「話のわかる工務店」がわかる話

お客さまとの話。職人との話。取引先との話。地域の話。お金の話。家づくりの参考になればと思い、「話のわかる工務店」がこれまで語って来なかった話をご紹介します。これで脇坂工務店のことを少しでも知っていただければ幸いです。

脇坂肇

2020年8月24日 更新

#17

そして、踊る社長。

脇坂肇

イメージソングを持っている会社があります。
「この木〜♪」的なところとか、
「タケモト〜♪」的なところとか。
どこも全国ネットで
TVCMをバンバンやっているような大企業ですよね。
ところが、周年ということで、
うちみたいな中小業企業も作っちゃったんですよ、
イメージソング。
制作では銭函からLAまで股にかけました。
ある意味。

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「今回も周年歌を作ろう…!」
そう決意したのは、
25周年を翌年に控えた2018年4月のことでした。
「今回も」というのは、
20周年の時に一度、脇坂工務店のために
歌を作ってもらったことがあったのです。
もともとは尊敬する先輩経営者の一言がきっかけ。
「この前、アーティストに
うちの会社のイメージソングを作ってもらってさ…」
え、そんなことできるんですか?
なんでもSE-NO(セーノ)という
シンガーソングライター兄弟ユニットに依頼したと。
それならば我が社も!ということで
彼らに楽曲制作をお願いしたのでした。
私がイメージソングに惹かれた理由はラジオです。
番組に出演するのにあわせてCMを流す機会が多くあり、
そこで音楽の力を借りるのが有効と考えたからなんです。
冒頭にお伝えしたとおり、
歌とともに企業名とその印象が残りますからね。

SE-NOが書き下ろしてくれたのは「Home」という曲。
家という意味と、自分が帰ることのできる場所、
という意味が込められているわけですが、
最初に聴いた時に、
「秋の銭函にあう曲だな…!」
と感じたことを覚えています。

この周年歌を作る時には、
「お金は出すけど、口は出さない」
というスタンスを貫いていました。
曲はあくまでアーティストの方が生み出すものですし、
彼らのものです。
曲がかわいそうなので、
スポンサーだからといって独り占めにはしない。
そんなことを考えていました。
制作スタート時にもキチンとそれは言いますね。

その後「Home」は、
ずっとCMソングとして使わせてもらっていました。
そして25周年のタイミングで
リニューアルしようと考えたわけです。
じゃあ、今回は誰に依頼するか…。
お、そうだ、
私には身近に最適な相談相手がいました。
AIR-G’パーソナリティの森さんです。
アーティストをたくさんご存知ですし、
音楽に造詣が深いことは
普段の会話の端々から感じていました。
彼から何名かの名前があがり、
その一人が小澤ちひろさんだったのです。
彼女の「紡ぎ愛」はいい曲だなと思っていたし、
森さんと番組を一緒にやっているし、
直感的に良いなと感じたので、即決です。

アーティストは早々に決定。
しかし、ただ曲を作るだけでは面白くありません。
脇坂工務店はWebに力を入れているので、
せっかくならWEBで観られるような、
ミュージックビデオも作るといいんじゃないか。
というわけで、私が信頼する
各分野のプロに集まってもらいました。
場所は、すすきのの居酒屋。
サッカーW杯で盛り上がっていた夜です。
森さん、ちひろさん、私以外には、
カメラマンI氏、AIR-G’のY氏、
関西人のF氏、コピーライターT氏の計7名。
これで、もう私の仕事は終わったようなもの。
あとはプロフェッショナルが
形にしてくれることでしょう…
と一人だけ早くも打ち上げの気分になって
焼酎を飲んでいたらみんなから怒られました。

その後、総監督にまつりあげられたT氏と
ちひろさんが打ち合わせを行い、
楽曲の制作がスタートしました。
T氏いわく
「音楽について、私は素人なので、
動画のテーマみたいなことをコピーを書いて
ちひろさんに伝えました」とのこと。

そして出来上がってきたのはメロウな曲調のもの。
というか、私はその時点で聴いていないんです。
途中チェックとかは一切しません、と伝えていたので。
かなり後になって
「初期の段階では、実はこういう曲だったんです」
と聴かせてもらった記憶があります。
それはそれでとっても素敵でした。

と書いていることからお分かりのように、
ここで一波乱あったのです。
そのメロウな曲で進むのかと思いきや、
何やら不穏なムードが。
ここからはダース・ベ●ダーのテーマソングを
脳内で再生しながらお読みください。
そうです、AIR-G’のY氏の登場です。

L A

Y氏は本プロジェクトにおいて
キーパーソンだったので、
今回これを書くにあたって話を聞かせてほしい
とお願いしたら
「いやいや、そんな私から言うことなんて
全然ないですから…」
とY氏は謙遜していたものの、
当時の状況を語り始めました。

「ちひろちゃんから曲を聴かせてもらったですが、
しっとりした曲調だと、
20周年の楽曲と路線がかぶるかも、
とまず思ったんですね。
そこでちひろちゃんに
『僕のワガママを聞いて!』と言って、
ケータイに入っていた自分のイメージの楽曲を
いくつか聴いてもらい、話をしました。
さすが彼女はプロフェッショナルなので、
すぐに何かをつかんだらしく、
新たな曲を書いてきたんです。
それは、まさに周年歌にふさわしいもの。
いいね!となりました。
ただ、そこから曲を仕上げていく段階で、
ちょっと煮詰まったようなんですね。
で、ちょうどそのタイミングで
彼女がアメリカ旅行に行ったんですよ。
そこで偶然、
現地在住の日本人アレンジャーと出会って、
曲のアレンジを依頼することができたんですって。
LA録音です。
そこから、ものすごい完成度が上がったんですよね、
私からすると。
聴く人が聴いたら、
この曲の演奏は只者じゃないってわかりますよ。
それぐらいの完成度です。
一発録りでやってこそ生まれるグルーブですよ、あれは。
あとギターを担当したのが、
某世界的スーパースターのバックバンドでも弾いている
黒人ギタリストらしくて、彼のプレイはですね…」

