2025年3月24日 更新
#71
銭函の熱狂。

大変です、大変です。
今、銭函が異常な盛り上がりを見せています…!
ん…?
「いつも『銭函が盛り上がっている』
って言ってない…?」
という声がどこからか聞こえてくるな…。
いやいや、これまでとは異なる
盛り上がり方なんですよ。
特に冬。
これまで銭函にとって閑散期だったのに、
ここ数年、インバウンドの人たちが
大挙して押し寄せているんです。
一体どうしてこんなことになっているのか。
この謎を解き明かすカギを、
独自ルートで入手したのでご報告します。
銭函の現在を語る、その前に。
この地にまつわる歴史について
少々お話させてください。
銭函駅前にオフィスを構える
当社だからこそ知っている歴史です。
まず、当社銭函オフィスのある土地なんですが、
ひょんなことから、
ここにある建物が建っていた説を
私は知ることになりました。
北海道に開拓使が置かれて150年、
つまり、北海道と命名されて150年が経った
2018年のことです。
突然、銭函オフィスにある人物がやってきたのです。
歴史研究家と名乗られたその男性は、
おもむろに、
こんなことを私たちに助言しました。
「ここは開拓使の事務所があった歴史的な場所。
だから記念碑をつくったほうがいい!」
え?
や、いきなり記念碑って言われても…。
地元の人たちから、
そんな話を聞いたことないですし…。
あ…私の記念碑…?
…じゃないですよね。
ただ、その証拠を見せてくれるわけでもないので、
なんとも言いようが…と困惑しつつも、
ありえない!とも言い切れないなぁ
って思ったんです。
なぜなら、別の方から、
この土地の特別さを指摘されたことがあったから。
それは、祈祷師からです。
あ、怪しくはないです、怪しくはないです。
リアル祈祷師ですから(怪しい)。
事の経緯は、
銭函オフィスの土地を取得した時のこと。
とある経営者からの紹介で、
祈祷師の方に見てもらったことがあるんですね。
まあ、興味半分で、といったところです。
1000万円くらいする御札とか
買わされたりしてないですから、
安心してください。
で、現地に来てもらったところ、
ゴミステーションが設置されている場所を指して、
「あそこは先住民が祈りを捧げていた場所ですね」
と祈祷師の方が断言したんです。
開拓使の事務所の話と同じく、
何か痕跡が発掘されたとかではないので、
これもホントかどうかはわからないですよ。
でも、歴史の調査によれば、
銭函は札幌よりも歴史があることは
明らかになっています。
かつて栄えていた時代には
映画館や市場まであったとか。
今の銭函ののんびりとした風景からは
ちょっと想像できないですよね。
とにかく歴史がある土地ということは、
間違いないですから、
かつて何かしら重要なものがあっても、
おかしくないなぁと感じたわけです。
私たち脇坂工務店が
オフィスを銭函に構えたのは2000年のこと。
そこから25年、
四半世紀、この街の風景を見てきたわけですが、
歴史が積み重なった銭函という土地からすると、
25年なんて、あっという間の話でしょう。
それでも、この“短期間”で大きな変化の波が
次々と押し寄せてきたことを、
身を持って感じています。
例えば、ガスなどを販売していた
ご近所の燃料屋さんが2023年に閉店したり、
長年あった新聞販売店が銭函から撤退したり。
街の風景は変わってきています。
もっと私たちに近いところでいえば、
銭函オフィス1階にテナントとして
入ってもらっているカフェも、
現在の徳光珈琲さんで3店舗目。
また、以前の場所の銭函オフィス時代から
テナントとして入ってくれていた
「Zenibako Style Shop & Gallery」も
2024年12月に惜しまれつつも閉店しました。
ずっとこのエリアのカルチャーシーンを
盛り上げてくれていたのですが、
運営をされていたSさんが、
小樽の街中へ活動拠点を移されるという
事情から止むなく、です。
近い世代のSさんとは
「銭函は次の世代の時代を
迎えていくんでしょうねぇ」
なんて話をしていました。
その土台づくりといいますか、
銭函という場のブランド力を高めることに、
私たち世代が多少でも貢献できていたのなら
本望ですねぇ。
さて、
そんな過去の話を踏まえての銭函の現在について。
「記念碑を建てたほうがいい!」
と仰った歴史研究家さんが
この光景を目にしたら、卒倒するんじゃないかな…。
海水浴場があるため、
銭函は夏に人が集まるスポットでした。
特にコロナ禍は
(既に懐かしい言葉ですが)密を避けるため、
子供連れの若い家族で海岸は大賑わい。
お弁当持参で遊びに来ている姿をよく目にしました。
しかし、コロナが明けた2023年から、
ぽつぽつと海外の人たちが訪れ始め、
2024年からはものすごい数の外国人が
銭函にやってくるようになります。
今年2025年に入っても、
その勢いは弱まることなく、むしろ過熱気味。
アジア系の人たちがとにかく多いです。
徳光珈琲さんや
近所のセブンイレブンさんに調子を尋ねると、
「冬のほうが忙しいです…」
とこぼしていました。
なぜ、こんなにも人がやってくるのか?
