新築実例集
戸建ての良さを味わえる2世帯住宅新築|H邸|札幌市|2007年竣工
木製の連窓と曲線を描く屋根形状が目を引くHさん宅は、一家3人と奥さんの両親が住まう2世帯住宅である。
以前、両親の家が建っていた敷地は東西に細長く、東の道路側以外は隣家が迫る密集地。2家族分の規模となると容積率を目いっぱい使うことになり、ありきたりな上下階を分割するプランでは1階の世帯への陽当たりが望めない。一方、敷地にはもともと道路レベルより60センチの盛り土がしてあったという。
そこで、建築家の今井優子さんと尾形剛弥さんは、その高低差を利用し、2世帯の床高をスキップさせて南北に隣り合わせ、それぞれ2層構成でたっぷりと外光を取り込むプランを提案した。
南側を子世帯のエリアとして、水まわりと寝室は階高を抑えた1階に。2階はLDKと子ども室がスキップフロア構成で一体化。天井は可能な限り高く、開口部も空が見える上部に配したことで、Hさんが望んだ開放的な空間が確保された。親世帯は北側に位置することになったが、床レベルを上げたため、2階の南面には子世帯より高い位置にハイサイドライトが設けられ、吹き抜けを介して1階のLDKまで外光を存分に取り入れることが可能になっている。
また、この住宅では建材選びも重要なポイントであった。お子さんがアトピーで、Hさん夫妻もVOCに敏感。建材は全てパッチテストを行い、下地材まで徹底して、身体に影響のないものを採用した。
マンションのようなワンフロア仕様ではない、メリハリのある立体的な空間構成は、戸建ての良さを感じさせてくれた。H邸は、心地よい距離感と空気感を持ち合わせた2世帯住宅である。
設計者からの一言今井 優子/尾形 剛弥
施工を担当してもらった脇坂工務店とは、現場でのコミュニケーションがスムーズでした。設計の意図を理解してもらい「お施主さんの希望をかなえる」という共通の方向性で仕事ができたからだと思っています。
集成材で予定していた柱、梁などの構造材をすべて無垢材に変更するなど、いろいろ提案をもらいました。ていねいな仕事ぶりは、高い技術力と監理能力に裏付けられているからでしょう。
一級建築士事務所
ATELIER AG-PLANNING
石狩市花川北2条4丁目123番:TEL/FAX 0133-73-1338
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住宅雑誌リプラン vol.76掲載記事