2025年5月23日 更新
#73
コロナ禍の真実。

経営者一人の力では、
どうしようもないことって起こります。
自然災害や疫病、世界紛争…etc.
世の中が変わるくらいの事態に
どう立ち向かうのか。
いや、立ち向かわずに、
いかにその逆風を追い風に変えるのか。
経営者の腕の見せ所です。
コロナ禍の終焉から丸2年たちました。
もはや、あのカオスを忘れかけていませんか。
悪い夢を見ていたようですよね。
私以外は。
そう、私以外は…。
「トランプ」
今ニュースで、この名前を見ない日はないでしょう。
なかでも話題になっているのはトランプ関税。
影響を受けるビジネス界隈は大騒ぎです。
当社はそこまで振り回されていませんが、
直接的な影響があるとしたら、
近年仕事が増えている
海外のお客さまからの支払い関係でしょうか。
当社が海外のお客さまの仕事をした場合、
「外国送金」によって
工事代金が振り込まれるケースがほとんどです。
外国送金って、文字通り
外国から日本の当社の口座に
お金を入れてもらうこと。
こちらが請求する費用は日本円なので、
為替レートによって、
海外のお客さまが払う金額が変動するわけです。
当然、円安になるとお客さまは嬉しい。
払う金額が下がりますからね。
今回のトランプ騒動によって
円高傾向で相場が推移しています。
となると、
「コウジ、オワッテナイケド、
フリコンデイイデスカ」
という話が出てくる可能性はありますね。
工事代金ってかなりの高額。
1円円高になるだけでかなりのインパクトです。
仮に10億超えの建築物だと、
支払額が1000万円レベルで変わってきます。
これを嫌うお客さまは、
一定数いらっしゃるでしょう。
工事完了を待たずして
先にキャッシュが入るなら、
これはこれで経営者としてはありがたい。
受け取らない理由はありません。
が、トランプ大統領の影響は
正直まだ読めないところがたくさんあります。
これからも動向を注視していかなければ。
会社を31年もやっていると、
こういう世の中の大きな変化や出来事って、
色々ありました。
リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍etc.
世界的に見ると、リーマンショックが
経済界に大打撃を与えたわけですが、
正直、当社は大変だった記憶がないんです。
ノーダメージでした。
「サラリーマンのショックなら、
経営者の私には関係ないか!」
くらいに思っていたから、
気づかなかっただけかもしれません。
かたや、東日本大震災の時は、
ものすごくものすごく色々ありました。
記憶に強く残っているのは、
住宅設備や建材の調達が滞ったことです。
製造工場が被災してしまい、
まともに商品が作れなくなったんです。
ただ、被災された方々のことを考えれば、
もう何も言えませんよね。
日本中が大変な時でした。
そんな混乱が生じている時って、
必ずデマが流れるものなんです。
ある時、住宅設備や建材を扱う問屋の担当者が
「脇坂さん、大変です!
震災復興のために、政府の指示で
コンパネが出荷停止になったそうです!」
と言ってきたこともあったっけ…。
コンパネとはコンクリートパネルの略。
屋根の下地とかに使われる建材です。
確かに、震災復興で、ものすごい数の建物を
建てる必要があった状況でしたから、
なんとなく本当ぽく聞こえますよね。
足りなくなりそうだから、
被災地に優先的にまわそう、みたいな。
ただ、人の話をまっすぐに聞かないことで
有名な私は
「どうせ商社か何かが噂を流して、
商品価格を釣り上げようとしているのに
決まっている…!」
とすぐに思ったんです。
だって、何も決められない政府が、
コンパネという商品をピンポイントで選んで、
そんな決断を下せると思います?
そんな考えを問屋担当者に伝えると、
「あ、確かにそういえば、そうですね…」
と納得していました。
おいおい、しっかり!
