「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2022年6月24日 更新

#38

趣味人間。

脇坂肇

多趣味と言われる人生を送ってきたと思います。
でも、いま言える確かなことは、
会社の経営が趣味ってことです。
ほら、趣味は
「飽きてやめる」ことが多いじゃないですか。
経営という商いだけにアキナイ。
商いは飽きない…。

…あれ?
すごい静か。
世界から音が消え去ったのでしょうか…。
ノイズキャンセリングの
ヘッドフォンでもしてたっけ?
と思わず耳を確認してしまいました。

今回の話のオチはコレだ!
と思い付いたのですが、
最後に出すと、
そこまでの話が台無しになりそうだったので、
最初に披露した次第です。

それでは本題に入りましょう。
飽きない他の趣味の話です。

好きなものを問われて、
パッと思いつくのは音楽です。
演奏する素養はないと自覚しているものの、
聴くことは昔から大好き。
少年時代からずっと、
ジャンルを問わず雑食で聴いています。
友人やラジオ局の人など、
音楽関係の人がまわりにたくさんいるので、
いまだに音楽には親しんでいますね。

20周年の時には、
兄弟音楽ユニットSE-NOさんに「Home」を、
25周年では、
シンガーソングライターの小澤ちひろさんに
I love my family」を、
脇坂工務店の周年CMソングとして
それぞれ書き下ろしてもらいました。
「この木なんの木〜」って
ずっと気になっているような
超大企業とかならいざしらず。
当社くらいの規模で、
CMソングをつくる会社って
少ないのではないでしょうか。
大げさに言うと、
私は音楽の力を信じていると思っていて。
周年という節目で
アーティストの皆さんの力を借りて、
会社の姿勢や想いを伝えたいと考え、
コラボをお願いしてきました。

私がよく顔を出す取引先がありまして、
オフィスには数千枚、
いやそれ以上のCDが置いてあるんですね。
そこで、あいみょんとか、YOASOBIとかのC Dを
特別に借りたりしています。
名盤ばかりありますから、
ある意味、すごい贅沢なTSUTAYAです。
つい、その会社さんのこと、
TSUTAYAって呼びそうになります。
危ない。
ただ借りる際には、
「いやー、うちの奥さんが年甲斐もなく、
若いアーティストの音楽を
聴きたいっていうからさぁ…。
仕方ないから、このKing Gnu借りていきますね!」
と聞かれてもないのに、
大きな声で言い訳をつぶやいています。
や、なんか恥ずかしいじゃないですか。
「やだ、脇坂さん、
流行りのアーティストのCDを借りて…。
若い子と話題を合わせようとしているのかしら…
ヒソヒソ」
とか後ろ指さされていないだろうか
って気になりまして。
完全に自意識過剰ですね。

写真も趣味なんです。
高校時代写真部だったんですよ。
昭和世代にはもはや懐かしい話でしょうけど、
2000年くらいまではフィルムカメラが全盛期。
カメラ本体も高ければ、
現像にもお金がかかるという代物でした。
お金がかかる趣味なので、
若いうちは思い切り打ち込めなかった
というのが正直なところです。

ところが、私が40代半ば頃、
2005年前後あたりから
デジタル一眼が本格的に普及し始めて、
プロもデジタルを使い始めました。
大人になって、
ちょっとばかり自由に使えるお金が増えた私。
高校からしばらくブランクがありましたが、
本格的に写真を撮り始めたのです。
それが46歳の時です。

前田真三さんってご存知でしょうか。
美瑛を一躍有名にした写真家なんですが、
私、ファンなんです。
その前田さんはもともと画家だった方。
46歳でカメラマンに転身されたそうです。
つまり、私が写真をリスタートしたのと同じ年齢。
これはひょっとしたら、ひょっとするぞ…と
思い続けて、今に至ります。
たぶんまだプロになれていないので、
ひょっとしないのかもしれません。
というか、仕事の忙しさにかまけて、
最近は撮っていないもので…。
ええ、いつか本気出しますから。

