2021年4月16日 更新
#24
注文の多い工務店
お客さまの数だけ注文があります。
家を建てる時には
あれがしたい、これがしたい、
と夢は膨らむものですから。
ただ一般的に「注文住宅」とはいえ、
どんなオーダーでも叶えられるわけではありません。
むしろ、昔に比べて制約が多くなり、
自由度は下がっている気もします。
が、当社は気付けば、
それはまあ色々な注文をたくさんいただいてきました。
注文が多い、正確には
注文を多くいただく工務店。
お客さま本人からすれば、
わりと普通のこだわりと思っていても、
はたから見ると、
「え?」みたいに驚くこともあります。
風水とか鬼門とかを気にされるなんてのは
序の口です。
というわけで、
今回はお客さまからの変わった注文、
9連発でお送りします。
コンプライアンス。
大手ハウスメーカーだと
最近これが厳しくて、
普通とは違ったこととか、
奇をてらったようなものは、
受けてもらえないようです。
クレームになる可能性を
極力排除したいのでしょう。
決まったことを、
決められたとおりにやるのが
結果が読めて、いいわけです。
や、仕方ないですよね。
たくさんの方が働いている組織ですから。
一人ひとりが柔軟にやっていたら、
なかなか会社として成立しないでしょう。
そこで、
私たちのような中小の工務店の出番です。
いかに「変わった」注文に対応できるか。
うちは「おもしろければ、なんでもやる」
というスタンス。
守備範囲、広いと思います。
もちろん過去の経験上クレームになりそうなものは、
お客さまの要望といえども
「NO!」を申し上げますよ。
その判断基準を持てているのは、
これまで多くのリフォームを
手掛けてきたからに他なりません。
もともとリフォーム事業から出発した当社。
他社さんが建てた家を当社がリフォームする、
みたいなことがこれまで多かったんです。
リフォームするということは
往々にして家にトラブルが起きているわけで。
「ああ、こういうことするとダメなんだ」
っていう事例を数え切れないくらい見てきました。
知見がたまっているから
“落とし穴”には嗅覚が働くんですね。
たとえば三角屋根にしたいという要望があった場合、
「スノーストッパールーフ」というものを施工した上で、
雪が地面に滑り落ちてこないようにします。
そこに溜まった雪が溶けて水になるので、
流れ落ちるルートを確保しておくのですが、
寒暖差が激しいと、水がツララになってしまいます。
それが水の流れをせき止めてしまい、結果雨漏りする、
なんてケースを見てきました。
当社の対処法としては、例えばですが、
屋根を一部張り替えて、そこに電熱線をいれるとか、
色んな対策はとれます。
なので、お客さまのご要望で
「ああ、それは普通にやるとマズイな…」
という時は先手を打てるんです。
では、お客さまからの無茶ぶり…
じゃなかった、
お客さまからのご要望を受け入れる
土台があることをお伝えしたので、
次から具体的にケースを見ていきましょうか。
注文その1「真夜中のドラム」
家に音楽室をつくりたいというオーダーでした。
以前も書いたように、うちの得意技です。
施主さんからは
「木造住宅でもドラムを叩ける部屋がほしい。
夜中まで叩ける環境が必要なんです」
というお話。
夜中までドラムを叩く人なんて、
X J●PANのY●shikiくらいかと思っていました。
いや、イメージですよ。
で、脇坂工務店からの回答です。
木造住宅の中にコンクリートのシェルターを作りました。
基礎工事の時にシェルターをつくって、
それを木造の建物で囲っていく、みたいなやり方です。
さすがにドラムですから、
住宅街に建てる家としては、
それくらいの対策が必要でした。
これで真夜中に
「紅●ぁ〜!!!!!」とシャウトしても
大丈夫です。
あ、シャウトするのはドラムじゃないのか。
続きまして…
