ!
というタネを見つけるのが快感というか。
銭函なんて、まさにそうでした。
2015年、
銭函駅前にアパートを建てることを決めた時、
「銭函=さびれた海沿いの街」みたいな
イメージが一般的だったせいか、
周囲からは、
「大丈夫?」「部屋、埋まるの?」と
散々反対やら心配やらされました。
ただ、2000年から銭函を見てきた
自分としては確信があったんです。
実際、建てたアパートはほぼ稼働率100%で、
ウエイティングリストができるくらいの
人気物件となりました。
手前味噌ながら、
銭函の賑わいをつくる一翼を
担えたのではないでしょうか。
反論していた人たちに会う時には、
ドヤ顔にならないよう気をつけています。
こういった取り組みに対して、
「先見の明がある」
なんて言ってもらえることもありますが、
自分としては商売を真剣にとらえて、
世の中から必要とされるだろうな、
ということを想像して、
形にするべく行動しているだけです。
といった具合に楽しくて仕方ないので、
私の趣味は仕事なんですね、きっと。
いまだにハマりっぱなしで、
情熱が尽きることはありません。
「趣味が仕事」の問題があるとしたら、
実務をやってくれる社員が
すごい忙しくなることでしょうか。
私の企てが当たって、物事が動き出すと、
社員は大変そうです。
先日、社内で、
「来月は6件も不動産契約があるんですよ…」
と担当社員がぼやいていたので、
微笑みながら、
「お疲れさま。手伝おうか?」
と声をかけました。
「あ、大丈夫です…」
という反応でしたが、
「手伝われると、逆に面倒」
と顔に書いてありました。
しかも、力強い毛筆で。
ニセコでも同じようなことがありました。
先日、見積もりを担当する社員が
ぽつりと言ったんです。
「社長、いま見積もりを出している案件、
これ、ぜんぶ決まったら、誰がやるんですか…?」
不安そうな社員に、私は決まってこう言います。
「大丈夫、人員は私がなんとかするから!」
まあ、何のアテもないんですけどね。
実際、これまではなんとかしてきましたから。
(社員が何とかしてくれた、とも言えます)
では、最後にひとつ質問です。
趣味の定義って、何だと思います?
私の答えは、
「趣味とは飽きないもの」です。
ずっとやり続けられるくらい、ハマるもの。
夢中になれるもの。
つまり、私の趣味は飽きない…、
あきない…
商い…ってことです。
……。
お、おあとがよろしいようで…。
皆さんから飽きられないよう、
精進致します。
脇坂肇