愛機の変遷は、
キャノンのデジタル一眼にはじまり、
そこからソニー、ニコンと変えて、
今は再びソニー。
自分の技術は止まったままですが、
機材だけは常にプロ仕様です。
ええ、カメラだけは本気出してますから。

仕事柄、住宅雑誌の撮影などに
立ち会うことも多いんです。
現場でプロのフォトグラファーと接するので、
バンバン質問しちゃいます。
プロより良いカメラを持っていたりする、
そんな感じの悪い工務店の社長にも、
みなさん快く教えてくれます。
本当に感じが悪くてスイマセン。
たくさんの師匠について学んでいる気分です。

写真といえば、
銭函ってフォトジェニックな場所で、
被写体の宝庫。
映えスポットってやつです。
季節によりますが、
朝日も夕日も見えるのが気に入ってますね。
Instagramでいいね!もらい放題。
あ、こちらのアカウント
私が撮影した過去の写真をアップしています。
フォローしてもらっても構いませんよ…!(チラッ)

銭函の話をしたら、
BBQのことを思い出しました。
銭函海岸沿いにあった以前のオフィスには、
BBQができるスペースを設けていたんです。
なので、BBQはほぼ達人クラス(自称)。
当社のお客さんたちや地元の人を集めて、
BBQをやろう!なんて時には、
私は焼き場にはりついて、
ほとんど食べずに焼いて焼いて焼きまくる。
お客さんの友だちも参加しているから、
初対面の人からは、
「あら、ここのBBQ、プロを呼んでいるのね」
と思われていたんじゃないでしょうか…。
「店員さん〜!カルビ追加〜!」って
言われていた気がしてきました。

まだまだ趣味はあります。
昔から格闘技が好き。
中高生の時はアントニオ猪木に夢中になりました。
同世代の人たちは強くうなずくと思うのですが、
梶原一騎が描く世界を
全部真実だと思って鵜呑みにしていましたから。
タイガーマスク、あしたのジョー、空手バカ一代。
若い人たちからすると、
もう源氏物語とか古事記とかに近いのかしら…。

そんなわけで空手も好きなのですが、
当社のお客さんだった方が
札幌に空手道場を開いたんです。
そこにうちの息子が通った縁から、
同道場の後援会長を務めました。
すると、そのつながりから、
空手の元世界チャンピオンの超有名な方とか、
修斗の元世界チャンプとかとも仲良くなったんです。
なんというか普通だったら出会えない、
「変な友達」が全国津々浦々にいるんです。

音楽、写真、BBQ、格闘技…
我ながらなかなかの振り幅です。

さてさて、
趣味といえばこれを忘れてはいけません。
私を語る上で非常に重要な趣味。
落語です。

落語との出会いは、
30代半ばくらいの頃にさかのぼります。
とある金融機関の異業種交流会に参加した私。
そういう類の集まりって、
会員から会費を集めて、
そのお金を元手にイベントをやって、
親睦を深めるというスタイルが多いんですよね。

入会してから2、3年目のこと。
次のイベントは何にするか?
という議題で話をしていたところ、
メンバーの一人が
「落語とか、どうだろう?」
と提案したんです。
なるほど、こういう機会でもないと
接点がない世界です。
じゃあ、次回打合せまでに、
どの落語家さんを呼ぶか各自候補をあげてこようと
宿題になりました。

さて、どうしたもんかなと思って、
頭に浮かんだのは行きつけの居酒屋。
というのも、
そこは札幌に来た芸能関係の人が、
お忍びでくるような店なんです。
きっとマスターなら何かツテを
持っているに違いない。
相談したところ、
すぐに、とある芸能事務所を紹介してくれました。
当時、私は芸能関係にとんと疎かったのですが、
社長に事情を説明すると、
何人か候補をあげてくれました。
そのうちの1名が立川談春さんだったんです。