注文その2「男の夢」
続いては、
「家の中から愛車を眺めたい」というオーダーです。
建築雑誌などでたまに目にするアレです。
車好きな私にはよくわかります。
なんなら車を眺めながら、
ウイスキーでも一杯やりたいですよね。
(女性からは
まったく理解されない類のようですが…)
玄関を開けたら、すぐ窓ガラス越しに
ガレージの中が見えるというつくりをご提案。
お茶の子さいさいです。
(久しぶりに使いましたね、この言葉)
続きまして…
注文その3「家族が走る庭」
大切な家族、大次郎(仮名)のために
庭にドッグランをつくりたい、と。
はい、お安い御用です。
作りました。
あ、大次郎は柴犬です。
続きまして…
注文その4「波に乗れる家」
波に乗った後、歩いて家まで帰ってきて、
玄関をくぐると、
そこには土間つづきの収納スペース。
ボードとウェットスーツを置いて、
隣のユーティリティを通り、浴室へ…。
サーファーのための家ってやつですね。
銭函の工務店ならでは、です。
人気があって、
当社では何軒も手掛けています。
十八番です。
続きまして…
注文その5「レディーの夢」
「大きな家はいらないです、
女性の一人暮らしですから。
1LDKの間取りで十分。
でもね、ひとつだけワガママをいうと…
猫脚のバスタブをおきたいの!」
というオーダーでした。
ユニットバスであれば
乱暴に言っちゃうと埋め込むだけなんですが、
猫脚の浴槽のような特殊なものを置くなら、
浴室に防水処理を施すとか、
やることが色々出てきます。
でも、もちろん当社なら問題なくやれます。
続きまして…
注文その6「欧米化」
別荘の建設でした。
「土足で家の中を歩きたいんです」
というお客さまからの依頼。
ここは、
「欧米か!」
とツッコむところかなと思ったのですが、
お客さまは真剣そのものだったのでやめました。
大手に色々相談されたけど、
話が通じなかった…とのこと。
まあ、でしょうね…。
でも、当社なら大丈夫です。
そんなヘンテコ…
いやユニークなものでも問題ありません。
むしろテンションが上がってきます。
ただ、寝室だけ靴を脱ぎたいというご要望。
「そこは、欧米じゃないのか!」
とツッコむ代わりに、
寝室入り口に下足スペースを設けました。
ちなみに豆知識。
日本の住宅の玄関ドアって99%が外開きなんですよ。
意識して見てみてください。
これは「雨仕舞」上の問題です。
雨仕舞ってのは、
「うまく水を逃がすための構造」のようなことです。
逆に、アメリカのような海外は内開きで、
来訪者に対するウェルカムな態度というか、
姿勢を表しているとかいないとか。
ハリウッド映画では、
内開きのドアをそっと開けて訪問者を確認する、
みたいなシーンありますもんね。
当社では「内開きドアで!」
というオーダーがあったら、
既製品で探すのはもちろん、
オリジナルで作ることもできます。
あ、そのご依頼があればもちろん
「欧米化!」
という掛け声とともに設置しますから…!
…すいません、
ちょっと上手いこと言えた感じで
調子に乗りました。
続きまして…
注文その7「欧米化2」
お客さまは日本人のご夫婦。
お互いヨーロッパ在住時に知り合ったそうなんですが、
なかなかの変化球、いや魔球でした…。
打ち合わせの際、
ご主人からは、
「電柱から電線が家にひきこまれているのが嫌だ」
と言われ、私は真顔で
「え?」
と聞き返しましたから…。
日本だと当たり前の風景が、
お二人にとっては違和感ありまくりで、
美学に反したようです。
正直、The日本人の私には理解できないですが、
お客さまの希望であれば、
オトコ脇坂、一肌脱ぎましょう。
ということで、
敷地内の端っこに仮設の電柱を立てて、
そこから電線を地中に埋めて、
家まで引き込みました。
ふぅ…やってやったぜ、と思っていたら、
ご主人が一言、
「外壁より窓が出っ張っているのが嫌だ」
え、WHY?
