「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2023年5月19日 更新

#49

欲しいものがある。

脇坂肇

仕事、富、名声、
美貌、スタイル、美声…。
すべてを手に入れたと思われている
私、脇坂肇です。
ありがとうございます。ありがとうございます。
ここは、笑うところです。
どれもまったく手に入れてないですからね。
美貌を除いて。
あ、ここも笑うところです。
いやー、すべて欲しいところですが、
もし神様が
「がんばっておるな、脇坂肇…
ほれ、おまえが欲しいものを
ひとつだけ授けてやろう…」
と言ってきたら、
私は食い気味にこう言うでしょう。
「現場監督が欲しいです!」と。

最近、業界問わず、
私の周りの経営者や活躍している人から
聞こえてくるのは
「誰かいい人いないですかねぇ…」
という声、声、声。
皆さん仕事が好調なためでしょう、
よく耳にします。
身近なところでいうと、
銭函近隣に立ち並ぶ工場団地も、
人材不足が深刻とのこと。
ある工場にいたっては、
日本人ではなく東南アジアの人材に的を絞り、
その人たちが日本で働きやすいよう、
従業員専用の宿舎をわざわざ建てたとか。
そこまでしないと人が採れない時代です。

御存知の通り、
日本では人口自体が減っていますから、
これも当然といえば当然の話。
私が子供の頃は小学校のクラスって、
だいたい1学年に6クラスくらいありました。
少し上の団塊の世代はもっと多かったですね。
それが90年代終わりくらいから
少子高齢化が危惧されてきて、
有効な対策がないまま、
ズルズルきた結果が今なのかなと…。

人が減ったこととあわせて、
仕事の選択肢が変わってきたという側面もあります。
例えば、YouTuber。
現在の小学生がなりたい仕事TOP10に入るような
新しい仕事が生まれてきています。
色んな業界で限られた人材を
奪い合っている状況なんですよね。

ご多分に漏れず当社も人を探しています。
具体的には現場監督を募集しています。
その理由のひとつは、
現場監督の高齢化が進んでいるため。
今の現場監督たちが元気なうちに
彼らの持つ技術や経験を
下の世代に伝えていってもらい、
代替わりをスムーズに行いたい
という考えがあります。

もうひとつ差し迫った理由としては、
ニセコ倶知安エリアの活況です。
脇坂工務店では、
2024年着工予定の仕事が二件、
さらには、2025年に動くであろう仕事が
二件控えています。
いずれもウン億円の規模。
うちのような小さな会社からすれば
かなりの大きさです。
工事の金額が上がると、それに比例にして
当然のように業務量が膨れ上がり、
一人の現場監督では見切れなくなります。
そこで、全体統括する現場監督を一人おいて、
さらにその下に助監督のような
各パートの現場監督を複数配置するのが
よくあるパターン。
そのために人手は絶対必要なんです。
それでも、現場監督が足りないと、
最悪の最悪、私も現場に入っていって、
より混乱させるという事態になりかねません…。
私だって、この歳で職人たちから怒られるのは
イヤだ!

ニセコ倶知安でニーズが高いのは、
海外富裕層向けのセカンドハウス。
そんな景気のいい話とは対象的に、
道内で一般的な戸建て住宅だけを手掛けている会社は
苦境に陥っている…
っていう噂が聞こえてくる今日このごろです。
「●●建設の家」みたいに
社名=戸建て住宅のイメージが強いところは
大変そうですね…。
要因としては、まず建築資材の高騰によって、
家の値段が上がり、
一般の人の手に届きづらくなっていること。
つまり、建築棟数が減ってきています。
他方で、
「お金はないけど、アレもやりたい!
これもやりたい!」
と要求のハードルが高いお客さんも増えてきて、
その対応に四苦八苦しているとも聞いています。
建てる数が減ってきて、
さらには手間のかかる安い家が増えてくるとなると、
そりゃ会社としてはキツイですよね。

当社は、数年前からその予兆を感じていて、
「住宅だけに特化しないで、
商業建築や大型案件もやっていこう!」
というスタンスにシフトしてきました。
結果、
ニセコ倶知安での仕事の好調さがあるわけです。
が、ある意味、読みが当たりすぎたとも言えます。
ホントにもう、ぜんぶ受注が決まったら、
一体誰がやるのか…。
お客さまがこれを読んでいませんように…。

そもそも、「現場監督の仕事って何?」
って話ですが、
私はオーケストラの指揮者のような存在だと
思っています。
メンバーの気持ちをひとつにして能力を引き出し、
(建物という)1つの作品を形にしていく
という意味で指揮者です。
あと、自分が死んでも自分の手掛けた仕事が
後世に残るというのは、
なかなか得られないやりがいでしょう。
もちろん責任やプレッシャーも大きいけど、
社会に影響を与えて貢献できる、
いい仕事だなぁといつも思っています。