立川談春さん。
落語に興味がない方でも
その名前くらいは
目にしたことがあるのではないでしょうか。
今でこそ、超売れっ子ですが、
当時は落語業界では有名なものの、
一般的な知名度はまだまだな状態でした。

で、立川談春さんを招いた
異業種交流会主催のイベント第1弾は、
定山渓の温泉旅館「ふる川」にて開催。
好評を博したので、
その後も異業種交流会で、
立川談春さんによる落語の会を
5、6回はやったと思います。
話の流れ上、
私が札幌でお付きの役目だったものですから、
談春さんとはとっても仲良くなりました。

彼は2008年に「赤めだか」というエッセイを出して、
あれよあれよという間に有名になっていきます。
そのブレイク前、
私との付き合いがまだ2,3年目のころですかね。
談春さんの公演が札幌の教育文化会館、
小ホールであったんです。
小ホールですよ。
打ち間違えじゃありません。
大ホールクラスでチケットがすぐに売り切れてしまう
今ではまったく想像できませんが、
当時はそのくらいの知名度だったのです。
しかも、その公演、
プロモーターの告知が悪いせいなのか、
ぜんぜんチケットが売れない。
なので、
「脇坂さん、お願いがあるんだけど…」
と本人からチケット販売の協力をお願いされました。
漢、脇坂、お安い御用とばかりに、
異業種交流会のメンバーを中心に声をかけて、
総出でチケットを売りさばき、
結果、小ホールを満席にしたのです。

そこまでは、談春さんとの仲を考えれば、
私にとってはまあ普通のことなのですが、
本題はここからです。
本番当日、談春さんが選んだ演目は「芝浜」。
古典落語の1つです。
その日の談春さんの話芸は、
それはもう神がかっていました。
聞けば、落語家って客の入りが悪い時みたいな
逆境のほうが燃えるらしいんですね。
それなら、毎回客が入ってないんです…って
嘘をつけば、いつも物凄い舞台になるんじゃ…
って思った、そこのあなた。
なかなかのへそ曲がりですね。
私はちょっと思いました。

観覧した後、
ある異業種交流会のメンバーの一人が
「オレは、舞台の上に雪が降っているのを見た!」
って言い張ってましたが、
誰もそれを笑えないくらいに、すごかった。
言葉だけで風景を鮮やかに想像させるほどの話芸。
私なんか、胸の中に手をつっこまれて、
ハートをわし掴みにされたような感動を覚えたんです。
その夜寝付けなかったくらいですから。
私の感情の高ぶりたるや、想像に難くないでしょう。

すっかり落語にとりつかれた私ですが、
その面白さにどっぷり浸かるだけでなく、
オマケがありました。
異業種交流会を主催している金融機関の
経営陣の皆さんとも仲良くなったんですね。
いつもは般若のような顔をしている(失礼)
偉い人たちも談春さんの話を聞けば、
みんなすごく嬉しそうな顔をしている。
金融機関のビルなんかでばったり会った時にも
「おー、脇坂さん、元気?」
と挨拶する間柄に。
落語が取り持ってくれた縁ですね。
その金融機関の周年イベントに、
談春さんが出演するなんてことも実現しました。

周年といえば、
うちの20周年の話もしなければいけません。

「脇坂さん、会場押さえたから!」
ある日かかってきた談春さんからの電話。
「え?」
「ほらほら、オレも芸能生活30周年にあたる年で、
脇坂さんの会社20周年だろ。
いっしょに札幌でイベントやろうよって、
この前飲んだ時に話したじゃない!」
あ…、そうでした、そうでした。
飲み会で約束したんだった。

当時、彼は役者としてドラマで大活躍。
ある超人気ドラマ内で、
会社を買収する役を演じていました。
なので、電話がかかってきた時、
「ついに、
脇坂工務店も買収される時がきたか…」
と思ったんですよね…。
いや、すいません、
これは今思いつきました。