思わず英語で質問しましたよね、
心の中で。
「海外は、みんなそうなんですよ」
というお話だったので、
「ここは日本では…」という言葉をグッとこらえて、
オトコ脇坂、ふた肌目を脱ぎました。
イメージにあう窓を探し出してきて、
さらには外壁の下地を処理することで
窓を凹ませました。
いやー、こういう無茶ぶり…
じゃなかった、期待値が高い注文を、
なんだかんだ言って、
「おもしろい…!」
って思ってしまう体質なんですよね、私。
商売のこと考えたら、
極力画一的なことをやったほうが
効率いいんでしょうけど。
おもしろそうな、変なことを聞くと
ついやってみたくなる。
しかも、「他社で断られたんですけど…」
みたいな上目遣いで言われると、
「やりましょう!」って
即答してしまう体質です。
(それを利用して、無茶言わないでくださいね…)
続きまして…
注文その8「海とプール」
まさに進行中の案件でも変わりダネあります。
こっそりお伝えしましょう。
銭函の海沿いに、
プール付きのレストランを建設中なんです。
「海が近いんだから、プールいらなくない?」
って思った、そこのあなた!
シッ!
見方を変えれば、
海とプール、どっちも楽しめると言えますから…!
ここまで読んだ方、
「まあ、確かにちょっと変わったオーダーだけど、
他のハウスメーカーでもありそうだなー」
と思っていませんか。
甘い。
甘すぎます。
続きまして…
注文その9「その筋のオーダー」
知人からの紹介でした。
とあるお客さまが、
札幌中心部に土地を買ったのだけど、
その斜め向かいにちょっと難がある、と。
どうやら、そこには、
その筋の方がいらっしゃったのです。
道を極めた方々が働く、
いわゆるワークスペースとでも言いましょうか。
まぁ、端的に言うと、
いわゆる反社会的勢力の事務所ってやつですね…。
で、お客さまは
その土地を気に入って買ったはいいけど、
どこの建設会社もやってくれなくて
困っておりました。
各社に相談に行ったけど、
ことごとく断られたらしいんです。
たしかに容易に想像できますよね。
工事はどうしても音が出たり、
道路の通行の邪魔になったりしますから、
「あの、ちょっとよろしいでしょうか」
と言われるに決まっています。
今オブラートに包みましたが、
実際は
「何やっとんじゃ、ワレ!
そのドリルで…(以下自粛)」
となりそうです。
私、Vシネマの見過ぎでしょうか。
でも、わたしはその相談に対して
「大丈夫、できますよ」
と自信満々に答えましたよ。
なぜか。
実はこのお話が来る前に、
たまたま元警察の方の家を建てていたんです。
しかも、
いわゆるその筋の方たちとやりとりする部署、
マル暴のOBの方。
なんたる偶然、なんたる幸運。
で、この相談が舞い込んだ時に
すぐに彼に連絡して、
「この場所なんですけどね・・・」
と図面を見せつつ、相談したら
「どれどれ、あー、ここは本物だね」
なんて言われました。
やっぱり…。
「あー大丈夫、大丈夫。
今、いわゆる“暴対法”っていう法律があるからね。
彼らもおとしいもんだよ。
心配なら、
オレがあいつらに一本電話しておいてやろうか?」
という話になっていたのです。
そんな後ろ盾があったので、
自信満々で
「大丈夫ですよ」
と答えた次第でした。
私もちょっと調べてみると、
法律改正のおかげで、彼らにとって
想像以上に生きづらい世の中になっているらしく。
もし近隣住民とモメて、
その場所を立ち退かないといけなくなったら、
今度は新しい場所が
借りられなかったりするんですよね。
だから工事が進んでいった時に、
現場監督に様子を聞いたところ、
「いやー、何のトラブルもなくて。
組の皆さん、ものすごく礼儀正しかったですよ。
なんなら近所に住んでいるヤンチャそうな
若者のほうが怖かったなぁ…」
何なら組長とお思しき方に
「うちがここにいるせいで、
迷惑かかって家がなかなか
建たなかったんですかねぇ。
だとしたら、
こうやって家を建ててくれて嬉しいですよ…」
と切ない口調で言われたらしく、
「親分…!」
と、うちの現場監督が
涙まじりに言ったとか言わなかったとか。
すいません、親分とは言ってないと思います。
といった感じで、
ドッグランからヤ●ザまで、
幅広く対応できるのがうちの強みです。
その道を極めています。
そう、脇坂工務店の仁義なき戦いは続くのです…。
あ、各種ご注文はどうぞお気軽に。
注文を口にするところまではタダですから…!
脇坂肇