2019年7月26日 更新
#3
家の次は、旦那さん。
私の本業は家を建てることではない。
たまに、そう思うんです。
「おいおい、どうした。工務店の社長でしょ…」
と思われますよね。
ええ、仰っしゃりたいことは、わかります。
そんな私が仕事で一番大切にしているのは、
「お客さまの人生の幸せを、お手伝いすること」
ここだけいきなり聞くとさらに、
「おいおい、どうした…」
となりますよね。
まあ、少し話を聴いてやってください。
今回は、とある女性のお客さまとの
エピソードをお話したいと思います。
江別市大麻に1970年に開校した、
とある英会話教室があります。
その2代目学園長がHさんという女性。
ある日、彼女から
「銭函で家を建てたいんですが…」
という問い合わせを頂いたのが、
お付き合いのきっかけでした。
まずはお話を伺ってみたところ、
Hさんはこんなことを口にされました。
「今まで自分は仕事を頑張ってきた。
その『ごほうび』ってわけでもないけれど、
仲間が集まれる自分の好きな場所を
作りたくなったんです」と。
2010年ごろの話です。
彼女の希望は、
1階をギャラリーと英会話教室にして、
2階を住居スペースとして使えるような一軒家。
ただ本邸は江別にあるので、移住ではなく、
セミ・セカンドハウスみたいな位置付けでした。
じゃあ、なぜ銭函かと言われると、
幼少期に家族で小樽の祝津岬に
訪れることがたびたびあったそうです。
だから、その思い出の地が見えるような、
海沿いの場所を希望されていました。
ただその時は、良い土地が出てこなかったのです。
そこで私はHさんに提案しました。
「ひとまず、うちの事務所の2階で
英会話教室をやってみませんか?」
当時、海沿いにあった我が社の事務所の2階は、
空手道場やダンス教室に貸し出していたんです。
まだHさんは“銭函初心者”ですし、
まず銭函の雰囲気をつかんでもらうことは、
家づくりにもきっと良い効果があるはず。
銭函の人たちともつながりができるから、
きっとプラスだろうなと。
Hさんも乗り気になって、教室を始めました。
そして、ほどなくして土地が見つかったのです。
まさしく海が見える絶好のロケーション。
銭函在住の建築家、戸島健二郎さんに設計を依頼し、
2012年には念願の家が無事に完成。
Hさんは、
1階のギャラリーをsunaie(スナイエ)と名付けました。
sunaieでは、
アーティストや作家さんの個展、
ミニライブなどが頻繁に開催されており、
銭函のカルチャーシーンを盛り上げてくれています。
さあ、ここまでは前振りです。
当時アラフォーだったHさんは独身。
私はよく覚えているのですが、
sunaieでアクセサリー作家さんの個展が
開かれた時のこと。
Hさんは指輪をオーダーして、
一言もらしたのです。
「家も建てたし、指輪も作ってもらうし、
これであとは結婚相手ね…!」と。
「あとは結婚相手ね…!」
「あとは結婚相手ね…!」
「あとは結婚相手ね…!」
と、私の脳内でその一言が
やけにリフレインしました。
言葉の力というか、
言霊がさぞや強かったんでしょうねぇ…。
それから1年ほどの時が流れました。
私の娘はピアノをやっていまして、
アマチュアながら活動していたんです。
同じようなアマチュアミュージシャンが集まる
有名なお店が札幌にあり、
そこで娘はユニットを組む相手を見つけ、
活動していました。
Gさんという男性です。
ギターとボーカルを担当するGさんは当時40代。
控えめなシャイボーイでした。
娘は高校生だったので、
まあ、なかなかの異色ユニットですよね。
税理士の仕事をしている彼は当時独身でした。
ある晩、
そのミュージシャンが集まる店のマスター夫妻と
脇坂家で食事をした時のことです。
マスターがおもむろに
「Gさんに誰かいい人いないかねぇ」
と口にしたのです。
すると、うちの妻と娘が
「あ、英会話教室のHさんはどう?」
と言うのです。
なるほど、
たしかにどちらも音楽好きだしアリかも…。
そう思った私は、
早速ふたりを会わせるべく、段取りました。
私、仕事以上にこういう“仕事”は早いわけで、
もともと我が家で開催予定だった
「蕎麦を楽しむ会」に二人を呼んだのです。
そこで面識ができた二人に
私はすかさず、2枚のチケットを渡しました。
「森のカフェフェス」という
我が社が協賛していたイベントのチケットです。
音楽好きだし、野外のフェスだから
知り合ったばかりの二人で行っても
自然だろう、と思ったんです。
(我ながらナイスアシスト…!)
そしてフェス当日。
今でもその光景がくっきりと思い出せます。
ニセコの森に囲まれた自然豊かな会場で
ひときわ目立つ不自然な二人を…。
ものすごく微妙な距離感で座っている男性と女性。
どのくらい微妙な距離感かというと、
それなりに体格の良い私が
二人の間に座れてしまえそうな距離感、
と言えば伝わるでしょうか。
ああ、もう!じれったい!と身悶えしました。
ハンカチを手にしていたら、噛んでいましたね。
きっと。
さて、結末は…
まあ、お察しのとおりです。
ほどなくして二人は交際をスタート。
そして見事ゴールインしたのです。
フェス会場での後ろ姿が
目に焼き付いている私としては、
まさか結婚するとは…と感慨深かったですねぇ。
「いい年で結婚したし…」
ということで大きな披露宴は行わず、
その代わりに親しいグループごとに
会食のような「結婚式」を
何回かにわけて開催されました。
(私、3回もその「結婚式」に出ています)
今も機会あるごとにお二人にお会いするんですが、
すごい仲が良いご夫婦です。
英会話教室のクリスマス会で
シャイなGさんが
サンタさん役をやっているくらいに
仲良しです。
このお二人のことがあってから、
また私の中で、
名(迷)セールストークが一つ誕生しました。
「脇坂工務店で家を建てると、
もれなく旦那も見つかる!幸せ工務店」
住まいだけじゃなく、
パートナーをお探しの方、
脇坂工務店にご連絡お待ちしています。
(けっこう本気)
この話は少し続きがあります。
Gさんの仕事上のお客さまに、
我が社の事務所があった土地をお買い上げいただき、
さらにそのお客さまの部下の方にも、
隣の土地と建物を買っていただいたりと、
不思議と色んなことが、つながっていきました。
「お客さまの人生の幸せを、お手伝いすること」
冒頭で申し上げた、この言葉は
Hさんのエピソードに象徴されているように思います。
当然、家を建てるお手伝いを
脇坂工務店はしているわけなんですが、
そこだけで満足しないんですよね、私が。
ついつい色々なことが起きてしまう、というか、
起こしてしまうというか。
僭越ながら、Hさんの人生に幸せをもたらす
お手伝いができたんじゃないかと思っています。
うちのお客さまの共通点は、
「変わっていること」
「普通じゃないことがしたい」
ということだと思っています。
まあ、私自身がちょっと変わっているのかも、
と最近ようやく気づきました。
わざわざ施主さんの恋のキューピッドに
(結果的に)なったわけですからねぇ。
しかも、家を建てる前とかじゃなくて、
建て終わった後ですから、
ぜんぜん営業活動でもないわけで。
ただ、結果的にはHさんをきっかけとして、
Gさんのように色んな人たちが
銭函に関わるようになって、
楽しそうにされている。
そんな皆さんと銭函で顔をあわせると、
挨拶を交わして、立ち話が始まる。
そんな、ゆるいつながりが生まれているのは
工務店冥利につきます。
次はどんな“変なこと”が起きるか、
楽しみです。
脇坂肇