「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2023年3月23日 更新

#47

年の差問題。

脇坂肇

飲食店とかで会計をする時、
最近よく見かける顔があるんですよ。
どことなく印象的な顔をしていて、
まあまあシワが刻まれていて、
いつもこっちを見ているんです。
どこかで見た顔だなぁ…
と思った0.2秒後くらいにギョッとするんです。
あ、これ、私だ…って。
アクリルパーテーションに映った顔は、
自分の想像よりも老けています。
もちろん毎朝、歯磨きや顔を洗う時に
この顔を見ているのですが、
正直そこまで老けたとは思っていませんでした。
「鏡よ鏡、この世界で一番カッコいいのは誰?」
と言っているから、鏡が空気を読んで
キ●タクを映してくれていたのかもしれません。

思えば、あっという間でした。
ラジオ出演を始めてから、
2023年4月で丸10年となります。
50歳でラジオデビューしたので、
その頃を小学校1年生とするなら、
10年経った今、
私は高校2年生といったところでしょうか。
ラジオ青春、真っ盛りです。
そんな高校2年生の私に、
最近嬉しいことがあったんです。

当社で手掛けた中古マンションのリノベーション物件。
工事が完了したので、
先日オープンハウスを実施しました。
当社の不動産担当が立ち会っていたので、
陣中見舞いがてら、日曜日に見に行ったんですね。

すると、そのタイミングで一組のお客さまがご来場。
40代前後のご夫婦だったのですが、
私の姿を認めるやいなや、
「ラジオ、聴いてます!」
と声をかけてくださったんです。
そうなんです、オープンハウスをやると、
ちょいちょい言われるんですよね。
そう言われると、つい
「お、じゃあ半額にしちゃおうかなぁ〜」
と口走りそうになることを、
皆さん知っているからでしょうか。
あ、サインも書くんで言ってくださいね。
でもそこに、なにかの連帯保証人の書類を
混ぜるのだけはやめてくださいね。

で、そんな好反応があると、
まだまだラジオでの喋りは現役でいける!
と思っちゃうわけです。
なんなら、ここしばらく、
ずっと自分の精神年齢は
40歳だと思って生きてきましたし、
現役感たっぷりでした。

が、そこに現れたのがコロナ禍における
アクリルパーテション。
そいつのせいで、
老けた顔という現実を
まざまざと突きつけられたわけです…。
確実に肉体は衰えているのだと。
かくなる上は、
メタバースの世界でアバターとして
生きていくしかないのか…と思いつめています。
ジェームズキ●メロン監督から
アバ●ー最新作へのオファーもあるかもしれませんし。

そんな歳を重ねた私とは対照的な存在が、
Z世代でしょう。
おおよそ25歳以下の若者を指す言葉で、
いまやすっかりお馴染みになりました。
ちょっと前なら
「ゆとり世代」とか「さとり世代」といった
呼び方もありましたが、
こういう世代のカテゴリ分けみたいなことって、
私たちが若い頃からあったんですよね。

私たちの世代が20歳くらいの時は、
「新人類」って呼ばれていたんです。
上の世代から見て、
私たちみたいな世代は理解不能だったから、
新しい人類だろうってことで、
そう呼ばれていたのでしょう。
ちなみに、何かで読んだのですが、
古代エジプトの壁画とかに書き残された文書にも、
「最近の若いモンの考えていることは、
わからんわ!」
という内容の記述があったとか。
人間って変わっていないんですねぇ。

ところで、そもそも「Z」って何でしょう。
私みたいなおじさんからすると
「ぜんぜんわからん世代」
ってことだと思っていましたけど、
調べてみたら、
かつてX世代、Y世代と呼ばれた人たちがいて、
その次の世代だからZ世代ってことらしいですね。
ちなみに、Zがアルファベットの一番最後の言葉だから、
次に出てくる新しい世代は
α世代ってことになるらしいです。
あ、すいません、
つい教養が溢れ出てしまいました。
Go●gle先生の受け売りという教養です。

そんなZ世代に対して、私は昭和37年生まれ。
戦後17年ほど経ったころに、
この世に生を受けたっていう計算になるんですが、
私が小学校の頃の運動会って、
どんな曲がかかっていたと思います?
アメリカ軍が使っていた行進曲をかけていたんですよ。
今では想像つかないことです。
まだアメリカ統治の名残が色濃く残っていた時代。
私は直接戦争を経験していないけど、
意外とその影を身近に感じていた世代です。
そもそもそんな古い人間が、
Z世代と話が通じると思う方がおかしい。
そう認識したほうがどうやら良いのでは…
と最近思うんです。