というわけで、
脇坂工務店プレゼンツで、
立川談春の落語会の開催が決定しました。
場所は道新ホールです。

本番当日の朝、
リハーサルの見学へ行ったら、
ステージには座布団が5枚敷いてあります。
出演者は立川談春さん、柳家三三さん、
柳家小せんさん、柳家一琴さんの
豪華4名です。
4名なのに、5枚の座布団。
あれ、1枚多い…?
山田くん間違えて座布団持ってきた?
と思っていたら、
「ほら、脇坂さん真ん中に座って座って。
お礼の言葉を言ってもらうからさ」
と談春さんがさらりと私に言ってきます。
そういえば本番1週間前の
談春さんとの電話でのやりとり。
「脇坂さん、紋付袴もってる?」
「いやいや、持ってないですよ!
一般人は持っていないんじゃないですかね…」
「まぁそっかー。じゃスーツでいいかなー」
と独り言のように言われて電話が切られ、
嫌な予感がしていたんです…。

これは口上ってやつじゃないですか…。
とは言え、
その頃からラジオには出演しており、
舞台度胸のようなものはついているから、
全然大丈夫と思ったのですが、
お昼ごはんがノドを通らなかったですよね…。
あれ、度胸のようなものはどこに…?

とはいえ、結果、無事に口上は終了。
人生初の口上を、
あの立川談春さんとやったってのは
死ぬまで自慢できそうです。

それにしても、
落語家さんは義理堅い人たちばかり。
だから、うちみたいな小さな会社の
周年まで応援してくれたんです。
ありがたい話です。
その日の公演中、
何度か泣きそうになったのは内緒です。

ひょんなことから始まった落語との縁。
仕事につながろうが、つながるまいが、
イベントなんかを楽しんでやってきた結果が
今につながっているんだと思います。
すごく月並みですが、
何でも一生懸命やるってのが大事
ってことですかね。
もしくは、何事も楽しむのが
上手な性分なのかもしれませんねぇ。
トクな性格で良かった、良かった。

そうそう、異業種交流会の会議で
「落語をやろう」って口にした人は、
一緒に神輿をかつぐ神輿会での仲間でもありました。
当時、神輿つながりで、
着物をカッコよく着るみたいなことが
仲間内で流行っていたんです。
だから彼は、落語家さんを呼んだら、
自分も着物を着られると思ったらしいんですよね。
改めて考えると、すごい理由だな…!
談春さんからは
「落語家より良い着物を着るんじゃないよ!」
ってツッコまれていましたけど。
でも彼の見栄っ張りなところが、
私の落語好きにつながったわけですから、
物事がどう転ぶかわからないものです。

今、ラジオでのトークのベースとなっているのは、
間違いなく落語です。
彼らの凄さを間近で見てきたから、
自分の話、話芸に満足することはありません。
毎週、話のネタを考えて悩む時も励まされています。
あのプロたちだって、
常日頃からアンテナをはって、
ネタを探しているんですよ。
札幌公演の前日とか、
一緒にいて私がなんとも思わなかったような光景も、
うまくすくいあげて、ネタにして、
「枕(まくら)」として話すんです。
記憶力もものすごいですし、頭をフル回転させている。
それに比べて、自分はたかだか週1回程度のこと。
頑張んなきゃって。

ラジオのおかげで、
この10年間で知名度もあがりました。
そこには落語の影響が強くある。
趣味は仕事と関係ないって言いつつも、
ムダなことは一つもなくて、
すべてつながっている感じが、今します。
私は仕事人間なのは間違いないのですが、
同時に趣味人間でもある
ってところじゃないでしょうか。

というわけで、以上が私の趣味の話でした。
じゃあ、一番最近の趣味は?
と聞かれたら、こう答えるでしょう。
「不動産投資」
あ、感じ悪い回答ですね。
でも、年齢も年齢なんで、老後の準備をしないと…。
そうです、
投資のリターンがないと、
老後がイヤーンじゃないですか。
リターンがないとイヤーン…。

…脇坂の話芸、まだまだのようです。
精進します。

脇坂肇