2022年8月29日 更新
#40
脇坂工務店は高いのか?
初対面のお客様にまた言われたんです。
「脇坂工務店のWebサイトを見ると、
すごい高そうに見えるんですよねぇ…」
高そう…高そう…高そう…高そう…高そう…。
頭の中でリフレインする、この言葉を
最近頻繁に耳にするんです。
「脇坂工務店は高い」という評判、
というか噂が立っているようでして…。
確かに掲載している施工事例には、
なかなかすごい家がズラッと並んでいて、
これらは高いか安いかで言うと、
高いと言えなくないこともなくはない…。
ん?
まあ、ああいった仕事は高いんですけど、
いやでも、安い仕事もやっているわけで、
高い仕事しかしないぜ!ってわけではなく…。
奥歯にモノがはさまったような言い方の
理由をお話しましょう。
とあるお客さまと最近お話をしました。
仮にAさんとしましょう。
Aさんは4,5年前に大手ハウスメーカーに依頼して
札幌市内に家を建てた方です。
しかし、昔から憧れていた
海沿いでの暮らしを諦めきれなくて、
当社へ相談してきたという経緯がありました。
打ち合わせを始めると、
ほどなく衝撃的な事実が判明したのです。
「いやー、
ようやく脇坂さんとお会いできました。
実はですね、
数年前、今住んでいる家を建てる際に、
脇坂さんに頼むことを真剣に検討していたんです。
Webサイトを何度も見て、
資料まで取り寄せていましたから…」
え。
なにこの、
かつての同級生から
「当時は脇坂くんのこと、好きだったんだけどな…」
って言われているような感じ。
(いや、ちょっと違うか)
「後学のためにお尋ねしますが、
ど、どうして当社への相談をやめたんです…?」
すると、例のワードがAさんの口から出ました。
「なんか、高そうで…」
で、出た…!
「すごい良さそうだとは思っていたんです。
でも、見れば見るほど高そうだなと思って。
断念して、今の家を建ててくれた
大手ハウスメーカーに決めたんですよね…」。
なんと…。
あの時、勇気を出して、
高そうな雰囲気にめげずに、
「脇坂さんのことが気になっている!」
と告白してくれれば、
別の人生が待っていただろうに…。
すれちがう二人。
運命にもてあそばれる二人。
確かに当社のWebサイトには、
ものすごい豪邸が掲載されています。
これとか、これとか…。
建てた私もつい
「ホントに、いくらするんでしょうねぇ…」
って思うくらいの豪邸ですね。
改めてこのラインナップを見ると、
高そうな雰囲気がムンムンです。
ムンムンって言葉を久しぶりに使いたくなるくらい、
ムンムンしています。
ただ、こういった高級な建物を
施工事例としてあげているのは、
会社としての狙いがあるんです。
私たちがお取引するのは、
一般のお客さま、
いわゆるエンドユーザーだけではありません。
工務店という業種であるため、
まったく面識のない設計事務所からも依頼が来ます。
この場合、家を建てたい施主がいて、
設計事務所がその設計を請け負っているという構造。
で、その設計する家を建ててくれないかという相談が、
設計事務所から私たちのような工務店にくるんです。
なので、ああいった豪邸とかものすごい家は、
「あ、当社は高い仕事しかしないですから〜」
とドヤ顔でアピールしたいからではなく、
設計事務所(や施主)に対して、
当社の技術力をアピールする側面があるんですね。
彼らからすれば、
ちゃんと設計したとおりに形にしてくれる
腕の良い人たちを探しているからです。
世の中には2つの工務店があります。
建築家と仕事をする工務店と、
しない工務店の2つです。
後者は設計事務所と仕事するのを
敬遠しているパターンが多いです(脇坂調べ)。
やはり、施主の要望にあわせた
画一的じゃない家を建てるとなると、
どうしても要求レベルが高くなりますから。
つまり、なんというか、
「面倒くさいことはしたくない!」
ってことですね。
(別に脇坂工務店が、
設計事務所の仕事を面倒くさいと
思っているわけじゃないですよ…!)