こんな世代の話をしているのも、
お客さまの年齢層が、
私にとって問題になっているからなんです。
30代前半のお客さまであれば、
年齢差的に私の子どもを相手しているような感覚。
干支換算で3まわりほど違うんですから。
ええ、うすうす気づいています。
干支を持ち出すあたりが、
もう古いような気がしていることも…。

で、変な話、
そのくらい年が離れていても、
お客さまを笑かすことはできるんですよ。
これがかえって厄介なことでして。
その笑っているお客さまの脳内を
覗いてみたとしましょう。
表向きは、私の話を聞いて
「脇坂社長、ウケる〜!」
と大笑いしているお客さまがいたとして。
実は、
「(なんかすごい昭和の話しをしてて、
言ってることが全然わからないから)
脇坂社長、ウケる〜!」
と思っていないかと疑心暗鬼になっています。
会話がチグハグになっているのでは…
という恐怖心にさいなまれるんですよ。

もう一つの恐怖もあります。
それは、
「私が年上すぎて、
お客さまが言いたいことも言えないんじゃないか…」
という恐怖です。
その流れで、
「言いたいことも言えない
こんな世の中じゃポイ●ン」
ってところまでスルスルと
頭の中に浮かんでくる症状があるので、
もう手遅れ、既に末期なのかもしれません。
(元ネタを知らない人は、
ネットで検索してみてください)
私がお客さまのケータイに電話した際、
「老害」
っていう登録名が
画面に出ていないか不安になります。
そこはせめて「老GUY」にしてほしいです。

わかる話#46で脇坂工務店の営業は私一人だ! 
なんて強がったことを書きましたけど、
「そろそろ若い営業がいても、
いいんじゃないだろうか…」
と弱気になったりもします。
しかし、そんなに都合よく
営業を増員できるわけもなく。
そこで、苦肉の策として、
私はあるテクニックを編み出しました。

普段仕事をする建築家はだいたい同世代が多いのですが、
40代くらいのご夫婦でやっている
設計事務所とも取引がありました。
そのAさん夫婦にお願いしているのは、
設計図面をひいて、確認申請の手続きまでを行うこと。
他の建築家とちがって、
お客さまとの打ち合わせに同席をしてもらうことまでは
お願いしていなかったんです。

というのも、脇坂工務店のお客さまのなかには、
当社が持っている土地に家を建てたいものの、
予算がそれなりに限られていて、
でもそこまで建物のデザインにこだわらない、
という方もいらっしゃるんですよね。 そういったお客さまには、
まず私が営業窓口となって、
要望などをすべてヒアリング。
そして、それを整理してAさん夫婦に伝え、
設計を進めていく、
というやり方をこれまでとってきました。

Aさん夫婦は、
複数の大手ハウスメーカーとも仕事をしていて、
意匠性の高い斬新な家というよりは、
どちらかというと時代の流れにあわせた、
今っぽい家を設計するのが上手なんです。
だから、上記のような仕事の進め方が あっていたんですよね。
実際にお客さまからの評判も上々でした。

Aさん夫婦には小さなお子さんがいるのですが、
最近子育てが少し落ち着き、
夫婦それぞれが活動できるようになってきたと
小耳に挟んだ私。
そこで、こんな提案を二人にしたんです。
「私といっしょに、
お客さまとの打ち合わせに同席してくれません?
もちろんそのぶん設計料はプラスしますから」

ちょうどAさん夫婦もお客さまと
より近い関係性で仕事をしたいと思っていたらしく、
まさに渡りに船。
快諾してもらって、
最近は私と一緒になって動いてもらっています。
これぞ、
「私よりもお客さまに年が近いAさん夫婦を
同席させることによって、
年齢ギャップを感じさせないぞ」
テクニックです。

私には経験とそれなりに蓄積された知識があるものの、
当然のことながら図面をひいたりする技術はありません。
技術的に細かな話になると
「それはここをバーンとやって、
ビシッとすれば、
パキーンといい感じになりますから!」
と長●茂雄さんのようになりそうな私と話すよりは、
お客さまも直接設計士と話ができたほうが
安心感があるようで、うまくいっています。
(長島●雄さんになりそうなのは、
お客さまから見た私のイメージです)
Aさん夫婦からすればやることが増えるけど、
お客さまの生の声を直接聞けるし、
設計料も増額されるというメリットもあります。
これぞ三方良し、ウインウインウイン。