諸説あります。
「あのBTSのメンバーが銭函を訪れて、
SNSにアップしたから」
とか
「アジアの超人気インフルエンサーが訪れたから」
とかいう噂です。
「脇坂肇がいるから」
という噂が聞こえてこないのは
どうしてでしょうね…。
それが真実だと思ったのですが…。
ともかく、すべての情報が噂の域を出ず、
なぜこんなにも外国人がやってくるのか、
地元の人は誰もわからなかったのです。
しかし、つい先日、
かなり確度の高い情報をつかむことに成功しました。
情報源は中国で会社を経営する女性(日本人)です。
あ、なぜ、
そんな人とつながりがあるのか謎ですよね。
経緯を説明します。
もともと、当社の銭函オフィスは、
海水浴場のすぐそばにありました。
そこで2000年から営業を始めて、
2015年12月に縁あって、現在の場所に移転。
銭函駅前に5階建ての建物をつくり、
1階と2階をオフィスとカフェに、
3階から5階は賃貸マンションにしたのです。
この場合、敷地内にゴミステーションを
設置しないといけないんです。
賃貸物件が建物に入っていると、
そういう行政上のルールがあるんですね。
そこで、私はこう考えました。
「せっかくゴミステーションを設けるなら、
近隣町内のゴミも出してもらえる
大型のものにしよう!」
銭函歴15年ほどではあるものの、
駅前では新参者の私たち脇坂工務店。
街の美化に貢献して、
町内の人たちに少しでも役立てれば、
と思ってのことです。
その話し合いを町内の人たちとした際に、
何名の方と面識ができたんですね。
そのうちの一人から久々に連絡があったんです。
「脇坂さん、ご無沙汰しています。
いや、あのね、うちの娘なんですが、
中国で会社をやってまして。
最近、久々に帰省してきたんですよ。
そしたら、ちょっと脇坂さんに
話したいことがあるって言ってるんで、
一度会ってやってくれませんか」
え、何?
中国の不動産の相談…?
「万里の長城を買いませんか?」
とかいう話…?
と思いつつ、
娘さんのAさんとお会いしたのです。
Aさんから聞いたのは、次のようなことでした。
久しぶりに銭函に帰省してみると、
ものすごい数の外国人が来ていることに
びっくりしたAさん。
彼女は中国語を話せるので、
中国人と思しき旅行者数人に声をかけて、
「どうして銭函に来ているんですか…?」
と質問してみたそうなんです。
すると、
「映画を観たから銭函に来た」
という答えが次々と返ってきたのだとか。
その映画とは、このセリフで有名な映画です。
「お元気ですかーーーー!」
そうです、
小樽が舞台となった日本映画の名作、
「Love Letter」です。
1995年に公開された岩井俊二監督の作品ですね。
のちに韓国や台湾でも公開され、
爆発的な人気となったのですが、
近年、中国でも火がついたらしく。
いわゆる「聖地巡礼」的なことで、
小樽を訪れる中国人が増えているのだとか。
主役の中山美穂さんが
2024年に亡くなったことも
影響しているのかもしれません。
ただ、小樽が舞台の映画とはいえ、
銭函でも撮影していたっけ…?
どこだろう?と思ってネットで調べてみたら、
銭函の家が主人公の自宅として使われた
という情報が出てきました。
しかし、そこは、
2007年に火事で焼失したとのこと…。
あっ…。
私の記憶が蘇ってきました。
確かに、
「やけに消防車のサイレンの音がするなぁ」
と思って、音がする方角を見たら、
銭函インターチェンジのあたりで、
煙が上がっていた光景を思い出しました。
しかも、近所の方が、
「火事になった家、映画のロケ地だったんですよ」
なんて言ってたな…。
あぁ…あの時の家だったのか…。
ちなみに、未見の方のために
Love Letterという映画をざっくり解説すると、
男女が仲良くなったり、
すれちがったりする映画です…!
……。
…まあ、観てみてください。
ロケ地は小樽の各地なので、
特に北海道の人からすると、
「あ、あそこの場所だ」
みたいな見覚えある風景が
ちょいちょい出てくるのも楽しいはずです。
それにしても、
どんどん街の代謝が進んで、
新しいものが増えていると感じている今、
まさか、30年もの前の映画がきっかけで
海外の人から注目を集めるとは!