また、普段から
設計事務所との仕事に慣れていない工務店が、
いきなり設計事務所と仕事しようと思っても、
なかなか難しいことも事実。
建売されているような一般的な家ばかり建てていると、
設計事務所が求める
「普通じゃないこと」に対応できないですから。
よって、ますます設計事務所との仕事に慣れている
工務店が必要とされるんです。
「お金持ちだけを相手にした高そうな工務店」
に見られるようになった私たちですが、
もとはといえば真逆というか、
一般の方に向けて良質な家を提案したい
という考えでずっとやっていきています。
当社が展開している
「NEOデザインハウス(商標取得済み)」
という商品があります。
これは、
脇坂工務店が建築家とコラボすることで、
「コストをかけずに機能的な家を建てる」
というのがコンセプトでした。
一般のお客さまからすれば、
建築家に頼むことって、
想像以上に敷居が高く見えているんじゃないか、
という仮説をもとに立ち上げたんです。
個人的なコネクションがないとダメそうだし、
運良く頼めたら頼めたで、
マオカラーのシャツを着た大先生が出てきて、
「ふむ、ではこのプランにしたまえ…」
と言って、
お風呂が外にあるような、
とんでもなく住みにくい家を提案してきて、
それを嫌とも言えず、
ありがたく「ははー!」と
受け取らざるを得ない、みたいな。
しかも予算を3000万円って言ってるのに、
6000万円のプランで設計されている…
みたいなことが起きるんじゃないか…
って思っている人が多そうだなと。
(あくまで個人の偏見に満ちた仮説です)
一般の人が家を建てる際に抱くであろう
それらの不安を取り除くためのシステムとして
NEOデザインハウスを考案したんです。
ちなみに、
お客さまにとってベストを考えて生み出していった
NEOデザインハウスですが、
当社の経営戦略としても理にかなっています。
大手は同じ家を大量に作って、
大量に安価に売るみたいな仕組みでやっています。
それだと完全に体力勝負。
まったく勝ち目がありません。
だから、当社のような
小さな工務店が生き残るために、
数は少なくとも個性的な家を
手掛ければいいと考えたのです。
これがNEOデザインハウスの考えであり、戦略でした。
あと、大きなポイントとしては、
脇坂工務店の社内に建築士は数名いるんですけど、
設計担当者を置いていないんです。
他店だと社内にいるところも多いですよね。
でも、お客さまのニーズは千差万別だから、
それにあわせて、
色んな建築家と組めるようにしたほうが
みんなにとって満足度が高いだろうという理由で、
そのスタイルを貫いています。
あ、突然マジメな話をしてすいません。
なんだか本当に「わかる話」ぽくなってきましたか。
や、たまにマジメにしておかないと、
不安に感じるかなと思って…。
何より私が「これでいいんだっけ…」と
不安に感じるんで…。
つまり、「高そうに見える」問題の根っこは、
私たちの「守備範囲」です。
NEOデザインハウスのように
一般のお客さまを対象にした家はもとより、
ドアノブの交換やサッシの修理のような
細かな仕事も喜んでやっています。
数万円の仕事からウン億円の仕事まで、
両方やっている状況なんです。
たとえば、飲食店なら、
生ビール1杯100円で売るような
大衆的な居酒屋もあれば、
かたや値段を書いたメニューがない、
紹介制の超高級店なんかもあります。
それぞれイメージは異なりますよね。
それをひとつのイメージにまとめて、
Webにするって考えると、
なかなか無理があるわけです。
私たちが超高級な家を専門とする工務店
ってことなら話は簡単なんですよね。
きっと、その場合、
当社のWebサイトは、
ものすごく陰影の強い家の写真が
ドカーンと紹介されていて、
代表のページに、
スモークを焚いて撮影したような
私のモノクロの写真が出てきて、
「建てるとは…、僕の生きる証ですね…」
みたいなコメントがのっているんですよ、きっと。
別に特定の会社をディスっているわけじゃないです。
イメージ。
そう、あくまでイメージです。
とはいえ、
高級な家を建てているのは事実なわけで…。
最近は特に、海外のお客さまのために
倶知安やニセコに家を建てています。
7,8年くらい前からその数は増えています。
前述のとおり、
脇坂工務店に問い合わせをしてくるのは、
設計事務所です。
設計事務所の拠点は、
東京、関西、福岡、アメリカ、香港など、
本当にさまざま。
多くはニセコ・倶知安エリアにセカンドハウスを
建てようとしていて、
その施工ができるところを探しています。
そんな設計事務所に依頼している施主は、
海外の富裕層の方が多い。
驚いたケースでいうと、
母国で財団を持っている大金持ちの方も
過去にはいらっしゃいました。
ていうか、
財団って持てるのか!って思いましたよね。
一度でいいから
「僕の財団がね…」とか言ってみたい。
で、私たちは立場上、
施主と直接会う機会は少ないのですが、
設計事務所経由で聞くと、
やはり施主の皆さんも
当社のWEBを見ているらしいですよ。
どんなところが建てるのかを気にするのは
まあ当然ですよね。
その話を聞いて、
あんまりWEBでふざけない方がいいんだなって
思いましたよね。
「ココ、ナンカ、ウサクンサイネ」
とか
「ココノシャチョウ、クレイジーネ」
とか言われかねないですから。
この「わかる話」も英訳したものは
絶対にWebに載せないようにしようと
心に誓いました。
そんな富裕層の皆さんが、
どのくらいの費用で家を建てるか、
気になりますよね…?
