2024年11月22日 更新
#67
東名阪の遠洋漁業。
ついに長年の夢が、
現実のものになろうとしています。
脇坂工務店は2024年12月から
東名阪に進出するのです。
東名阪…
トウメイハン…
ああ、なんていい響きなのでしょう…。
この音を聴きながら、
ご飯三杯くらいは食べられそうです。
我が社もついにここまで上り詰めたのか…。
あ、ひとつ肝心なことを言い忘れていました。
脇坂工務店が進出するのは、電波上です。
ええ、電波上の東名阪。
日本中、人が足りておりません。
どの企業も人材がいないことには、
ビジネスが成り立たない!
ということで、
各社、人材奪い合いの様相を呈しております。
例えば、バス業界。
運転手不足によって、
路線バスが便数を減らしたり、
余儀なく廃線を決めた、
といったニュースをよく耳にします。
物流業界でいえば、
「2024年問題」
というトラックドライバーの不足も
問題になっていました。
少子高齢化が進み、
こうなることは統計的には明らかだったものの、
なかなか根本的な解決策が見いだせず、
いよいよ問題が現実のものとなりつつあります。
私たちの建築・不動産業界に関していえば、
除雪が悩ましい問題。
ドカ雪が降ったりして除雪に迫られた時でさえ、
除排雪を断られる事態が
ここ数年の間、既に起きています。
除雪車を操るドライバーが不足しているんです。
除雪を断られたら、
私が汗をかきながらママさんダンプで
除雪すればいいのでしょうが、
それをやっていると、冬が春になってしまうし、
私が原形をとどめないほど
やせ細ってしまいそうなので、
できれば避けたいところです。
お金を出しても断られる仕事がある。
そんな状況、なかなか衝撃的ではあります。
私、なにぶん昭和の人間なものでして。
当時はそりゃもう激烈な競争社会でした。
自分たちのキャパシティが一杯だろうと、
仕事があることを嗅ぎつけたら、
必死でそれをとりにいくわけです。
ただ、仕事をとったはいいけれど、
キャパシティが急に増えるわけでもなく、
相変わらずパンパン。
じゃあ、どうするか?
昭和の価値観であれば、
「がんばって、やる。以上」
(いざ文字にすると、昭和って怖いですね…)
それが今やどうでしょう。
仕事があったとしても
こなせない状況が生まれています。
このまま少子高齢化がさらに進むと、
日本はどうなるのか…。
この人手不足問題、
脇坂工務店にとっても対岸の火事ではありません。
グループ会社のKai建築では、
大工さんを何名も抱えていますが、
仕事の依頼が混み合ってくると、
やはり人手が足りない状況になっています。
うっかり私が昭和のノリで、
大規模な仕事を
「うち、できるッス!全然余裕ッス!」
といって受注して、
「デカい仕事とったぞ〜!」
と会社に喜び勇んで戻ってくると、
みんなが冷たい視線を私に送りながら、
「今、これだけの仕事が動いていて、
余力がほとんどないのに、どうするんですか」
と詰められます。
まあまあ、これは半分冗談。
(半分冗談じゃない部分は、
社員の視線が冷たいあたりです…)
会社の稼働状況を踏まえて、
「くっ、この案件は是が非でもやりたいけど、
今の忙しさだと、うちでは無理だな…」
と思って泣く泣く手を引く、
みたいなことはあります。
もう昭和じゃないですから…。
あ、私個人に限って言うと、
仕事が膨大にあっても、
「がんばって、やる。以上」
という昭和スタイルでやらざるを得ません。
誰もやってくれないですからね…。
社長は辛いよ…。
ただ、仕事がせっかくあるのに、
私たちを必要としてくれる人たちがいるのに、
眼の前の仕事が他へ流れていく様子を、
指をくわえて眺めていなければならないなんて!