不思議なものです。
#2「たまたま銭函でした。」
#19「気づいたらブランディング。」
#23「銭函がキテる。」
といった具合に、
この「わかる話」では、
銭函について様々な角度から語ってきました。
近年、銭函エリア、
つまり桂岡、張碓、春香、見晴、
そして銭函といった町に
進出する建築会社や不動産会社が増えてきています。
モデルハウスや宿泊施設が建てられていき、
街並みがどんどん変わっていく一因となっています。
前述の通り、当社が銭函での活動に
力を入れ始めたのは2000年から。
この土地に魅了されて、
デザイン性の高い建築物を建てるお手伝いを
数え切れないほどしてきたわけで。
どうやら私たちは
銭函の「パイオニア」ってやつらしいです。
あ、私が言っているわけではなく、
周りからそう呼ばれることが時々あるんです。
なので、最近こんな質問を
よく投げかけられるんですよね。
「せっかく脇坂さんが切り開いてきた銭函エリアに、
同業他社が進出してきて商売をされるのって、
カチンとこないんですか…?」
正直に言っていいですか…?
実は、むちゃくちゃカチンときてま…
…
…
…せん!
縄張り意識なんてないですね。
同業他社がやってきて、
銭函が盛り上がるのは大歓迎ですよ。
銭函に建築物という
「投資」をしてくれる人が増えると、
さらに街に勢いがついて、移住者が増え、
いろいろな商売をやっている方が潤い、
その様子を見て、
さらに銭函に投資しようとする人が増える。
そんな好循環が生まれるからです。
結果、私たちの仕事の「何か」に
つながればいいんですよ。
そのくらいでいいんです。
事実、当社の関連会社が所有する
銭函のアパートは常に満室状態。
さらには、複数の宿泊施設を建てる案件や、
賃貸のテナント物件を建てる案件も進行中です。
いずれも銭函に惚れ込んだオーナーから
ご相談いただいているもの。
私たちは十分恩恵にあずかっていると思っています。
まあ、
万が一当社の銭函での仕事が減少傾向にあるなら、
私はライバルの会社を訪問しているでしょうね。
「あのー、銭函のパイオニアなんですけど、
ちょっとよろしいでしょうか…?」
って言って。
町内会の回覧板とかに
「最近、パイオニアを名乗る不審者が
徘徊しているという情報が寄せられていますので、
ご注意ください」
っていう情報が載ることでしょう…。
好循環を感じさせる、ある事実があります。
それは、銭函の人口が横ばいということ。
「横ばい」って見ると、
「そんなに盛り上がっていないのでは…?」
って思えるかもしれませんが、
道内の市町村の人口推移と比べてみてください。
ほとんどが人口減に悩んでいる中、
横ばいというのは、むしろかなり良い状況。
そもそも、日本全体で人口が減っているわけですし。
ここは未来に希望が見える場所なんです。
しかも、
この状況が行政主導で生み出されたというより、
私たち脇坂工務店を含めて
民間会社によるところが大きい、
ということは自負しています。
民間が主導した街おこしや移住促進の成功事例では…
とさえ思っています。
だって、行政は何もしてこな…
おっと…何でもないです。
私は何も言ってません。
建物を建てるお手伝いをして、
街の魅力がさらにあがって、
人が集まり、街が元気になっていく。
そんな景色を、健全なやり方で
これからも生み出していきたいですね。
それは、私たち建築会社ができる
社会貢献のひとつだとも思っています。
今後、銭函はどう移り変わっていくのか。
もはや古参である私が、
そこで果たせる役割はなんだろうか。
そんなことを考える、今日このごろです。
ひとつ言えることは、
地道に真っ当に、正直にビジネスをしよう
ってことですね…!
「パイオニアですけどぉ!」
とドヤらずに、謙虚に正直に。
…。
……。
………。
…ああ、ごめんなさい。
「正直に」と書いて、
もう耐えられなくなりました。
ひとつお詫びがございます。
実は、私、脇坂肇、
「Love Letter」を観ておりません…!
さも、知っているかのように
説明して申し訳ありませんでしたッ…!
「小樽が舞台となった日本映画の名作、
『Love Letter』です」
なんて、スーパー知ったかぶりでした。
「Love Letterという映画をざっくり解説すると、
男女が仲良くなったり、
すれちがったりする映画です…!」
なんて説明したのも、
ボケたわけではなく、
単に知らなかっただけで…。
銭函のパイオニア(他称)として、
知らないとは言い出せなかったんですぅぅう…。
まずは映画を鑑賞し、
インバウンドの皆さんに混じって、
聖地巡礼に励み、出直したいと思います。
脇坂肇