Y氏、めっちゃ喋ってました。
息継ぎしてなかった気がします。
ここまで音楽的なことにY氏が明るいのは、
もともと彼は職業として
音楽をやっていたからなんです。
だから音楽のことになると
こんなにもよく喋るようです。
営業の時よりよく喋っていました。

このあたりの顛末は、
私はまったく知らなかったですけど、
みんなで一生懸命、
あーだーこーだとやってくれていたのは嬉しいものです。
そして完成した
脇坂工務店25周年イメージソングが
「I love my family」です。

初めて楽曲を聴いたのは、
2018年10月頃だったと思います。
場所はAIR-G’の通称「1スタ」。
同席した森さんも初耳。
いやー、私は思わず涙しましたね。
すばらしい!って。

そこから11月下旬に
ミュージックビデオの撮影を行いました。
ロケーションは銭函の海岸。
当日は風が強く、めちゃくちゃ寒かったです。
撮影に立ち会っていた
T氏がダウンを2枚着るくらいの寒さです。
でも曲内容としては冬ではなく、
むしろ暖かなイメージなので、
ちひろさんが着る衣装は
春先に着るようなものでした。
カメラマンのI氏やT氏は鬼。
しかし、完成映像を見ても
極寒の中で撮影したとは全然わからないですよ。
さすがプロです。
LAの空気を感じましたね。
LA行ったことないですけど。

さらに、水面下ではあるプロジェクトが動いていました。
話はスタジオで初めて曲を聴いた日までさかのぼります。
「こんなにいい曲ができたんだから、ライブやろうよ」
と私はY氏に相談し、
脇坂工務店プレゼンツで周年ライブを実施することに。
会場をどこにするのかという問題があったのですが、
「やるなら札幌ドームでしょ!」
と何度か声を上げる私。
しかし、スタッフはみんな
「ははは、いいっすねー」
と言いつつ、
「で、会場どこにしましょうか」
と打ち合わせをしています。
スルーされました。
まあ、いくら必要なのか私は知らなかったので、
スルーしてもらって良かったです。
周年ライブをやって倒産とかしたくないですから。

結果、会場は道新ホールに決定。
ライブに招待したい方は老若男女いらっしゃるので、
スタンディングではなく、
着席できるところが条件だったのです。
(だったら札幌ドームでも良かったはず…)

そして、迎えた本番当日、
2019年4月27日GWの初日。
ちひろさんは、
「I love my family」
アンコール含めて2回も歌ってくれました。
そして、なぜかアンコールの時に、
ステージに上がっている私がいました。
乱入したわけではなく、呼ばれたのでつい。
そこでちひろさんが
「脇坂さんも、踊りましょう!」
って言ってくれたものだから、
私踊ったんですよ。
みんな、ギョッとしていましたね。
「意外と踊れている!」って。
私がステージに上がった時は
「あぁ…せっかくの25周年が…」
と顔に書いてあった関係各位ですが、
アンコール後にみんな満面の笑顔で拍手してくれたのは
快感でしたねぇ…。
バックダンサーとともに、
踊る社長はなかなかいないでしょう。

こうやって振り返ってみると、
いろんな人の縁がつながってできた曲だなぁ
としみじみ思います。
本来なら、うちよりもっと大きな会社が
イメージソングとか作っても良さそうなものですが、
どの会社でもやっているわけではありません。
まさか銭函の会社が、
LAレコーディングしているなんて!
「LAレコーディング」、
人生で一度言ってみたかったので、
夢が叶いました。

通常、CMなどでオリジナル楽曲を作るとなったら、
社名を連呼するような、
いわゆる“コマソン”になりがちです。
「♪わきさか〜わきさか〜、
はなしのわかる、わきさかこうむてん〜♪」
みたいな。
しかし、申し上げた通り、
私はアーティストにぜんぶお任せしました。
「この言葉を歌詞に入れて」とか、
「企業カラーを出して」とかは一切なし。
結果的にこのやり方が一番いいと思っています。
ひとりよがり、企業よがりのもの、
ドヤ感があるものにはならないですよね、
こういう作り方をしたら。

とはいえ、曲を聴くと、
あ、ここは自分たちの会社のことに重なるな、
とかイメージが膨らむものです。
たとえば「I love my family」の歌詞、
「祝福の春のハーモニー」
「新しい海辺の風に髪をなびかせ」
というくだりとか、
自分たちのことを歌ってくれているんじゃないか、
って勝手に嬉しくなりますね。
こうなると、じゃあ30周年は何をやるんですか、
って話ですが、
次は私が大好きな桑田佳祐さんのゲリラライブですね。
茅ヶ崎と銭函、海の街つながりということで、
銭函駅前でやりたいです。
え、事前にゲリラライブを告知すると
ゲリラじゃないって…?
たしかに…。

ともかくですね、
最近、桑田佳祐さんの知り合いの知り合いの知り合い
くらいまではたどり着いたので、
きっともうすぐです…!

脇坂肇