嫌な時代だなぁとは思いますねぇ。
もっと、人がいさえすれば…。
そんな人がいない問題を、
ア●キタとかリクル●トなどの
求人情報会社の営業パーソンにぶつけると、
だいたい答えは決まっています。
「ええ、ええ、わかりますわかります。
今は人が来ない時代なんです。
だから、求人広告を出しましょう。
他社さんもそうしていますから!」
それって、
御社のフトコロが潤うだけなのでは…?
と思いつつも、
まあ、そんな文句を彼ら彼女らに言ったところで、
事態が良くならないわけで。
他に突破口としてありえるとしたら、
通りの曲がり角を曲がった時に、
優秀な人材と偶然にぶつかって、
運命の出会いを果たすとか…。
ハンカチを拾ってあげた相手が
凄腕の現場監督だった…
とかでしょうか。
いや、ないな…。
あと5回くらい生まれ変わっても、
そんな運命の出会いは、たぶんないでしょう。
オーケー。
北海道に人材がいないことは認めましょう。
ただ、人がいないところに、
普通の求人広告を打っても反応が薄いのは明らか。
しかも、競合も同じように出稿しているから、
ライバルだらけの状況。
魚がいないところに、
大勢で寄ってたかって釣り糸をたらしても、
そりゃ釣れないってもんです。
うーん、何かアイディアはないだろうか…。
うーん…
うーん…
うーん…
うーん…
うーん…
…はっ!
閃きました!
そうか!
近場に魚がいないなら、
遠洋漁業に出ればいいんじゃないか…!
あ、ひょっとして、
「もう、働いてくれる人がいなくて、
どうしようもないから、
社長自らマグロ漁船に乗って稼いで、
会社に仕送りをする」
みたいなことだと思いましたか。
ちがいます。
それ既にやってますから。
いや、ウソです。
まだやってません。
最後の手段として取ってあります。
マグロ漁…
…じゃなかった“遠洋漁業”について
詳しく解説しましょう。
まずお伝えすべきは、
現時点の当社の混み具合について。
相変わらず倶知安ニセコの仕事が、
次から次へと舞い込んできている状況です。
これまで同エリアで数々の仕事を納めてきたので、
その評判が次につながって、
仕事がじわじわ広がっている。
そんな手応えがあります。
なので、ノドから手が出るほどに、
サンタさんにお願いしたくなるほどに、
人材が欲しい状況がまさに今。
特に現場監督が欲しい!
そこで、一度立ち止まって
準備を整えることにしたのが、
脇坂肇流のやり方です。
どういうことかと言うと、
ここで受け入れ体制をちゃんとつくらないとマズイ
ってことです。
単に給与などの待遇面でアピールしても、
ライバルと過当競争になるだけ。
もっと別の働きたくなるポイントをつくらないと、
転職先として、
脇坂工務店に魅力を感じてもらえないはず。
というわけで、倶知安に作ったのが、
#66で紹介した宿舎「マチネ」です。
完成間近の「マチネ」には、
デザイナーがデザインした看板や
部屋番号のサインなどが取り付けられ、
社宅とは思えないほど、
カッコよく仕上がりつつあります。
仮に札幌に建っていても、
人気物件になるんじゃないかな、という完成度。
宿舎というアピールポイントが出来たら、
次の準備は人材募集ページの制作でした。
「人生を変えたい、現場監督のあなたへ。」
というキャッチコピーからはじまる、
WEBページをつくったんです。
かなりの長文ですが、
私の自己紹介にはじまり、
人材募集をしている経緯、
これまでの会社の実績、任せたい仕事、
待遇などなどを紹介する内容となっています。
読んでもらうと、
普通の求人広告とは様子が異なることに
気付くでしょう。
載っているのは言葉だけです。
よくある仕事風景の写真とか、
社員一同が腕組んで映っている写真とか、
細かな待遇とか福利厚生とか、
そういう情報は一切ありません。
他社と同じことをするのが、
何より嫌な社長がいるものでして…。
WEBですから、
物理的には世界中から閲覧できます。
これを作っておけば、
地球の裏側で活躍する
日本語ペラペラのブラジル人現場監督が
「Oh! ワキサカコウムテン、ナンカスゴイネ!」
と感銘を受けて、
応募してきても、なんら不思議ではない!