現場監督を含め、人材が欲しい時、
これまで当社は社員からの紹介で
採ることが多かったんです。
いわゆるリファラル採用ってやつです。
人材不足のなかで注目を集めていた
採用手法のひとつですね。
かなり昔からうちはコレなんで、
時代の先をいってました。
(すいません、
リファラルという言葉は最近知りました!)
社員は当社に合いそうな人を紹介してくれますし、
求職者も事前に社内の情報を知った上で
応募してくるので精度が高く、
ある意味、理想的な採用方法です。

とはいえ、それを待っている余裕がない!
ってことで、
2023年2月から、某有名求人情報メディアで
募集をかけていました。

その際、私はこんな仮説を立てていました。
「すぐにでも転職したい!」と
転職ニーズが顕在化している人は
少ないんじゃないか、と。
であれば、いわゆる「くすぶっている」人を
狙えばいいと考えたんです。
つまり、ハウスメーカーや工務店などに在籍していて、
家を建てる仕事に携わっているものの、
同じような建築物ばかりで飽き飽きしている、
このままでいいのかなぁと思っている人は
一定数いるはずだって、私の嗅覚が働いたんです。
そういう経験者にとって、
うちの職場はうってつけだと思いますよ。
建てるもの(と社長)が変化に富んでいますから。

で、3ヶ月間、
その某有名求人情報メディアに掲載してみたんですが、
結果は履歴書1通応募があったのみ。
しかも求めていた人材とは異なっていたんで、
お断りしました…。

や、応募が少ないのは仕方ないと思うんです。
求人って水モノだと思いますし。
しかし、その某社の対応がちょっとアレでして…。
なんというか、無機質というか。
情熱を感じないというか。
「営業なら、もっとグイグイ来いよ!
バッチコーイ!」
と私は構えていたんですが、
「あ、そういうのやっていないんで」
みたいな淡白な反応と言いますか。
効率を優先している感じがあるんですよねぇ。
「営業で銭函へ来るついでに焼きそばパン買ってきて」
みたいなことを言ったとか、
「営業なら、水中ゴーグルをつけて会社に入ってきて、
『飛び込み営業でーす!』
っていうネタくらいはやらないと」
って苦言を呈したとか、
私が無茶を言った記憶はないんだけどなぁ…。
なんか冷たいんだよなぁ…。

私が歳を取っただけ、
と言われればそれまでなんですが、
最近、仕事の取り組み方が無機質な感じの人が
増えた気がしませんか。
ワークライフバランスちゅうんですかね。
もちろんライフを充実させてこそ、
人生は豊かになるっていうのはわかります。
でも、若いうちの一定期間は
ガムシャラに働いて成長するってのも、
その後のキャリアを考えたら大事じゃないかのぅ…
と脇坂翁は思うんです。

人を採らないといけないのに、
これはピンチ。

そんな折、私は
前回お話した「OTARU 銭函の秘密マップ」
ぼんやり眺めていました。
そこで、ひらめいたのです。
このマップの印刷に協力してくれているのは
アルキタさんだな…。
待てよ、そういえば、
アルキタさんって求人情報誌をやっていたな…!

すごい普通のことなのに、
なぜ今まで気づかなかったのか!
10年間も協力してもらっていましたが、
まさに灯台下暗し。
しかも、秘密マップの制作に尽力されている
ライターのSさんは
かつてアルキタさんでの勤務経験がある方。
すぐに営業担当を紹介してもらったんです。

一度まずはお話してみましょうか、
ということで営業担当の方が
銭函に来てくれたのですが、
もう全然、某社と対応が違うんですよ。
ベテランの方だったんですが、
何より熱心さが伝わってきます。
すぐに求人広告を申し込むことにしました。
紙とWEBの2つの媒体に掲載するプランです。
短期だと結果が出づらいと考えて、
3ヶ月間の掲載にしたため、
正直、先般の某求人メディアより高い。
でも、私は掲載前の段階からかなり満足していました。

後日、求人広告制作のために、
ライターとカメラマンが取材に来てくれたのですが、
この人たちもひと味違いました。
特にライターの方。
熱量がすごかったです。
まずね、この「わかる話」を全部読んできた!と。
その時点で変じゃないですか(褒めています)。
しかも、すべてを出力して、
取材当日に持ち込んできたんです。
ものすごい量の紙の束を持っているんですよ。
「こんな文章を熟読するなんて、ひょっとしてヒマ…?」
と思わず聞きたくなりました(褒めています)。
もし私がライターで
「わかる話」を読んだとしたら、
こんな社長にインタビューしたくないけどな…。
とんでもない目にあわされるか、
ネタにされそうなので。
(事実、今こうして書いているように)

そんな取材の果てに、
出来上がった求人広告を見ると、
そこに私の姿はありません。
私を出さないようにお願いしたんです。
どうしてもア●ホテルや
すしざ●まいみたいに
社長の色が濃すぎる企業になっちゃう気がして。
アルキタさんも、
「危ない、あの社長を出していたら、
せっかくの広告効果が台無しになるところだった…」
とホッとしていたような気がします。
はっ…!
某社で人が採れなかったのは、
まさかそのせい…?