ええ、わかりますわかります。
皆さんも人の子でしょうから、
そういうお金の話が気になるでしょう。
皆まで言わずとも、わかります。
最近、土地&家の値上がりが著しいと言われる
札幌だと建物に4000~5000万もかけると、
そりゃもう、それなりの素敵な家が建ちます。
しかし!
しかし、ですよ。
ニセコ・倶知安では
6000~7000万円くらいは当たり前。
1億、2億、3億、
なんなら5億円も珍しくはありません。
そういう値段の家を建てる
目の肥えた設計事務所や施主が
北海道の工務店を探す際に、
「ああ、ここはちゃんと建ててくれそうだな」
という感じを出すためには
WEBに一定数の高級な施工事例を
出しておく必要があるんです。
それにしても、母国でどんな仕事をしたら、
海外に数億円の別荘が持てるんでしょうね…。
私がハワイに2億円の別荘を持つなんて、
一生ムリでしょと思っちゃいます。
「住み込みのお手伝いさんが●十人いるので、
その人たち用の住まいも、隣に建てて」
みたいな施主さんの富豪エピソードを聞いてると、
(あ、これ実話です)
金銭感覚の0の数が、
私たち日本人とは二桁くらい違うと感じています。
ただ、こんな富豪のお客さまの話をしていると、
「でも、そういう高級な家をやっていたほうが
会社として儲かっていいんでしょ…?」
とチラッと横目で見られながら
言われそうですね。
いやいや、高い仕事だけをしようとは
サラサラ思っていませんから。
ホントに。
あくまで、
「工務店としてきちんとした仕事をしたい」
と思っています。
数万円のリフォームや、
数億円の家を建てることも、
私たちの中ではある意味同列です。
なので、
高そうないい仕事をしてるという点よりも、
技術とか知識的なところを評価してもらえると
嬉しいなぁと思いますね。
当社はお高く止まっていないですから。
ツンツンしてないですから。
ラジオの喋りも聞いてもらえれば
おわかりでしょう。
あれ以上、くだけた感じにしたら
放送事故になるくらい、
低く低くやっていますから…。
最近、「安い日本」なんてことが
盛んに言われていますが、
倶知安、ニセコエリアで仕事をしてきた身としては、
だいぶ前からそれを感じていました。
海外の人たちがわんさか土地を買って、
家を建てている様子を見てきたので。
最近は値上げのニュースばかり目にしますけど、
30年くらいのスパンで日本という国を見ると、
さまざまなモノの値段が
それほど上がっていないですよね。
ニセコの不動産事情を目の当たりにしていると、
日本は経済成長しておらず、
取り残されている感じがしています。
そのエリアで仕事をしている身としては、
複雑な心境ではありますが、
また日本がかつての勢いを取り戻すことを信じつつ、
私たちは目の前の仕事に
心血を注ぎたいと思っています。
で、Webサイトの問題が残っていました。
高そうに見える問題。
そうだ。
いっそ、入り口をふたつ作りましょうか。
Webサイトにアクセスすると
「お金持ちの方向け」
「それなりのお金持ちの方向け」
みたいにサイトの入り口が分かれているみたいな。
…いや、
かえってお金に執着してそうな会社になるな…。
あぁ、悩ましい…。
脇坂肇