これでジャンジャン問い合わせが来る!
…とは思わないのが脇坂肇です。
普通なら、受け入れ体制を整えて、
WEBページを完成させた時点で、
「わーい!完璧だ!これで人が来る!」
と思うでしょう。
チッチッチッチ…!
甘い!
「あ、WEBの広告とか…?」
という声が聞こえてきましたが、
チッチッチッチ…!
チッチッチッチ…!
甘い!
SNSを活用した広告なども仕込んでおりますが、
それは今の時代、モチのロンです。
では、何をやるのか?
それが遠洋漁業です…!
いや、もとい、
東名阪でラジオCMを打つんです。
ラジオを活用して、
北海道から遠く離れた東京・名古屋・大阪で、
現場監督を募ることにしたわけです。
東名阪のAIR-G’の系列局、すなわち、
TOKYO FM、FM AICHI、FM大阪の3局で
スポットCMを流します。
2024年12月から2025年3月までの4ヶ月間。
毎週土日に2本ずつ、
脇坂工務店のCMが流れます。
週末の13時から18時の時間帯を指定しました。
長寿の人気番組が多数あります。
山下●郎とか福山●治とかが、
「じゃあ、ここでCMです」
とか言ったら、
そこで当社のCMが流れるわけです。
考えただけでもすごい!
え?
あ、そのタイミングで流れるかどうかは
保証できない?
AIR-G’の営業から横槍が入りました。
わかりました、落ち着きましょう。
まあ、とにかく、
東名阪の主要ラジオ局でCMを流すのです。
肝心のCM中身ですが、
現場監督の経験者にむけて、
「北海道の倶知安ニセコで仕事しませんか?」
と呼びかけるもの。
お察しの通り、
その呼びかけ方も少しおかしなことにしています。
脇坂工務店ですから…。
じゃあ、なんでまた、
わざわざ道外のラジオ局を使って求人を行うのか?
このアイディアに着地した経緯を、
ちょっとお話しましょうか。
2023年に求人CMを作りました。
道内の現場監督経験者に向けてのCMです。
これを作った後に、
AIR-G’のエラい人から、
こんなアドバイスをもらったんです。
「脇坂さん、TOKYO FMで、
ミニ番組をやったらいいんじゃないですか。
倶知安ニセコへの移住を勧める内容にして、
そこから人の採用につなげる、みたいな」
なるほど…その手はアリかも…!
と思って、
実現に向けて調整に入ってもらったのですが、
諸般の事情で実現せず。
そして、2024年。
仕事が立て込みまくった結果、
脇坂工務店は、昨年より輪をかけて
人を採用しないといけない状況に陥りました。
これはマズイ…ということで、
AIR-G’の担当営業Yさんや代理店のFさんたちと、
作戦を練ることにしたんです。
その会議の中で行き着いたのが、
東名阪のラジオ局で
CMを流すアイディアだったのです。
ただ道外で呼びかけるだけじゃなく、
いつ流すのか?という点もポイントでした。
私たちがとった作戦は、
週末の落ち着いた時間帯、
かつ人が極力多く聴いている時間帯を狙って
CMを流すというもの。
週末の13時から18時の間というのは、
現場監督の大半からすると休みのはず。
忙しない平日とは違います。
そんな時、人は人生について、
考えがちなのではないでしょうか。
現在の仕事が充実している人はいいですよ。
でも、仕事に小さな不満があったり、
暮らしや環境に小さな不満があったりすると、
余裕のある時間が生まれれば、
ついつい先の人生のことを考えてしまうのでは。
ものすごく深刻に、というよりは、
たとえばこんな風に…。
「そういや、この先10年後も同じ会社で
自分は働いているのかなぁ。
悪い会社じゃないし、周りにも恵まれているけど、
子育てのこととか考えると、
こんな都会よりは、
自然豊かな環境で育てたいのが本音。
かといって、いきなり田舎に行って、
現場監督の仕事があるのかどうか…。
あったとしても、
面白い建築に携われる可能性は低そうだな。
あと、今よりも給与とかの条件を
思い切り下げざるを得ないだろうし。
自然豊かな環境で、仕事のレベルも高くて、
かつ待遇もいい、なんて会社ないかなぁ」
てな具合にぼんやり考えている心のスキマに
ジャストミートする内容を、
脇坂工務店なら提供できるはずです。
そう、ジャストミート!(福●朗風)
しかも、昨今の日本の暑さは異常。
というか、既に異常ではなくなって、
これがもう通常になりつつあります。
その点、かつてと比べると北海道も
気温が高くなってきているとはいえ、
まだまだ快適。
そんな環境も転職を後押しする要因になるはず。
では、なぜ東名阪の3局に絞るのか?