そして、記憶に新しい世の中の混乱といえば、
2020年から世界中を混乱の渦に巻き込んだ
コロナ禍であることに異論はないでしょう。
外国人が大挙して押し寄せる
世界屈指のスノーリゾートとなった
倶知安ニセコエリア。
2010年代前半には外国人に“発見”されて、
年々賑わいが加速していました。
しかし、2020年にコロナ禍に突入。
あれほどまでに賑わっていた地から
人が消えたのです。
仕事の関係で、2020年5月にニセコの
パークハイアットに泊まったのですが、
客はまさかの私一人。
「パークハイアットを貸し切った男」
として歴史に名を残してしまいました。
(や、貸し切ってはいない)
本当に異常事態でしたねぇ。
コロナ禍に入る前までは
盛り上がりまくりだったので、
倶知安ニセコは建設ラッシュだったのです。
2019年には、
ホテル従業員などの住居としてのニーズを
見込んで木造2F建てのアパートが
バンバン建てられていたのですが、
当然のことながら、
2020年になっても入居者は決まらず。
ゴーストタウンならぬ、ゴーストアパートが
たくさん生まれました。
静まり返った街に、
カーテンが付かず、がらんとした部屋が
並ぶ光景は強烈でしたねぇ…。
いまだに鮮明に思い出せます。
アパートのオーナーさん、大変だろうなぁと、
同じ不動産業を営むものとして思っていました。
うちは大丈夫だけど、大変だろうなぁ…と。
うちは大丈夫だけど…。
…あ、つい、本当のことを…。
感じが悪くて申し訳ございません。
や、今だから言えるのですが、
当社はコロナ禍でも忙しかったんです。
ニセコの仕事が立て続けに決まって、絶好調でした。
コロナ明けを見越した
富裕層のお客さまからの依頼が多かったんです。
やはり経済的に成功した人たちは、
先を読むのが上手。
コロナ禍が永遠に続くわけではなく、
かつ倶知安ニセコというエリアの価値は
これからも崩れないだろう、
という確信があったのでしょう。
実は、一般的な住宅業界だって
あの頃は好調だったんですよね。
俗に言う「巣篭もり需要」ってやつで、
家を建てたり、
住まい関係にお金を使う人が増えましたから。
とはいえ、世の中全体が自粛モードだった頃です。
景気のいい話なんて口に出せませんでした。
「いやー、コロナで大変ですよね」
と言われたら、私もしかめ面して、
「ええ、本当に…」
と話を合わせておりました。
しかめっ面は、
笑みがこぼれそうだったので、
それを防ぐためです。
三十三間堂の阿修羅立像のような、
私の表情を見て、きっとみんな
「脇坂工務店、大丈夫かな…」
と思っていたことでしょう…。
というわけで、脇坂工務店は
密かにニセコ地区で頑張っていたわけです。
その頑張りを後押ししたのが「ゼロゼロ融資」です。
企業の救済措置の一環として始まった
コロナ融資のひとつで、
融資の保証金がゼロ、金利も一定期間ゼロ。
3〜5年間は返済しなくてもOKという
スーパーやさしい融資だったのです。
使い道が自由だったことも大きな特長でした。
企業が金融機関からお金を借りるときって、
通常であれば、
厳しく使い道を審査されるんですよね。
「会社にジャグジーとサウナを作るのに、
ぜんぶ使っちゃった!てへ♡」
みたいに、変なことに借りたお金を使われると、
金融機関がどんどん潰れていきますから…。
なので、普段なら、
「え、倶知安の土地なんて、田舎なのに、
そんなに高いんですか!大丈夫ですか!」
と金融機関にツッコまれるところ、
何も言われずに借りられるのは大きい!
また、当社の取引金融機関である信金は
通常なら担当エリアを超えた融資はNGなので、
その点もありがたかったわけです。
いろんな金融機関がお祭り騒ぎでした。
金融機関としては、リスクを侵す必要なく、
たくさん貸し出す機会が生まれるわけですから。
そして、このゼロゼロ融資によって、
たくさんの会社が救われました!
…と思いますよね?