アルキタさん渾身の求人広告は無事完成。
よし、これできっと採用はできるだろう…。

今回の採用の話は、これにて一件落着!

<完>




……………と普通の会社なら、
ここで終わりでしょうけど、
うちは脇坂工務店です。
これで話が終わるはずもなく。

CM

アルキタをプランAとしたら、
私はプランBも用意していました。
それはラジオです。

10年ほどお付き合いのあるラジオ局、
AIR-G’さんが2023年初頭、
自社のCMをけっこうな頻度で流していました。
「AIR-G’では営業職を募集しています」
みたいなCMです。
それを聴いて、私はこう思いました。
「ズルい…!」

ラジオ局だから、
あんなにバンバン自社の広告流せて、ズルい!
完全にイチャモンです。
しかもですよ、
AIR-G’の人に聴いたら、
その求人ラジオCMはすごい反響があって、
実際良い人材を採用できたとか。
ズルい!ズルい!

そして、私は潔く決心しました。
よし、パクろう…と。
10年も出稿しているんだから、
パクっても文句は言われるまい…。
(そういうことじゃないか)

まあ、パクると言っても
ラジオで求人するという手法を
マネさせてもらうってことです。
AIR-G’さんのCM内容は比較的ストレートなもの。
シンプルに「営業職を募集しています」という内容です。
それでも反応が良かったのは、
求人自体がレアだからでしょうね。
ネットの隆盛に比例して
マスメディア全般が勢いが落ちているとは言え、
そこはラジオ業界。
憧れる人が多いことは容易に想像がつきます。
ラジオを好きで聴いている人に向けて、
そんな求人情報を投げかければ、
そりゃもう応募はたくさん来るでしょう。

対して、当社は建築屋です。
ただただ同じように、爽やかな女性の声で
「脇坂工務店は人材を募集しています。
明るく風通しのいい職場で、
未来に向かって挑戦してみませんか!」
という普通のCMをやっても、
スルーされる可能性は極めて高い。

ラジオCMって20秒とか40秒とかの
限られた短い秒数の世界。
いかに印象を残すかがカギです。
そこで、私は考えました。
爽やかな女性の声で読むCMは
山ほどあるんだから、
そこをズラしてみればいいのでは…。
そうだ、爽やかな女性に対抗して、
社長の私自ら情熱的に絶叫して
呼びかけるCMはどうだろう。
前述のアルキタさんの営業のように
熱意が人を動かすわけですし、理にかなっている!
例えば…
「脇坂工務店はぁぁあぁ〜!
現在人材をぉぉぉ〜!!!
募集しておりぃぃぃ〜!」
みたいな。

いや、ダメだ。
印象に残るけど怖い。
応募の電話じゃなくて、
クレームの電話がすごそう。
怖さではなく、もっと明るく親しみを…。
そうか、コマソン、
いわゆるコマーシャルソングだ!
誰もが口ずさみたくなるやつ!
「わきさか、わきさか〜♪
みんな大好き、わきさか〜♪」
と私自ら歌うか!
いや、ダメだ。
全然ダメだ。

2秒ほどで自らの脳の限界を悟った私は、
ラジオCMやスローガン、ネーミングなど
当社の言葉まわりでいつもお世話になっている
コピーライターのTさんに電話しました。
経緯や背景をTさんに伝えたところ、
どういう頭の構造をしているのか、
イカれたアイディアがすぐに出てきました。

どのくらいイカれているかというと、
当社の広告代理店をやってくれている
コテコテの関西人Fさんをして、
「こういう変なCMを考えるほうも考えるほうだし、
OK出すクライアントもクライアントですよ…」
と言わしめるくらいのものです。
ええ、褒め言葉として受け止めています。
どう変なのかは、
ぜひOAをチェックしてみてください。

1タイプだけ流し続けると、
どうしても飽きるでしょうから、
いっそのこと3タイプ制作しました。
順番にOAします。
スタートは2023年5月1日から。
アルキタのWEBと紙媒体の掲載期間とあわせて
流すことで、相乗効果を狙っています。

ありきたりなことをやっても、
反応はないでしょう。
某社の求人広告を見て感じました。
やはり常識と違うことに挑戦しないと
活路は見いだせない。
これって、うちの商売のスタンスと同じ。
いかに他社と違うことをやるかってことです。

さてさて、応募が来るかなぁ…。
他社の現場監督として活躍中の皆さん、
ひとつよろしくお願い致します。
悪いようにしないですから。
これで応募がなかったら、
私が絶叫するCMを流すことになるので、
そんな不幸を避けるためにも、何卒。

脇坂肇