それにしても、一度でいいから、
Aさん、お客さま、私の三者打ち合わせの様子を
見せたいものです。
普段の私を知っている人は、
「座っているのは、精巧に作られた脇坂肇ロボット?」
ってびっくりするくらい、
私、喋らないですから。
こんなに喋る私が、その時ばかりは、
ほぼほぼ黙っています。
というのも、
それがいわゆる「ツーマン営業」の基本だから。
お客さまに対して、
こちらサイドの人間が2名いる時は
片方だけがしゃべるべき、というのが鉄則です。
二人で一緒になって話をしていくと、
お客さまは圧を感じてしまって、
結果商談がまとまらなかったりするんですよ。
明日からのビジネスシーンに役立つ豆知識ですね。
ただ、あなたが上司と二人で営業にいって、
「ツーマン営業だ!」ってことで
あなたが黙っていると怒られると思うので、
そこは気をつけてください。

だから、3者での打ち合わせの際は、
私はMCに徹しています。
いわゆる「場をまわす」局アナみたいな感じでしょうか。
うっかり明石家さ●まさんのように、
MCなのに、ぜんぶもっていく!
みたいなことをしないよう、
必死に我慢しています。

当社Webサイトに載せている事例写真を見る限り、
脇坂工務店という会社は、
すごい高そうなイメージがあると思うんですよ。
実際そう言われることもあります。
頑張って、このわかる話で
安い印象を出そうとしているんですけどね…。
やはりにじみ出る品みたいなものが
あるんでしょうねぇ…(半笑い)。
わかります、わかります。
だから、Z世代に近い若いお客さまたちからすると、
「脇坂工務店なんて高くて無理無理!」
というイメージになっているはず。

しかし!
当社にはAさん夫婦のようなパートナーもいるので、
今っぽくて手頃な普通の家も建てられるよ!
ってことなんです。
「予算が限られているけど、
そこまで家にこだわりはないな〜」
という方には、ぜひ問い合わせをしてほしいですね。
ハウスメーカーを決めるのは、
一度私と話してからでも遅くはないと思います。
Aさん夫婦と手掛けた家の実例なんかも
お伝えできますから。

と、Aさん夫婦のおかげで
非常に助かっていることを書きつつも、
正直なところ、
設計士の人が同席していなくても、
仕事として成立させられる自信が
私にはまだまだあります。
揺れ動く、複雑な乙女心ですみません。
一般的なハウスメーカーであれば、
設計士は打ち合わせに出てこないで、
ずっと営業マンとお客さまがやりとりをして
家を建てていくスタイルが主流。
そういうハウスメーカーにいる
並の営業マンには負けるもんか!
と謎の敵対心を未だに燃やしている
私、脇坂肇です。

なので、
「設計士の同席は要らないです。
脇坂さんとサシで家を建てていきたいです」
というオーダーも大歓迎。
のぞむところです。
毎回打ち合わせは脇坂肇劇場となることでしょう。
鳩も飛び出すかもしれません。
あ、指名料と鳩のレンタル代はいただきますので、
そこは一つよろしくお願いします。

こうやって自分の年齢のことを考えると、
ジャニ●ズとかAK●とか
なんちゃら坂のメンバーを見ていると、
彼ら彼女らも大変だなぁとしみじみ思います。
年齢が上がっていくにつれて、
当然のように若手が台頭してきて、
従来いた自分の場所がどんどんなくなってくる。
だから、少しずつ、
役者やバラエティタレントのポジションに
軸足を移していかないと生き残れないわけで。
同じように私も、自分の年齢の変化とともに、
変わっていかないといけないなぁと思うのです。
少なくとも老害にはなりたくないなぁ…。
飲み会の席で自慢話や昔話ばかりするような
おじさんには決してなるまいと心に誓っております。

それにしても、今テレビをつけても、
みんな同じ顔に見えるんですが、どうしてでしょうね…。
かつてはおニ●ン子クラブという
アイドルグループがありまして。
好きだった私はメンバー全員を瞬時に判別できたものです。
AIも真っ青の特殊能力でした。
なかでも私のお気に入りは国生さ●りさん。
ものすごいたくさんのメンバーが映っている
画面からも一瞬にして
彼女を見つけることができたものです。
いやぁ、あの頃は良かったなぁ…。

…あ、これが噂のおじさんがする昔話ってやつ…?

脇坂肇