答えは…
38局全局に出稿すると、
脇坂工務店が潰れるからです…!
まあ、それもあながちウソじゃないですが、
もうちょい深い理由はありまして。
地方都市だと、地元に愛着が強い人が多いのでは、
と想像したんです。
移住することに腰が重そう、といいますか。
対して、都会は、
地方出身者の人が移り住んでいるケースが
多いのではないかと。
そこからさらに北海道へ移住することに、
抵抗が少ないのでは、と睨んだわけです。
まあ、あとは東名阪の響きですね。
全国はゼンコク。
東名阪はトウ・メイ・ハン…。
こっちのほうが、なんか都会の響き…!
アーバン感!
あ、そうでもないですか。
私が一番都会へ憧れがあるのかもしれません。
都会に移住しようかな。
そんなこんなで準備を進めております。
12月からOAされるので、
興味がある方は、
脇坂工務店の東名阪デビューを、
ラジオアプリのradikoで聴いてみてください。
かなり緻密な作戦を立てて、
ここまでプロジェクトは順調に推移しております。
必ずや採用も成功するはず!
あ、いや、そういえば、
ひとつ順調じゃないことがありました。
ある事件が起きたので、
これを最後にご報告しておきます。
CMの出稿費用の見積もりを見ながら
前述の代理店のFさん、AIR-G’の営業Yさんと
打ち合わせしていた時のこと。
Fさん(関西人)がハッとした顔をして、
「そうか…。
転職者の移住促進をラジオCMでやるのか…。
使えるな…」
とかブツブツ言っています。
「え、何が?」
「あ、いや、私のクライアントで
人が採れずに困っているところ、
ちょいちょいあるんですわ。
だから、採用費については
大きな金額が出やすいんですよねぇ。
昨今、広告宣伝費って、
なかなか承認が降りないんですけど」
嫌な予感がします。
「と、言うと…?」
「なので、
脇坂さんのプロジェクトがうまくいったら、
私のクライアントの
●●●●●とか▲▲▲▲▲とかに、
ラジオを使った採用活動の話、
もっていきますわ。
採用活動の財布を使うなら、
きっとやるって言うんじゃないかなぁ〜」
私の今回の秘策は、
成功例として他社で使われるようです…。
あれ、ひょっとして脇坂工務店は、
Fさんの提案用の実験台にされている…?
いや、待て。
こんな可能性があるのでは…?
道内企業がラジオを使って、
道外在住者の採用に成功
→人が北海道に移住してくる
→その人が北海道を気に入る
→住んで、ますます気に入る
→パートナーと出会う
→恋に落ちる
→めでたくゴールイン
→順調な結婚生活。
→子宝に恵まれる。
→子どもが大きくなって家が手狭に。
→「家を建てようか」
→脇坂工務店の仕事が増える
ってなると、当社の仕事につながるか…。
その頃、私は何歳だろう…。
という未来を見据えつつ、
脇坂工務店は電波という名の波にのって、
東名阪に向け今出港いたします…!
(何の会社?)
脇坂肇