いやいやいや。
私はこの融資のルールを知ったとき、すぐに
「これは罠!」
と思いましたね。
経営者たるもの、
目の前にお金があるからといって、
気を緩めるのが経験上一番危険。
目の前の窮状を脱するために
お金を借りることは、
終わりの始まりになる可能性が高い。
何かを生み出すために、お金は借りねばなりません。
当社も融資を受けたのですが、
不動産を2つ購入しました。
ひとつは倶知安の築20年のアパート。
もうひとつは、資材を置くための土地で、
そこに倉庫を建てました。
2020年時点で、既に何棟かの工事を
倶知安ニセコで手掛けていたので、
その支えになる場所を確保したのです。
それぞれ6000万円を
2つの金融機関から借りたのですが、
すぐに返済を始めました。
さらに返済金額と同額の積立も開始。
万が一返済が滞った場合に備えて、
キャッシュをキープしておこうという狙いです。
融資を受けて5年経った今、
まだ融資の残債はありますが、
積立も順調に達成できているので、
万が一の時も安心な状態が整っています。
ちなみに、
その築20年のアパートを昨年売却して、
新築アパートの建設費に充てました。
社員の宿舎を建てたのです。
その顛末は
#66「COMPANY HOUSING」を
どうぞご覧ください。
ここ1、2年、
倶知安ニセコで工事に携わる同業他社と
会食をする機会が何度かありますが、
そこでよく話題になるのが、
社員や大工さんの宿舎問題です。
「いやー、どこも空いてないですよね…」
と、みんな、困っています。
「いいなー、脇坂さんのところは!」
とチクチク言われます。
そのたびに
「いやいや、うちはうちで大変なんですよぉ」
と私は言いつつ、コロナ禍同様、
仁王像のようなしかめっ面をするのが常。
満面の笑みを浮かべて
「自社の宿舎、建てておいて良かった〜!」
とうっかり言わないために…。
他社さんが、当社のように建てるとなると、
ネックのひとつは土地の価格でしょう。
ニュースでも話題になっていましたが、
この2年間で倶知安の地価は大幅に上昇しています。
先日、これを実感しました。
お客さまからの依頼で、土地の査定をしたんです。
当社所有のアパート「マチネ」そばの土地ですが、
結果はなんと…
たった2年で30%もUPしていました…。
スノーリゾートの活況や、
新幹線や高速道路延伸の工事など、
大規模工事が少なくとも10年は続きます。
よって、このタイミングで、
同業他社が自社の事務所や社宅を計画しても
かなりの投資になってしまい、
実際はなかなか実現できないのでは…。
対して、私は安い時に買えました。
しかもコロナ禍の融資を活用して。
これも、すべて私の計算どおり…
…ってことはまったくなくてですね…。
正直、
ここまで上手くいくとは思っていませんでした。
「脇坂さんは、先見の明がありますね」
とはよく言われます。
確かに結果だけを見れば、そうでしょう。
しかしですね、謙虚でもなんでもなく、
たまたまってことがほとんどなんです。
まず、そもそも倶知安ニセコの仕事を
最初に手掛けたのは、
東京の設計事務所の依頼があったから。
戦略的にニセコに進出したわけではなく、
頼まれたから、です。
むしろ、あの頃って、
業界的には既に出遅れた感がありました。
倶知安ニセコの盛り上がりは始まっていましたし、
それを狙って進出しようとする
施工会社もたくさんあったわけですから。
慎重派の私は、かなりの逃げ腰&及び腰でしたよ。
その証拠に、
当時、従業員の宿舎は賃貸アパート。
買ったり建てたりせず、
すぐにでも撤退できる用意をしていたんです。
ひょっとして、私って、
周囲から
「フハハハ!土地をぜんぶ買い占めてやる!」
みたいに見えていますかね…?
土地大魔神みたいな。
いやいやいや!
主張しておきたいのは、
投資目的で土地を
買い漁っているわけではないんです!
(というか、買い漁ってもいない!)
あくまで、建築の仕事のため、なんです。
社員が使う事務所やアパートを建てる、とか、
現場を納めた後も使える建材や金物、
冬しか稼働しない除雪用タイヤショベルなどを
しまうための倉庫を建てる、とか。
それらが目的です。
結果、不動産の価値が上がっただけ。
まあ確かに、我ながらどうかと思うのは、
ガラガラのアパートが建ち並ぶ光景を見て、
不動産を買ったことでしょうか。
他の人がやろうとしてたら、
止めていたかもしれませんねぇ。
ただ、何かしらの確信がないと
商売って成り立たないわけで。
当社の場合は現地での仕事の見込みがあったから。
その流れを踏まえて、冷静に判断し、
コロナ禍でも買うという結論に至ったんです。
あ、ひとつ大事なこと、というか、
当たり前の話をしますが、
不動産がいくら高騰しようとも、
売らないと儲からないですからね。
つまり、私は別に儲かっていないのです!
私は土地を転がしていない、ということです。
どちらかというと、転がっているのは私…!
七転八倒、転がりながら、
がむしゃらに頑張っているだけですよ…!
これからも泥臭く、したたかに、
転がり続けて参ります。
というわけで、土地は売り時が肝心。
物件とタイミングを見極めないと…。
そうです、
トランプショックと言われている現在、
不動産売買の話で
ババを引かないように気をつけたいところです。
トランプだけに…。
ト、トランプだけに、ババを引かないように…!
…いえ、これはスベってないです。
転がっているだけですから。
脇坂肇